測量士試験に興味を持っている人の中には、独学で合格できるのか気になっている人もいるでしょう。測量士を目指すに当たっては、試験の概要や勉強方法を知っておくことが大切です。測量士は独学で目指すことができるのか、独学で目指すにはどのようなポイントを押さえておく必要があるのかを紹介します。
この記事で分かること
- 測量士試験は独学で合格できるのか
- 測量士試験の難易度や概要
- 測量士試験に独学で合格するための対策
測量士試験の難易度
測量士試験の難易度はどれくらいなのでしょうか。まずは、合格率や合格するまでに必要な勉強時間の目安、独学でも合格できるものなのかを紹介します。
測量士試験の合格率
過去5年間の測量士試験の合格率は以下のとおりです。
試験実施年 | 合格率 |
---|---|
2019年 | 10.3% |
2020年 | 14.4% |
2021年 | 18.0% |
2022年 | 7.7% |
2023年 | 14.8% |
測量士試験は1年に一回実施されています。過去5年の合格率は、最も高かった年でも18.0%、最も低かった年は7.7%で、5年間の平均合格率は約13%でした。このことから、測量士試験は難易度が高い試験だといえます。
※参考:国土地理院「測量士・測量士補試験の試験問題及び解答例」
測量士になるために必要な勉強時間
測量士になるために必要な勉強時間は、約300~500時間といわれています。勉強時間がどれくらい必要かは個人差があり、測量に関する知識がない初学者や、数学が苦手な人は500時間はかかると考えておいた方が良いでしょう。
一方で測量士補の勉強をしたことがある人なら、もっと少ない勉強時間でも測量士試験に合格できる可能性があります。なぜなら、測量士補と測量士の試験は出題範囲が重複しているからです。測量士補の資格を持っている人や実務経験のある人の場合は、100時間程度の勉強時間でも合格を目指せるでしょう。
測量士補に関しては下記記事で解説しているため、併せてご覧ください。
測量士は独学でも合格できる?
測量士試験は独学でも合格することはできます。とはいえ難易度が高く、先述のとおり合格率も10%台と低いです。難しい計算問題が多数出題される上、市販のテキストの選択肢も少ないので、独学で合格できるレベルの実力を身に付けることは容易ではありません。そのため、学校に通って勉強する人も多いです。独学で測量士を目指すには、自力で合格レベルに達するよう、計画的に勉強する必要があります。
独学で測量士試験に合格するための勉強方法
難易度が高い測量士試験に独学で合格するには、合格レベルに達するように勉強していかなければなりません。ここからは、独学で測量士試験に合格するための勉強方法を紹介します。
学習計画を立てる
測量士試験に合格するためには、長期にわたって勉強していく必要があります。また、幅広い知識が問われるため、抜け漏れなく対策しなければなりません。そのため、しっかりと綿密に学習計画を立て、定期的に計画どおりに学習が進められているか、進捗状況を確認したり方向性を修正したりすることが必要です。闇雲に学習計画を立てるのではなく、効率良く学ぶためには、どうすれば良いかも考えていく必要があります。
過去問を繰り返し解く
測量士の資格は、特定の大学や専門学校に通い実務経験を積むことでも取得できるため、測量士になった人の多くは試験を受けていません。つまり試験を受けて測量士になる人は少数派です。そのため、測量士試験対策のための市販のテキストは多くありません。
測量士試験では過去の試験で出題された問題の類似問題がよく出題されるので、過去問を解くことこそが、測量士試験対策になります。目安として、過去7~10年分の過去問を繰り返し解きましょう。
測量士になるためのプロセスに関しては下記記事で解説しているため、併せてご覧ください。
計算問題を解けるようにしておく
測量士の試験では、三角関数やベクトル、GNSSの基線解析やクロソイド曲線など、高校数学や大学数学を使った難しい問題が出題されます。文系出身で数学をあまり勉強してこなかった人、高校で学んだ内容を忘れてしまった人などは、理解するのに多くの時間が必要となるでしょう。計算問題をしっかり解ける力を身に付けなければならないため、早い段階から重点的に対策を進めていくことが大切です。
午後の選択科目を絞って勉強する
測量士試験は午前と午後にわたって実施され、詳しくは後述しますが、午後の部は必須問題1問と選択問題2問に解答するようになっています。2024年も同様で、選択問題は4つの科目から2分科目を選択して回答する形式です。
過去問を解いて対策していく段階で、自分の得意分野・不得意分野が分かってくるでしょう。科目ごとに特徴や傾向があるため、自分にとって解きやすいのはどれなのかをなるべく早い段階で絞り込んでおけば、集中的に勉強をすることができるでしょう。
※参考:国土地理院「令和6年測量士・測量士補試験について(受験案内)」
測量士の試験概要
測量士試験を受けるなら、試験がどのようなものなのかを知っておくことが必要です。ここからは、受験資格・試験日時・試験科目・試験問題の形式・合格基準を紹介します。
※参考:国土地理院「令和6年測量士・測量士補試験について(受験案内)」
受験資格
測量士の試験は年齢、性別、実務経験、国籍の制限はなく、誰でも受験することができます。
試験日時
測量士の試験は1年に一回、例年5月の日曜日に実施されます。2024年の場合は5月19日が試験日で、受験願書受付は1月5~30日でした。試験日や受験願書受付日程は毎年変わるため、事前にチェックしておきましょう。
試験時間は10~16時で、午前の部・午後の部ともにそれぞれ2時間半(12時30分~1時30分は休憩)です。
試験科目
測量士の試験科目は以下の9科目です。
