土木や建設工事の際は、測量士や測量士補が測量を行い、書類を作成することで工事施工が可能となります。土地の正確な面積や形状は測量を行うことで確定するため、測量士や測量士補の資格を持つ人たちはさまざまな工事に欠かせない存在です。
この記事では、工事に不可欠な測量士補の業務内容や年収を上げる方法を解説します。測量士補に求められるスキルや測量士補の試験なども併せてご紹介するため、測量士補の資格取得を目指す方や検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
測量士補の仕事内容
測量士補とは、工事などの際に測量士とともに測量を行う職種です。測量といっても、具体的にどのような業務を行うか熟知している方は多くないでしょう。ここからは測量士補の具体的な仕事内容を解説します。
外業
測量士補の仕事は外業と内業という2つの種類に分かれます。外業とは、河川や道路、建設物の工事予定地で実際に計測を行う仕事です。外業では測量士が立案した計画を元に、測量士補が機器を使用し現地の計測を行います。
しかし、外業は測量士補だけが行う訳ではありません。測量士補の上位資格である、測量士の資格を持つ人が現場で測量を行うこともあります。一般的には測量士は現場を指揮する責任者、測量士補はそのサポートとして働くケースが多いようです。
内業
内業とは、主に社内で行う業務やデスクワークを指します。測量というと、外業のように屋外での計測作業のイメージを持つ方が多いですが、測量で得たデータを社内でとりまとめることも測量士補の重要な業務の一つです。
内業では測量士とともに事前に測量の計画を作成したり、測量後のデータをパソコンなどで分析したりしています。現地で測量しても、計測したデータを分析しなければ工事業者は工事に着手できないため、内業もとても重要な仕事です。
測量士補の年収目安
測量士補は測量士と同じく国家資格ですが、年収がそこまで高い訳ではありません。測量士補の平均年収は概ね以下のとおりです。
- 全国:310~370万円程度
- 東京都:402~424万円程度
- 北海道:275~357万円程度
- 沖縄県:239万円程度
全国平均では300万円台と地域によって差がありますが、一般の会社員と同等程度です。しかし、東京など大都市は年収が高い傾向にあります。そのため、高収入を目指す場合は都市部での就業を目指しましょう。
測量士補が年収アップを目指すなら?
測量士補が年収アップを目指すためには、次の4つの方法があります。
- 測量士の資格取得
- 土地家屋調査士の資格取得
- 平均賃金が高いエリア・大手企業で働く
- 最新の測量技術を学ぶ
どのように年収を上げればよいかを具体的に見ていきましょう。
測量士の資格取得
先ほど測量士補の年収目安をご紹介しましたが、測量士の年収は測量士補より高い傾向にあります。測量士資格を持つ人の年収は300~500万円台です。測量士補と同様に地域や会社による差もありますが、上位資格のため年収アップが期待できます。
また、測量士の業務範囲は測量士補より広がるため、よりやりがいを感じられるようになるでしょう。大幅な年収アップは困難ですが、さらなるやりがいと年収アップを目指して上位資格を取得することは有益です。
土地家屋調査士の資格取得
土地家屋調査士は、不動産の表示登記や土地の境界に関する手続きを行う資格です。測量士補資格を保有している場合、土地家屋調査士の資格試験で平面測量や作図を行う午前の試験が免除となります。
土地家屋調査士は業務上、測量士補資格を持つ人も大勢います。また、土地家屋調査士の有資格者は独立開業して働く人が多い傾向にあるので、将来的な独立も視野に入れている場合は、土地家屋調査士の資格取得も検討しましょう。
平均賃金が高いエリア・大手企業で働く
先ほども解説したとおり、測量士補は東京などの大きな都市ほど平均年収が高く、地方では低い傾向にあります。測量士補として年収アップを目指し、働く場所にこだわりがない場合は大都市の企業を選択肢に入れてみましょう。
また、大手の建設会社などは年収が高い場合もあります。大手企業では大規模な工事を受注しやすく、それが年収にも反映されているため、測量士補として年収アップ
を目指す場合は大手企業への就職を目指すことも一つの方法です。
最新の測量技術を学ぶ
最新の測量技術を身に付けることで、年収アップを目指すことも可能です。測量に関する技術は日々進歩しています。例えばドローンやヘリを使った航空測量や船を使う海洋測量、GPSを利用した測量などです。
最新技術を扱うには専門的な知識と技術が必要になるため、最新の測量技術を持つ人は企業にとって欲しい人材でもあります。また、就業先の選択肢を増やすことにもつながります。転職時にも強みとなるため、測量に関する最新技術を学ぶことも年収アップにつながるでしょう。
測量士補に求められるスキル・特性
さまざまな工事に欠かせない測量士補には、次のようなスキルや特性が求められます。
- 機器の操作
- 正確性・柔軟性
- 体力
- 協調性
それぞれのスキルや特性を詳しく解説します。
機器の操作
測量士補には、計測機器やパソコンなどの操作を苦手としないことが求められます。なぜなら測量士補として働くには、さまざまな機器の操作は欠かせないからです。中には操作に器用さが必要な機器もあるため、手先の器用さも測量士補に求められる特性です。
また測量の技術は日々進歩し、新しい道具やソフトウェアなどが次々と生み出されています。そういった最新の測量技術や知識を身に付けることに抵抗がない人も測量士補に向いています。
