成年後見制度という言葉を新聞やニュースなどで、よく目にしたり耳にしたりすることはないでしょうか。その記事内容は気持ちのいいものだけではありません。成年後見制度を悪用した事件の記事も多々あるからです。なぜそのような事件が起きているのでしょう。その原因を探るためにも、成年後見制度とはどのような制度か確認していきます。
成年後見制度とは?
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより、判断能力が不十分な方を保護、支援する制度です。
成年後見人には、任意後見人と法定後見人があり、前者は本人の判断能力があるうちに、本人が選任し、後者は判断能力が不十分となった本人の近親者などが家庭裁判所に申し立て、家裁が後見人を選任します。法定後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の三つがあり、本人の判断能力の程度などによってそれぞれ選ばれます。
成年後見制度で成年後見人になるために特別な資格は必要ありませんが、未成年者や破産者などは欠格事由に当てはまり、成年後見人になることはできません。
成年後見人には、司法書士や弁護士といった法の専門職が選ばれることが多々あります。財産管理や契約締結に精通し、中立的な立場で本人を支援できるためです。また、本人の親族が成年後見人に選ばれることも少なくありませんが、本人が親族とトラブルを抱えている場合も、専門職が多く選ばれます。
成年後見制度の悪用事例
先にも述べたように、本人の近親者以外の後見人は、弁護士や司法書士といった専門職が務めることが多く、その割合は年々増えています。しかし、専門職として法を司るはずの後見人が財産を着服していた事例も発生しているのです。その事例を以下に二つ挙げます。
「社会的地位のある立場を悪用して信頼を裏切った」。横浜地裁は今年3月の判決で、業務上横領罪などに問われた弁護士の男を非難した。自分の事務所の経営状態が悪化したことが犯行動機だったと認定、懲役4年6月を言い渡した。
1月には福岡地裁が、高齢女性の口座から約750万円を着服したとして業務上横領などの罪に問われた元司法書士の男を有罪とした。判決は「横領した金を競馬につぎ込み続けた」と指摘した上で「制度の根幹を揺るがしかねず、言語道断だ」と指弾した。
引用元
成年後見制度:専門職の不正最多 弁護士ら、財産着服など37件 – 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160415/ddm/012/010/029000c#csidx0656619e2350add95c3077b850a636c
Copyright 毎日新聞
このような事例から分かるように、後見人になると本人の財産を自由に出し入れできるようになります。後見人には、年に一回、家庭裁判所へ本人の財産に関する報告書の提出義務がありますが、着服などの不正を防止するにはいたっていません。すなわち、成年後見制度とは、後見人のモラルによって保たれる制度といっても過言ではないでしょう。
成年後見制度の課題点
成年後見制度は日本の少子高齢化社会において、これからますます大事になってくる制度です。成年後見制度の悪用事件が後を絶たない原因は、この制度の内容の複雑さも影響しています。さらに、親族同士での事件や、法を司るはずの専門職の不正は、法や制度の根幹を揺るがしかねないゆゆしき事態となりかねません。
成年後見制度の是正もさることながら、後見人自身が支援するべき方を尊重し、この制度を正しく活用することが必要となってきているのです。
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