土地の正確な大きさや形、高低差などを把握することは、国家を管理するうえで欠かせないスキルです。
こうした地形のデータを取る科学的測量作業は、なんと紀元前3000年ごろのエジプトですでにおこなわれていたということが分かっています。
今回はこの測量の歴史について見ていきましょう。
測量の起源は古代エジプトから
現在はアスワン・ハイ・ダム建設によって氾濫することがなくなったエジプト「ナイル川」。
しかしダムが建設される以前は、モンスーンの影響で毎年夏になると必ず河川氾濫を起こしていました。
紀元前3000年ごろのエジプトでは、氾濫のたびに区画がめちゃくちゃになってしまうので、河川反乱の度に測量を行い、区画を作り直していたそうです。
また紀元前2500年ごろには水準測定器・垂直確定器・定規といった、測量に必要な機器がすでに使われており、ピラミッド建設の測量技術にも使われました。そのおかげでピラミッドは完全な水平が保たれ、東西南北の誤差は1cm以内に納まっています。古代エジプトで発達した測量技術はローマ、ギリシャ、アラビアに受け継がれ広まっていきました。
地球は丸い? 経験的地図から実測値図へ
現在の広範囲測量では、地球の丸さを考慮して数字を求めます。
では人類が「地面は平面ではない」と気づいたのはいつでしょうか?
実は紀元前4世紀ごろのギリシャでは、すでに地球が球体であることが判明していました。
紀元前3世紀にはエラトステネスが地球の半径を7363kmと計算。実際は約6370kmなので、約16%の誤差です。
16世紀に入るとコンパスの発明、三角測量の技術が確立し、正確な地図が作れるようになりました。三角測量はA地点とB地点の距離と、ターゲットに対するAの角度、Bの角度がわかればターゲットまでの距離が求められるというもの。国土全体をこうして三角で覆っていけば、正確な国土の姿を地図に表すことができます。
それまでは経験に基づいて地図を作製していましたが、16世紀のフランスではこの方法を用い、1世紀以上の時間をかけ、世界初の科学的測量に基づく地図を完成させます。さらに測量の成果から、地球は真球ではなくわずかに南北に扁長な楕円体であることも判明します。この三角測量は、計測機器が発達する20世紀後半まで使われていました。
18世紀に入るとより精密に角度が測れるトランシットが作られ、測量の精度がアップ。
さらに20世紀に入ると、従来の三角測量よりも大きな三角を作れる電磁波測距儀が登場し、広範囲の測量が可能になります。20世紀後半には人工衛星が打ち上げられ、GNSS測量と呼ばれる宇宙からの電波を利用して地球規模での測量方法も登場しました。
日本の測量はいつから始まった?
日本の測量は聖徳太子が生きた7世紀初頭、小野妹子が隋から測量技術を持ち帰ったのが始まりとされています。
大化の改新後、班田収授法が定められ、全国の田の大きさが測量された他、長さや広さといった単位も制定されました。
その後の大規模な測量としては、豊臣秀吉の太閤検地のほか、江戸時代には幕府が何度か諸大名に命じて自国の地図を幕府に提出させ、日本地図を作成しています。
近代の日本で科学的な測量を用いて地図を作成した人物といえば、伊能忠敬です。
伊能は三角測量ではなく、道線法と天体測量を組み合わせて測量を行いました。徒歩で測量した伊能ですが、現在の地図と重ね合わせてみてもほとんど狂いがないことがわかっています。
このように測量技術は、人の歴史と共に発展してきたことが分かります。現在は精密測定ができる機器の登場によって、より正確な数値を記録することが可能になり、その誤差もごくわずかなものとなりました。測量技術とは、人類の英知が詰まったスキルなのです。
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