平成21年度本試験講評
◆午前の部◆
組合せ問題がほとんどであり,また問われている論点も特に難易度が高いものではなかったので,30問以上の正解は十分可能であり,出来るならば32〜33問は正解したいところである。
<憲法>
第1問は穴埋形式であったが,外国人の人権の判例について理解していれば確実に正解出来るはずである。また,第2問についても基本的な判例を理解していれば十分正解可能である。第3問は出題論点を知らなかったとしても,その場の判断で十分正解可能である。最低でも2問,出来れば3問正解したいところである。
<民法>
総則,物権,担保物権,債権,親族・相続各4問,合計20問ということで,平成15年から21問であった出題数が1問減っている。見解問題が物権で2問,担保物権及び債権で各1問と多めであるが,内容的には決して難しいものではないので,むしろ落としてはならない。数肢について細かい知識が問われている部分もあるものの,他の肢の組合せにより正解することは十分可能であり,20問中最低でも18問は正解したいところである。
<刑法>
第26問肢オ以外については,全て基本的な知識及び判例を理解していれば容易に判断できるはずである。確実に全問正解したいところである。
<会社法>
第31問,第32問については判断の難しい肢があるものの,第31問については肢アウについては判断できるはずなので,迷うとしたら第32問であると思う。しかし,第32問も肢エの判断ができれば十分正解可能である。条文の文言を正確に理解していないと難しいレベルではあるが,逆に条文をしっかり読み込んでいれば全問正解を導き出せるはずなので,最低でも6問,出来れば7問は正解したいところである。
◆午後の部◆
択一式
マイナー科目の難易度は若干高かったものの,不動産登記法及び商業登記法については,基本的な論点の出題がほとんどであった。ただし,個数問題が3問,単純正誤問題が2問と昨年に比べ,組合せ問題の比率が下がったことにより,全体的な難易度としては,去年と同等レベルといえる。
<民事訴訟法・民事保全法・民事執行法>
第1問の自白の拘束力,第2問の証拠の収集・立証の準備については,難易度が高かった。第3問以降についても,確実に判断するのが難しい肢が含まれていることもあり,全体的に難易度は高かったといえる。それでも,第3問以降は,肢の組合せにより正解を導き出せるものがほとんどなので,7問中5問は正解したいところである。
<司法書士法・供託法>
司法書士法については,条文の細かい知識を問われているので,条文をしっかり読み込んでいないと難しいといえる。供託法第11問は肢アイの判断が難しいことにより,迷ってしまったと思う。4問中2問,出来れば3問は正解したいところである。
<不動産登記法>
昨年度と比べると基本的な事項の出題であり,難易度は高くないといえる。第17問の登記上の利害関係人の肢イ及び第19問の2号仮登記の肢オで迷うところではあるが,他の肢の組合せにより正解を導き出すことは可能である。16問中14問,出来れば15問は正解したいところである。
<商業登記法>
第33問のオンライン申請の手続の可否については,難易度というより,知らなければ解けない問題といえる。その他の問題については,不動産登記法と同様に基本的な事項からの出題であったので,8問中6問,出来れば7問は正解したいところである。
記述式
<不動産登記法>
昨年に引き続き別紙形式であり,1件目の申請において,所有権登記名義人の住所変更登記が問われていたが,昨年の出題から当然予想される論点であり,それほど点数に影響を与えるものではないと考える。抵当権抹消登記の前提としての設定者の住所変更登記の要否,敷地権が賃借権である場合に区分建物を目的とする抵当権が敷地権に及んでいるか否か,敷地権が賃借権である場合の区分建物の売買による所有権移転登記における賃貸人の承諾の要否,所有権移転登記を仮登記の本登記に更正することの可否,等の論点が問われているが,それぞれの論点は過去の本試験の択一式で出題されている論点であり,難易度は決して高くないといえる。
<商業登記法>
1件目の申請においては新株予約権の全部行使,取得請求権付種類株式の取得と引換にする株式発行が問われており,計算間違いを起こしやすい問題といえる。ただし,冷静に別紙1の登記事項証明書及び別紙5の聴取記録を読めば正解できるレベルではある。2件目の申請においては,定款変更に伴う役員の任期計算が1つの論点となっているが,難易度的にはそれほど高いわけではなく,別紙8の聴取記録を注意深く読み込めば十分気がつくレベルである。その他の論点についても,特に難しいものが含まれているわけではないので,全体としても難易度は決して高くないといえる。 |