行政書士とは?|東京法経学院





ますます活躍の場が広がる“町の法律家”

行政書士試験とは

行政書士とは行政書士試験の難易度行政書士試験の平均学習期間・勉強時間試験概要資格概要市民のために果たす役割行政書士の展望

ますます活躍の場が広がる“町の法律家”


 行政書士とは

行政書士とは、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類等の作成を業とする国家資格者のことを指します。行政書士誕生のきっかけは、明治政府が欧米の裁判制度を導入した際に、その公正、迅速な運用を図るため、文字や文章を書くことが出来ない者又は書式手続きに不慣れな市民に代わって代書人に訴状を作成させるものとしたためであるとされています。平成の今日に至っても、社会の高度化に伴い、国民に作成・提出が求められる書類もまた複雑・多様化し、国民の権利保護・行政事務の円滑な遂行の観点から、行政書士に求められる役割・責任は、資格制度誕生時のそれとなんら変わりありません。


 行政書士試験の難易度

行政書士試験は合格率が10%前後のやや難しい試験です。受験者数は平成22年度に70,000人に達したこともありましたが、ここ数年は40,000人前後を推移しています。相対試験ではなく絶対試験のため、合格基準をクリアすれば合格できる試験です。法律系国家資格のなかでは比較的簡単な部類に入る試験とされており、入門資格の位置づけとなっていますが、合格率からもわかるように、基礎的な知識だけで合格できる試験ではありません。基礎的な知識を適切な場面で正しく使いこなせる力が必要となります。

年度 受験者数 合格者数 合格率
2022年度 47,850人 5,802人 12.1%
2021年度 47,870人 5,353人 11.2%
2020年度 41,681人 4,470人 10.7%
2019年度 39,821人 4,571人 11.5%
2018年度 39,105人 4,968人 12.7%
2017年度 40,449人 6,360人 15.7%
2016年度 41,053人 4,084人 10.0%
2015年度 44,366人 5,820人 13.1%
2014年度 48,869人 4,043人 8.3%
2013年度 55,436人 5,597人 10.1%
2012年度 59,948人 5,508人 9.2%

参考:最近10年間における行政書士試験結果の推移|一般財団法人 行政書士試験研究センター


 行政書士試験の平均学習期間・勉強時間

行政書士試験に合格した人の平均学習期間は6ヵ月〜1年です。1日 2〜3時間の勉強時間が必要となります。出題範囲が広いので復習をしっかり行い全体的な理解をする必要がありますので、継続して勉強を行っていく必要がございます。


 試験概要(2024年12月8日現在)

●令和6年度 行政書士 試験概要


 資格概要

昭和20年以前、人に代わり書類を作成することを生業とする者は代書人と呼ばれていました。司法関係の代書を業とする者が一般に司法代書人(現在の司法書士につながる)と呼ばれたのに対し、市町村役場、警察署等に提出する書類の作成を業とする者は行政代書人(現在の行政書士につながる)と呼ばれました。現在、行政書士の登録者数は全国で4万人強です。日本の人口が約1億2千万人ですので、3千人に1人は行政書士という計算になります。「行政書士」と名乗るためには、まず、毎年行われている行政書士試験に合格した後、日本行政書士会連合会(以下、「連合会」という。)に登録し、各都道府県行政書士会に入会することが必要です。


 市民のために果たす役割

ところで、行政書士とはどのような仕事をする職業なのか、明確にはわからない人も多いかもしれません。そもそも行政書士とは、他人の依頼を受け報酬を得て、書類作成等を業とするものですが、行政書士法1条の2第1項に「官公署に提出する書類…その他権利義務及び事実証明に関する書面」とあり、また、「行政書士」という名称からして、概ね役所に提出する書類を扱うと思われがちです。しかし、実際は役所に提出するもの以外にも数多くの書類を扱うことができ、同条2項に規定されているように、原則として「他の法律において制限されているもの」以外のすべての書類をその業として扱うことができるのです。それでは、具体的に行政書士の業務を挙げてみましょう。


 行政書士の展望

行政書士の新しい業務展開のひとつとして、ADRが注目されています。このADRの基本的な定義は、直訳すれば「裁判外紛争解決手段」と訳されます。現在、行政書士界でも最も力が注がれている分野です。具体的にどのようなことをするのかというと、裁判になる前に当事者の話し合いによって事件を解決しようというものです。裁判となると、当事者にかかる時間も費用も大きくなものになるので、裁判になる前に未然に廉価で迅速に事件を解決するということがその主な趣旨です。このADRを業務として獲得すべく、行政手続を扱う士業として、民間型の行政手続ADRの法制化を国にお願いしていますし、行政書士の資質の向上の一環として、連合会をはじめ各単位会や支部において、さまざまな研修を行っています。例えば、我々がADRを業務とするためには、法廷での調停能力などがきちんと修得されていなければなりません。特に「行政手続」の分野においては、行政書士として生き残っていくためにも自己研鑽が必要になってきます。

  その他の業務拡充の動きとして、現在検討中ですが、行政書士の代表的な業務のひとつである本人出頭原則である「入国管理の手続代理」について大きな変化が生じようとしています。この業務は、行政書士であっても法務大臣の承認を受けた者のみができる業務(現在約4,000人程度)でしたが、この度の規制改革路線に伴い、弁護士も業務範囲にしたいと提言してきたのが発端です。これを受けて行政書士界では、それを弁護士業務と認めるのであれば、行政書士であれば誰でも入国管理の手続代理をすることができるよう要請しています。つまり、今までの法務大臣の承認の撤廃を求めているのです。これが認められれば各行政書士の業務の幅も更なる拡がりをみせるでしょう。

 最後に、行政書士はもちろん、21世紀の資格業者の基本姿勢として考えられなければならないのが、国民の法的利益が最優先の、利用する側(国民の側)に立った法律サービスです。例えば外国人が日本で会社を新たに設立することを想定した場合、株式会社の設立書類は行政書士にお願いし、その登記は司法書士に、さらに当然に雇用が発生するので、社会保険労務士に就業規則や各種保険関係の書類の申請をお願いしなくてはなりません。これでは、依頼者はあちらこちらの事務所を渡り歩かなければならず、「ひとつの事務所に頼めば全部済む」という"ワンストップサービス"が機能しません。このあたりの整備拡充が各士業とも急務になるでしょう。

 世の中は常に流動的に変化し、法律等も新しく制定、あるいは改正されます。このような機会こそ、自己能力を高め、新しい仕事を開拓するチャンスなのです。行政書士には未開拓分野が多く残されていますし、また新たな分野の出現の可能性も高いため、新規参入者にも大きな魅力があります。プロの法律家としての自覚を持ち、常に社会のニーズに応えられるように精進することで国民に貢献する、これが行政書士に求められる姿でしょう。みなさんにも、このような気持ちを抱きながら、市民に喜ばれる、真の意味での"街の法律家"として活躍されることを期待します。