正確性・柔軟性
測量士補として働く上で、正確性と柔軟性も必要です。なぜなら測量士補の仕事は人々の生活の基盤となることが多いからです。そのため細かい数値やデータを扱い、計算を苦手としない人が向いているでしょう。
また、どのような現場でも予想外の事態が起こることがあります。そういった事態に対応するには、柔軟な思考や判断が必要です。数値に正確なだけでは、こうした柔軟な対応はできないこともあるため、正確性と柔軟性を兼ね備えなければいけません。
体力
測量士補として働くには体力も必要です。先ほども解説したように、測量士補の日常的な業務として現場での測量があります。現場での測量は整地されていない山の中や足場が不安定な場所で行うこともあります。
さらに、計測機器を長時間運搬するケースも珍しくありません。計測機器の中には、重くて慎重に扱わなければいけないものもあります。そのため、こうした計測機器を持って時には険しい山道を移動できる体力が必要です。
協調性
測量士補には協調性も欠かせません。なぜなら、外業で行う測量は一人では行えないからです。測量は2〜5人程度のグループで計測を行います。時には、離れた場所にいる仲間と連携して計測を行うこともあるため、協調性がないと正確な測量が行えません。
測量では、現場の状況をそのまま数値として残すことが求められます。そのためには、周りの動きを把握し、自らも動かなくてはいけません。つまり仕事を行う上で仲間と協力し、尊重し合うことが重要です。
測量士補になるには?
測量士補は国家資格のため、資格試験に合格しなければ名乗ることも業務に就くこともできません。ここからは測量士補の国家資格について、次の3つの点から解説します。
- 資格要件
- 測量士補試験の難易度
- 量士補試験の受験対策
資格要件
次の要件を満たした人のみ、測量士補として働くことができます。
- 文部科学大臣が認定した大学、短期大学、高等専門学校で、測量に関する科目を修め卒業した人
- 国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で、1年以上測量士補となるために必要な専門の知識・技能を修得した人
- 国土地理院が行う測量士補試験に合格した人
測量士補試験の難易度
測量士補の資格試験には制限がないため、誰でも受験できます。しかし、当然ながら受験したからといって誰でも合格する訳ではありません。直近3年間の測量士補の資格試験の合格率は次のとおりです。
年度 | 合格率(%) |
---|---|
令和5年 | 32.2 |
令和4年 | 44.1 |
令和3年 | 34.8 |
※参考:
国土地理院「令和5年測量士・測量士補試験の実施状況等について」
国土地理院「令和4年測量士・測量士補試験の実施状況等について」
国土地理院「令和3年測量士・測量士補試験の合格者を発表」
試験の年によって差はありますが、合格率は30〜40%とそこまで高くはありません。しかし、上位資格である測量士の資格試験の合格率は10%程度とさらに低いため、測量士補は比較的目指しやすいといえるでしょう。
測量士補試験の受験対策
測量士補試験の受験対策には、一般的におおむね200時間ほどの試験勉強が必要とされています。試験勉強の方法は人それぞれで、参考書などを購入して独学で勉強する人もいれば、資格試験の予備校に通う人もいます。
しかし、独学での勉強はしっかり計画を立てなければ、試験当日までモチベーションを維持するのが困難です。そのため、初めて受験する人は質問などがしやすい予備校への通学や通信教育による勉強がおすすめです。いずれにしても、自分の生活や勉強スタイルに適した方法で試験に備えましょう。
測量士補ではなく最初から測量士に挑戦すべき?
測量士補と測量士では、上位資格である測量士の方がより幅広い業務を行えますが、業務内容にそこまで大きな違いはありません。測量士資格の方が良い待遇の場合もあるため、初めから測量士を目指したい人もいるでしょう。
しかし、企業によっては測量士補でも測量士と変わらない待遇の場合もあります。先ほども解説したように、測量士の資格試験の合格率は、測量士補と比べて低めです。そのため資格取得にかけられる時間や費用を考慮して測量士補を目指す人もいます。
また、土地家屋調査士の取得を先の目標にしている場合は、免除になる試験範囲が同じであるため測量士ではなく測量士補で充分といえます。いずれにしても、測量士も測量士補も資格試験の合格率は高くないため、学習環境を整えて挑む必要があります。
まとめ
測量士補は多くの土木・建設工事に欠かせない資格であり、適正がある人にとってはやりがいのある仕事です。向き不向きはありますが、将来的にさまざまな方向で収入アップを目指すこともできます。
測量士補の仕事に興味がある方や資格を取得したい方は、東京法経学院にご相談ください。ベテランの講師陣と充実した内容の講座で受験勉強をサポートします。東京法経学院で学び、測量士補の資格を取得して充実した仕事につなげましょう。
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株式会社東京法経学院は10年以上にわたり、土地家屋調査士・測量士補・司法書士・行政書士など、法律系国家資格取得の受験指導を行ってきました。
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