「多くの合格体験記を読み,その中から自分に合うものを取り入れる!!」
沢尻正宏さん(茨城県)
◆動機は業務上の必要性も
私は地方公務員をしています。現在,国民健康保険事務を担当しているのですが,窓口では国民健康保険のみならず,それに関連する社会保険・労働保険の全般的な知識が必要となることが少なくありませんでした。
例えば,退職した人が国民健康保険(以下「国保」)に加入しようとするとき,健康保険法の任意継続保険の説明もしなければならないし,国保の保険料を計算する前提となる所得には雇用保険の失業給付は含まれるのかとか,国保と健康保険法とで重複する保険給付に関する質問,健康保険ごとの保険給付の扱いの違い(例:傷病手当金は健康保険法では絶対給付,国保は任意給付),保険料の負担方法(例:被用者保険
は半分は会社持ちだが,国保は全て自己負担。)
など,健康保険と厚生年金はほぼ連動しているうえ,それに国保が加わって理解が混乱しているお客さんの頭の中の糸を解きほぐしてあげたり…と,幅広い知識が必要となります。
そんな中,社会保険や労働保険全体の概要をつかみたいと思い,同時にどうせ頑張るなら何か形にして残したいと考えて,平成17年に受験勉強を始め,2回目の受験で合格しました。
◆科目ごとの特長に苦労
試験勉強をスタートして初めてテキストに目を通したとき,かなりの戸惑いを感じました。
この試験は科目数が多く,かつどの科目も独特の性格を持っていたからです。科目ごとに勉強の対応方法を変えねばなりませんでした。
例えば,労働基準法は本法のみならず通達・先例も多数顔を出し(本試験でも通達レベルからバンバン出題されます),労働安全衛生法はひたすら暗記。雇用保険法や労災法は似たような保険給付がずらりと並び,その区別の理解に苦労する一方,それぞれについて細かい支給要件の違いが規定されていたり…。
そんな中,自分が一番苦労したのはなんといっても「年金」科目でした。原因は,年金制度が当初発足してから後追い的に経過措置や追加措置が次々と加わっているため,テキストをじっくり読んでいてもいつのまにか頭の中で糸が絡まってしまっているのです。国民年金のみに係る規定,厚生年金のみに係る規定,双方にまたがる規定,国民年金の要件を満たすことで受給権が発生する厚生年金の規定…と,例を挙げていたらキリがないです。
自分は単純暗記というものがとても苦手で,「理解」して「芋づる式に」頭から知識を引っ張り出す,筋道立てて把握するタイプだったので,この試験の性格に慣れるまでには苦労しました。
◆4つに分けて学習
受験勉強にあたり,自分なりには頭の中で,@「理解」する科目,A「暗記一本」科目,B「年金」,C「一般常識」に分けて,それぞれで対応を変えました。
まず@「理解」する科目としては,労働基準法,労災法(徴収法含む),雇用保険法,健康保険法など。「理解」するといっても,もちろん相当の「単純暗記しかない」部分もありますが,とにかく「なぜそんな保険給付が用意されているのか」,「なぜそんな労働時間の制限があるのか」などと理由をつかみ,だからこういう支給要件や労働時間制限が必要で,こういう規定があるんだ,というように「大→小」へ理解していきました。そしてその途中途中で暗記すべき細かい要件は,別にノートにまとめておき,試験直前にまとめて見直すこととして,普段の勉強では頭が混乱するので省きました。
労働基準法は通達や先例も遠慮なく出されます。自分は春にそれらに関する専門学校の講座を受講しました。それを試験直前まで毎日繰り返し目を通すようにしていました。すると模擬試験の点数も大幅に上がり,本試験でも力を発揮できました。これは特筆しておきます。
A「暗記一本」の科目の代表は「労働安全衛生法」です。これにはほとんどの人が異論はないと思います。年金と並び,極めて苦労しました。苦労というより,うなぎみたいにつかみどころがないというか…。
これについては,過去問や模試でよく出題される分野をつかんで法の骨格のイメージを頭にしみこませておき,細かい具体的な数字や用語などは集中的に本番直前に暗記して対応し,本番で予想外の問題が出たら諦める,と割り切っていました。労働安全衛生法は労働基準法とセットで出題されるので,まんいち労働安全衛生法でつまづいても労働基準法で挽回できるので,その分労働基準法に重点を置きました。
次にB「年金」。これは初めてテキストを通読したとき,さっぱり理解できず,腰をすえて取り組まないと!と思い,勉強のペースを他の科目の2倍以上に落として対応しました。
「落とす」というのは,例えば,他の科目なら1日でテキスト10ページ読むところを,年金は1日5ページ読むことにして,理解にかける時間をより多く取る,という意味です。
1日3〜4時間かけてテキスト1ページしか進まない日もありましたが,それでいいと割り切り,とにかく焦らず一つ一つ丁寧に知識を重ねていきました。
年金は「昭和36年」と「昭和61年」という2つの年号を意識してテキストを読んでいくと,かなり頭の中の霧が晴れていきました。ことあるごとにこの年号が出てきます。それを意識しつつ,かつ経過措置や追加措置も「なぜこんな経過措置があるの?」と疑問を持ちつつテキストを読むと,だんだんその答えが見えてきます。
年金は「疑問」を持たずに「ふうん,こういう決まりなんだ」と思うだけで目を通していても理解できません。本法の規定の同じ部分の上に経過措置・追加措置が二重三重,四重五重に積み重なっているからです。この科目は勉強計画の中では他の科目とは別に時間を設けるようにしていました。
最後にC「一般常識」。これは大きく分けて,社会情勢や雇用情勢などの文字どおりの「一般常識」と,雇用安定法や労働者派遣法,児童手当法や高齢者雇用安定法などの関連法令に分かれます。
後者については他の法律科目と同様に勉強すればいいと思います。前者については,ある意味「闇夜に鉄砲」で,本試験でどこから出るかは把握困難です。これは専門学校の講座を利用するとともに,毎日,新聞を読んで社会の動き,労働環境,雇用環境の動きなどを把握するようにしました。
本試験では細かい数字もどんどん出てきますが,その数字の真偽は分からずとも,社会全体の動きから正解を推測できる問題が多いので,これは毎日の地道な小さな努力の積み重ねで鍛えた「センス」がものをいうと思います。
勉強方法は人それぞれ。多くの合格体験記を読み,その中から自分に合うものを取り入れて,自分なりの勉強方法をつくって,是非来年の本試験で実力を発揮されることを期待します。
皆さんのご健闘,来年度の本試験合格を祈念いたします。 |