行政書士の場合、個人事務所を開業されている方が圧倒的に多いです。しかし長く行政書士として続けていくと、法人化を検討することもあるのではないでしょうか。
今回は、行政書士法人のメリット・デメリットについてご説明します。
行政書士法人とは?
2004年8月施行の改正行政書士法により、行政書士法人の設立が認められるようになりました。2名以上の行政書士が定款を定めれば、行政書士業務を目的として法人を設立できます。
背景には、生き方の多様化や高齢化などに伴う利用者のニーズの複雑化に機敏に対応する必要性が生じたことが原因のひとつです。そして、高度に専門化した質の高いサービスを、安定・継続して提供することが目的とされています。
行政書士法人のメリットは?
永続性が生じ、信用力が上がる
個人事務所ではその所長である個人が死亡すると、その事務所に従業員がいたとしても即廃業となります。しかし行政書士法人の場合は、法人自体が取引の主体であり、代表社員である行政書士個人が死亡しても、法人は廃業にはならず、永続的に存続させることができます。このように法人としての永続性がアピールできて信用力も上がるため、中堅企業や大手企業との取引がしやすくなります。
店設置ができる
法人になれば、「支店」として複数の事務所(それぞれの支店に常勤の行政書士が必須)が設置でき、地域に密着しつつ市場を拡大させることが可能になります。
手厚い社会保険
個人事業では国民年金ですが、行政書士法人であれば経営者も厚生年金に加入することができます。結果的に、老後の年金収入額が増えることとなります。
経費計上がしやすくなる
役員の給与(役員報酬)を経費にすることができ、また節税につながる場合があります。
行政書士法人のデメリットは?
設立に費用が必要
登録免許税のほかに諸費用、そして手間もかかります。
株式会社や合同会社で電子定款としない場合は、定款に貼り付ける印紙代40,000円が必ず追加で必要になります。
毎年7万円の地方税が発生する
意外に盲点なのが、赤字でも地方税が発生するということです。法人の場合、赤字でも地方税(都道府県税、市民税)約7万円を納めなければなりません。
※ここで扱う「法人」とは株式会社、合同会社、一般社団法人、合資会社、合名会社などを指します。
会計処理、確定申告が複雑化、費用がかかる
法人は、個人事業と違い「法人税法」が適用され、記帳などの手間がかかります。確定申告書類も、個人事業に比べて内容、枚数ともに増えます。そのため、専門の会計ソフトを導入したり、税理士に税務を依頼する方が多いのが現実です。
組織運営コストの増加
社会保険への加入義務が生じるため、社会保障費が増加します。また一般的な税理士との顧問契約でも、個人事業よりも顧問料が上がることが想定されます。
意思決定スピードが遅くなる
役員が2人以上となるため、意思決定は独断ではなく、合議が必要となります。
法人化は行政書士の中で差をつける一手
行政書士登録者数約43,000人に対し、2015年度末の行政書士法人数は全国でも355です。行政書士数に比べると法人数はまだ少ないため、その分差別化できるチャンスかもしれません。
なお、個別の状況により上記で触れた内容とは異なるケースもあるため、法人化を検討される場合は税理士などの専門家にご相談ください。
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