司法書士は、法律に関する書類作成や登記手続きなどができる専門的な国家資格です。
特に、法務局へ提出する書類の申請と提出、裁判所や検察庁へ出す書類の作成は司法書士の独占業務とされます。
司法書士資格があれば安定的に稼げると思われがちですが、司法書士の資格に将来性はあるのでしょうか?
この記事では、司法書士の主力業務や独占業務について、またこれからの業務の展望についてご紹介いたします。
司法書士の主力業務は不動産登記
司法書士が担当できる業務にはさまざまなものがありますが、主力業務となっているのは不動産の権利に関する登記です。
しかし、平成19年に380万件以上あった不動産登記件数は、平成28年には約200万件となり、5割近くも減少しています。
バブル好景気の頃には不動産売買も盛んだったため「司法書士=稼げる」というイメージがありました。
しかし近年では人口減少や土地の売買件数の減少に伴い、司法書士間で仕事の奪い合いが起きているのが現状です。
ネットの普及で司法書士の業務も変わる
インターネットの普及によって、司法書士業務の事情も変わってきています。
近年ではネット検索すれば登記申請の方法や書式の雛形を閲覧できるため、司法書士に依頼せず本人で登記申請するケースが増えているのです。
また、近年注目されているAI(人工知能)が労働現場に導入され始めている現状も無視できません。
現在人間の手で行っている仕事のいくつかは今後AIに取って代わると考えられていますが、その1つに登記業務が挙げられます。
既に、登記業務に必要な書類の収集や申請書の作成をサポートするソフトなど作られていることから、今後登記業務のAI化が急激に進む可能性もあります。
司法書士の独占業務の範囲は狭い
司法書士の独占業務は、法務局への書類申請や裁判所への書類提出です。
しかし、独占業務の範囲が限られているため仕事がしにくい場面があるのも事実です。
例えば債権回収にあたって司法書士は督促を送ったり簡易裁判を起こしたりすることができますが、いきなり裁判をすることにためらいがある依頼者も少なくありません。
司法書士がダブルライセンスで行政書士資格を所持している場合ならば、内容証明郵便を送るといった手段を使うことができるなど、選択の幅が広がります。
司法書士は成年後見業務で活躍できる?
司法書士の業務の1つに成年後見制度の代理業務がありますが、こちらの需要は今後増えていくかもしれません。
成年後見制度は判断能力が欠けた被後見人に変わって契約や消費行為の判断を代理する業務です。
日本は既に高齢化社会に突入しており、認知症患者の増加に従って成年後見業務の件数も増えると考えられます。
ただし、成年後見制度に関する業務は司法書士の独占業務ではなく、弁護士のほか行政書士や社会福祉士が行うこともあります。
司法書士という国家資格は、登記業務をはじめとした幅広い業務を担当できるのが強みです。
しかし、時代の変化によって一部の登記業務や書類作成業務の需要は減少しています。
ダブルライセンス取得を視野に入れたり、成年後見制度など需要増が見込まれる業務に着目したりするのが、将来にわたって活躍するための策といえるかもしれません。
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