社会保険労務士にできること
次に、社会保険労務士の具体的な業務について,簡単な説明を加えておきましょう。
社会保険労務士とは,一言でいえば,"人に関するスペシャリスト"です。企業における人事労務全般の事務代行や書類の作成,さらにはアドバイスやコンサルテーションを行ないます。たとえば,従業員の採用や解雇,事故や病気などの際,法律に基づいて書類を作成したり,行政機関に書類を提出しなければなりません。これらのことは,経験や知識のない素人には,まずできないことです。また,中小企業では,そのためだけの専門家を従業員として雇うことは,コスト的にもなかなか困難です。そこで,社会保険労務士がこれらの業務を代行するのです。これを「1・2号業務(詳細は後述)」といいます。
さらに最近,その重要性を増してきているのが,労務管理や社会保険についての企業の相談にのったり,指導したりする「3号業務(詳細は後述)」です。
経済の大きな転換期にある現在,就業形態もかつての終身雇用制・年功序列型から新しい形態に変化しています。このような状況のなかで企業は,ますます労務関係の専門家を必要としています。社会保険労務士は,このような企業のニーズに応え,雇用制度や賃金体系,人事考課や就業規則,さらには年金問題などのアドバイス・コンサルティング等を,その主たる業務内容としています。
それでは,以下において前述の1号・2号・3号業務について,もう少し詳しく説明することにします。
●第1号業務
- 労働社会保険諸法令に基づいて行政機関等に提出する申請書,届出書,報告書,審査請求書,異議申立書,再審査請求書その他の書類(申請書等)を作成すること
- 申請書等について,その提出に関する手続を代わってすること
- 労働社会保険諸法令に基づく申請,届出,報告,審査請求,異議申立て,再審査請求その他の事項について,又は当該申請等に係る行政機関等に対してする主張若しくは陳述について,代理すること
- 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律におけるあっせんについて紛争の当事者を代理すること(あっせん代理といいます)。
第1号業務とは,主に手続業務のことをいいます。労働基準法,労働安全衛生法,労働者災害補償保険法,雇用保険法,労働保険の保険料の徴収等に関する法律,健康保険法,厚生年金保険法,国民年金法などの労働及び社会保険に関する諸法令に基づき手続業務を行なうのです。
●第2号業務
労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(第1号業務に掲げる書類を除く)を作成すること。 第2号業務とは,主に帳簿書類の作成です。上記の諸法令に基づく,第1号業務で掲げた以外の帳簿書類を作成します。
●第3号業務
事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ,又は指導すること(労働争議に介入することとなるものを除く)。
第3号業務とは,相談・指導,つまりコンサルタント業務です。事業における労働に関する事項や労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じたり,指導したりします。ただし,労働争議に介入することはできません。つまり,労務問題や保険事項について企業のコンサルタントをしたり,アドバイスをする業務です。
最後に、社会保険労務士になる方法ですが,毎年1回実施される社会保険労務士試験に合格する必要があります。また,試験に合格しても,すぐ開業というわけにはいきません。試験合格後,全国社会保険労務士会連合会に登録し,都道府県の社会保険労務士会にも入会しなければならないのです。
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