測量士は国家資格であり、取得するとさまざまな建設現場で測量業務に従事できます。長く安定して働けそうなイメージもありますが「測量士はきついから、やめとけ」と言われたことがあるかもしれません。また「どのくらい稼げるのか、将来性はどうなのか」「どのような人が向いているのか」など、さまざまな疑問もあるでしょう。
この記事では、測量士の仕事内容や将来性、適性を紹介しつつ、なぜ測量士の仕事は「厳しい」「やめとけ」といわれるのかを解説していきます。
目次
「測量士はやめとけ」といわれる理由とは?
測量士は本当にやめておいた方が良いのかどうか、まずは体力面や給料などの観点から見ていきましょう。
屋外作業は体力が必要
測量は屋外での作業が多く、体力が必要な仕事です。厳しい暑さや寒さの中でも、当然ながら常に正確な測量が求められます。
現場が遠い場合は、移動に時間や体力を奪われるケースもあります。長時間、車で移動したり、機材を担いで山道を歩いたりと、過酷な現場も少なくありません。また自然豊かな現場では、野生動物や虫に遭遇するハプニングも考えられます。
しかし建設現場を始め屋外で働く仕事は他にも多く存在しており、測量士が突出して過酷な仕事というわけではありません。後述しますがオフィスワークもあります。
給料が高いわけではない
厚生労働省の「測量士 職業詳細|job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))」によると、2023年10月現在の測量士の賃金(年収)は約487.2万円です。一方、2021年の日本人の平均年収は国税庁の「民間給与実態統計調査」によると443.3万円でした。比較すると測量士の給料は、全国平均と同じか少し高いくらいとなっています。
体力を使う仕事の割に高くないと感じる方も多いかもしれませんが、勤務先は測量事務所や建築コンサルティング会社、行政など幅広く、基本給や諸手当、福利厚生に差があります。また測量士の仕事は専門性が高いため、仕事の単価が高いです。事務所を開業して軌道に乗せられれば、収入アップが見込めるでしょう。
※出典:厚生労働省「測量士 職業詳細|job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))」
※出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
経験を積むまでは測量士補として働く
測量士の資格を取っても、すぐに測量士として働けるとは限らず、経験を積むまでは「測量士補」として働くケースもあります。
測量士補は名称のとおり、測量士の補助的な役目を担い、測量士が立てた測量計画に基づいて現場で測量を行う役目です。測量士補も国家資格ですが、測量士補として数年働いてから測量士の資格を取得する方や、測量士の資格を持ちながら現場で測量士補としてスタートする方もいます。
測量士の方が行える業務が幅広く、給料も測量士と測量士補では差がありますが、着実に実力をつけていく期間ととらえ、技術の習得に集中すると良いでしょう。
拘束時間が長い
測量現場には市街地から離れた場所もあり移動に時間がかかるため、拘束時間が長くなることもあります。現地での作業を終えて帰社すると、すでに定時が過ぎているケースも珍しくありません。
特に公共案件が発生しやすい年始~年度末の繁忙期は、勤務時間が不規則になりやすく、大規模の現場を担当すると休みが取りづらい面もあります。作業に遅れが出て、残業が増えることもあるでしょう。
しかし残業が発生すると残業代が支払われるため、一時的な忙しさと割り切れば収入が増える機会だともいえます。また最近は労働条件も改善され、体力的な負担が少ないように配慮している会社も出てきています。
仕事や技術を覚えるのが大変
測量士の仕事ではGPSやトランシットなどさまざまな機器を使用するため、仕事内容や技術を覚えるのが難しいという声もあります。また測量に使う機器類は時代とともに進化し、最近ではドローンやAIを使った新しい技術も登場しているため、日々の勉強や技術習得のための訓練も必要です。
業務の傍ら勉強するのは大変ですが、新しい知識や技術が身に付くことは自分の成長にもなります。
測量士の仕事内容
測量士の仕事で一般的によく目にするのは現場で行われている「外業」ですが、作業計画を立てたりデータをまとめたりする「内業」と呼ばれる業務もあります。それぞれの仕事内容を解説します。
外業
屋外で行う測量作業は外業と呼ばれます。外業では、一般的に以下のような機器を使用します。
- 位置を計測するGPS
- 角度を測るトランシット
- 高低差を計測するレベル
- 距離を測る光波測距儀
- 関数電卓
- 人工衛星
計測場所としては市街地や山林の他、湖畔や海峡などもあり、さまざまな土地へと向かいます。2~5人ほどでチームを組み、地形や距離、角度、地表上のポイントを迅速かつ正確に測量するのが一般的な業務内容です。屋外の仕事のため、作業の進み具合は天候に左右されるケースもあります。
内業
内業の主な仕事は作業計画の立案や計画書の作成、予算管理、データの分析、CADを使った作図などです。外業を担当する方は、計画書を基に作業を進めます。
外業が終了すると、取得したデータや地理情報システムなどを使用して、工事に必要な基準点を設定します。分析・設定したデータを基にCADシステムを使って図面を作製し、クライアントに提出するまでの業務を担当する場合が多いです。
測量士の給料
測量士の全国平均年収は上述のとおり487.2万円となります。ただし、この金額は全ての年代の給料を合わせたもので、厚生労働省の「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」によると、年収のピークは55~59歳頃で平均583.29万円です。またハローワーク求人統計データによると、令和4年の求人賃金は月収27.2万円でした。