- 測量に関する法規及びこれに関連する国際条約
- 多角測量
- 汎地球測位システム測量
- 水準測量
- 地形測量
- 写真測量
- 地図編集
- 応用測量
- 地理情報システム
これらの科目に加えて、技術者として測量業務に従事する上で必要とされる技術者倫理、測量の基準、基礎的数学、地理情報標準等の一般知識に関しても出題されます。
試験問題の形式
試験問題の出題形式は、午前の部と午後の部で異なります。午前の部はマークシート方式の出題で、出題数は28問です。
午後の試験は記述式で、必須科目問題と選択科目問題があります。測量法、水準測量法などが必須問題で4問です。選択科目問題は「基準点測量」「地形・写真測量」「地図編集」「応用測量」の4つの科目で4問ずつあり、そのうち2科目を選びます。必須問題と合わせると、合計12問に答えることになります。
合格基準
午前の部の択一式問題は、1問25点で700点満点です。午後の部の記述式問題は、必須問題が300点、選択問題が200点×2=400点で700点満点になります。午前の部と午後の部を合わせて1400点満点となり、910点以上取れれば合格です。
ただし、午前の部の択一式問題には足切りが設定されており、2023年までは400点以上、2024年からは450点以上取れていることが合格の条件とされています。午後の部でいくら成績が良かったとしても、択一式問題で一定数以上正解していなければ合格できません。
独学で測量士合格を目指すメリット
測量士を独学で目指すメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。3つのメリットを紹介します。
自分のペースで勉強できる
独学のメリットは、自分のペースで勉強できることです。得意分野の勉強時間を短くして苦手な箇所に時間を割くなど、いつ、何をどれだけ勉強するのかを自分で全て決められます。仕事をしながら測量士を目指したい人や、家事の合間に勉強したい人など、それぞれの事情に合わせた勉強時間の確保が可能です。その反面、しっかりと計画を立てて勉強を進めていかなければ、試験までに準備が間に合わない可能性があります。
費用が抑えられる
独学で測量士を目指す場合、費用が抑えられます。予備校に通ったり通信教育を受講したりするためには、まとまった費用が必要です。しかし独学の場合は、試験対策のテキストや過去問集以外には、受験料くらいしか費用がかかりません。
また測量士試験のための市販のテキストはほとんどなく、過去問は国土地理院のホームページに掲載されています。家のプリンターなどで出力できる環境であれば、テキストなどの費用もほとんどかけずに勉強することが可能です。
最短ルートで合格を目指せる
測量士になるために大学に進学する場合、卒業後に1年実務を経験する必要があるため、大学入学から資格取得まで5年かかります。また専門学校に進学する場合は、卒業後に実務を2年経験しなければならず、専門学校を2年で卒業したとしても入学から資格取得までの最短期間は4年です。
その点、測量士試験を受験する場合は、合格したらすぐに測量士になれます。独学の場合は学校に行く時間を作らずに資格取得を目指せるので、社会人で仕事と両立しながら測量士試験を受ける人にとっては、独学で一発合格をすることが合格への最短ルートとなり得ます。
独学で測量士合格を目指すデメリット
測量士を独学で目指すメリットはたくさんありますが、デメリットもあることを知っておかねばなりません。ここからは独学で測量し合格を目指すデメリットを紹介します。
モチベーションを維持するのが難しい
先述のとおり測量士になるためには、300~500時間勉強する必要があります。試験までの間にずっとモチベーションを保ち続けながら勉強していくことはとても大変です。独学の場合は、一人でその時間を勉強に充てていかなければなりません。
また勉強のスケジュールも自分で計画しなければならず、スケジュール管理も簡単ではないでしょう。そのため思うように勉強が進まず、途中で挫折してしまう可能性があります。
質問する人がいない
予備校や通信教育の場合、勉強していく中で分からないことが出てきたときに、すぐに講師に質問ができます。しかし独学の場合は、周囲に質問できる人がいません。分からないことも自分で調べなくてはならず、時間がかかってしまいます。また時間をかけて調べたとしても、正解にたどり着けるとは限りません。
合格レベルまでの知識が身に付かない
独学で勉強を進める場合、自分の理解度を客観的に判断してくれる人が周りにいません。測量士試験には、高校や大学で学ぶような数学の知識や計算法など、独学で身に付けるには難易度が高い問題が出題されます。そのため自分では勉強しているつもりでも、合格するために必要な実力が身に付けられていないような場合もあるでしょう。
まとめ
測量士試験を独学で目指すことは可能です。とはいえ、試験では測量学や数学の専門的な知識が問われ、近年の合格率は約13%と難易度が高い試験です。
また測量士は大学や専門学校を卒業後に実務経験を積んで資格を得る人が多く、試験を受けて資格を取得する人はあまり多くありません。そのため試験対策用のテキストが少なく、独学での試験勉強はハードルが高いといえるでしょう。
効率良く勉強して合格を手にするためには、測量士試験対策を実施している予備校や通信教育の利用もご検討ください。東京法経学院では測量士試験を目指す人のために「測量士・測量士補試験 合格サイト」を開設しています。これから測量士の勉強を始めようとお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。
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