経験が浅いうちは決して高い給料ではないかもしれませんが、特別少ないわけでもなく、経験を積めば収入アップも期待できます。
※出典:厚生労働省「測量士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))」
測量士の将来性
建設において測量は不可欠な工程のため、将来的にも仕事は常にあると考えられます。建物は老朽により建て直しが迫られる他、高度成長期に整備されたインフラの維持・管理や災害からの復旧など、今後も何らかの形で需要がある仕事です。時期により公共事業は増減する可能性がありますが、仕事がなくなったり先細りになったりという事態は考えにくいでしょう。
一方で気になるのはITやAIによる技術の進化です。多くの仕事がAIに取って代わる可能性があるといわれる中、測量士も例外ではありません。とはいえ、クライアントへの対応のように人間でなければできない業務も多く、さらには複雑な土地を測量するには経験値も必要となるため、全てがAIに代わるわけではないと考えられています。
測量士の仕事のやりがい
大変なこともある測量士の仕事ですが、社会の中でなくてはならない仕事であり、もちろんやりがいも多くあります。次ではどのような点で多くの測量士がやりがいを感じているのか紹介します。
建設工事の基礎となる工程を担当できる
測量はさまざまな建設現場の大切な基礎を担っています。どのような建設もまずは設計前に土地の形状や広さなどの把握が必要であり、測量結果を基に建設計画が立てられます。
わずかな誤差やミスが許されないという厳しさはありますが、自分の測量が建設工事の礎となる点は大きなやりがいとなるでしょう。直接建物を建てるわけではないものの、完成した建造物を見た際に喜びを感じる測量士は多いようです。
社会貢献度が高い
測量士は社会貢献度が高い仕事です。道路・トンネル・橋・ダムなどのインフラや、災害後の復旧のような人々の暮らしに直結した現場に携わります。人間の一生よりも長く残る建設物に携わることもあり、完成した際は誇りを感じることができます。
社会的貢献度の高さは、仕事のやりがいにつながるでしょう。
内業・外業のメリハリがある
測量士には内業と外業があるため、メリハリを持って働けます。デスクワークだけではストレスがたまりやすい方も、現場作業に出れば気分転換できます。
一方、外の仕事ばかりが続いても飽きてしまう方もいるでしょう。あるいはオフィスワークから離れすぎると「書類やパソコンなどの扱いに不慣れになるのではないか」と不安を感じるかもしれません。内業がある測量士の仕事であれば、外業と内業の両方があることでメリハリを持って働けます。
新技術を扱う楽しさがある
測量機器の進化は目覚ましく、測量士の仕事には新技術を扱う楽しさがあります。ドローン操縦やAIカメラを使った測量など、新しい技術を習得するには勉強と努力が必要ですが、技術者としての楽しさを感じられるようです。
今まで計測できなかった場所でも仕事ができるようになる、より正確な測量が可能になるなど、技術の進歩を体感することに魅力を感じるでしょう。
測量士に求められるスキル・適性
測量士になるには国家資格が必要ですが、他にどのような適性があると良いのでしょうか。働き始めてから後悔しないためにも、ご自身に適性があるかどうか確認してみてください。
正確性
測量は建設工事の基礎となる作業で、精密さと正確さが常に求められます。例えば工事計画は測量士が作成した測量図面を基に練られますが、万が一誤りがあれば工事の計画が頓挫して練り直しとなります。そのため正確に仕事を遂行できるスキルが必要不可欠です。
協調性
測量の仕事は2~5人程度のチーム作業となるため、精度の高い測量を行うには仲間との協力が必要です。距離の離れた場所にいるスタッフともコミュニケーションを図る必要があり、正確な仕事をするためにもしっかりと大きな声を出して意思疎通しなければなりません。仕事の現場には外注業者など、所属している会社が違うスタッフもいますが、協力し合うことでスムーズな作業が可能になります。
まじめさ
土地の正確なデータを取得するため、何度も位置を変えて作業を繰り返す測量士の仕事には、まじめさも求められます。広大な土地では調査ポイントが多く、何度も移動を繰り返す必要があります。コツコツとまじめに作業することが得意な方こそ、向いている仕事といえるでしょう。
体力
座り仕事に比べると、現場作業には体力が必要です。基本的に作業は野外で行うため、天候によっては暑い・寒いと感じることもあるでしょう。また市街地だけではなく山や森の中に重い測量機器や三脚機器を持って入らなければならないこともあり得ます。足腰が強く体力がある方に適性があるといえます。
まとめ
測量士は、体を酷使し続ける厳しい仕事だと思われがちです。もちろん体力は必要ですが、内業もある上、社会貢献度が高くやりがいを持って働いている方がたくさんいます。また、ドローンを始めとした最新の機器を使えることに魅力を感じている方もいるようです。
測量士になるには国家試験を受けて合格しなければなりませんが、合格率は令和5年度で10.3%のため、入念な準備が必要です。
東京法経学院では、測量士になるための通信教育による最短合格講座や、測量士補を目指す方向けの講座を実施しています。測量士・測量士補試験のエキスパート講師が勉強をサポートするので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。
※出典:国土交通省「令和5年測量士・測量士補試験の合格者を発表」
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