平成15年,長年勤務していた銀行が経営破綻により営業譲渡され退職することになりました。
当時の雇用環境,自身の年齢的などのこともあり再就職は極めて困難な時期でした。銀行在職中に取得した宅建主任者(将来宅建業の開業を考えていた)の資格を活かして不動産業に従事し不動産業と関連性のある行政書士をめざしました。
本試験を受験してから早くも3回目を迎えていました。初年度は,資格専門学校で受講し,2年目からは,独学を主体としました。模擬試験(通信講座)は東京法経学院と決めていました。理由は18年度の模擬試験での講師の講評は基本からやり直しと厳しいものであり,的確な指示であったと思ったからでした。今までの本試験の結果は,総体的に獲得点数が低く合格基準点までの乖離が大きく,突出した科目がありませんでした。特に一般知識は足切りギリギリで総得点寄与は少なく加えて多肢選択式問題では,マークミスもあり基本が欠けていました。
当日の学習で理解したと思っても時の経過と共に忘れ去る。単に時間の無駄使いの繰り返し。
扉の叩き方が弱いのか等々試験対策に行き詰まっていました。
今までの学習を無駄にしたくないこと,本年合格しなかったら受験を断念する決意であること,効率よく又費用負担も少なくてすむ学習方法にて行うこと,を前提条件として,
これらを継続することを目標としました。
? 得意な科目,いいかえれば好きな科目と用語を作ることに力を入れました。私の場合は,行政手続法,不服審査法,個人情報保護法,憲法で言えば国会,民法なら債権関係,親子,相続等であります。また好きな用語(珍しい用語)では,社会保障,行政改革,けだし,ひっきょう,等々です。どのようにしたら好きになったかといいますと,好きになりそうなもの又印象に残ったものをノートに書き出しました。
そして新聞,ニュース,報道番組,諸雑誌等を見たり聞いたりした時に,興味が湧きもっと深入りしたくなると参考書,六法等で詳しく調べました。こうして覚えたことは忘れないものでした。
? 購読している新聞は,以前はただ漠然と読んでいました。これを毎日朝30分,夜30分1日合計1時間は真剣によく読むことにしました。
いまどき初歩の初歩をしていると笑われますが読むことのトレーニングと時事問題等の対策を兼ねました。起床を1時間早めました。早起きは気持ちが良かったですよ。単純計算しても年間350時間以上は確保が出来る。新聞記事は試験出題範囲に関係があると思われる箇所を切り抜き,ノートに貼付しました。この時ノートに余白を残し記事の補足(用語等の解説)が記入出来るようにしました。朝一読した時必要と思われる個所をマーカーしておき夜に再読する時必要と思われる個所を切り抜きました。補足するときは使用している参考書,判例付六法の該当ページ又は条文等で確認しながら書いていきました。ノートの表紙には記事の表題を記入し後日再読(再確認)する時に利用する。記事は必要最小限にとどめました。
? 今日学習した内容を学習後の記憶ノートにキーワードを使って書き出してみる自己習得度については,当初はキーワードすら書けない状況でした。用語が断片的になり文章としてつながりません。この繰り返しが続き挫折寸前まで行きました。もう1回努力してみようと自分に言い聞かせ諦めずに継続しました。すると徐々にではありますが書き出せる項目が増えて
きました。
良かったこととして,新聞記事の余白に詳細な内容を書いていくと理解が早まりました。訴訟事件関係であれば最高裁の判決,内容(例として使用者責任の範囲など)又は一般知識であれば最近時の状況が分かり,問題点(例として個人情報保護法の過剰反応,情報通信であればSNS など)が把握できました。当初は大変な作業と思いましたが継続しているうちに苦にならなくなりました。(スペースの関係上現物をお見せすることが出来なくて申し訳ありません。)
「書くことで理解が深まる」についてですが,一般知識の文章理解の問題で模試,過去問の問題文を作者になったつもりで書いて学習しました。何回となく書いているうちに文章の組み立て方,主旨,要旨がわかってきましたし長文も苦にならなくなりました。記憶ノートに書いているうちに疑問点が浮かび上がり直ちに参考書等で調べる。そうこうしているうちに理解が深
まり模試では各回200点確保できるようになりました。「目標がその日その日を支配する」今このことがわかったような気がしました。
本試験当日では,最初に多肢選択式問題から取り組みました。この問題で気持ちを落ち着かせる意味もあり多少時間を掛けマークミスには特に注意を払いました。そして法令問題に戻り得意な科目から始め記述式問題は法令問題の最後としました。一般知識問題は番号順に解きました。
本試験結果としては苦手としていた一般知識は12問正解でした。問題58から60問の3問は全て正解を得ることが出来ました。欲を言えば記述式問題前で合格基準点に達していないのが悔やまれます。切抜き記事は試験対策上の一手段にすぎませんが相応の効果はありました。
ついに鉄の扉が開いたのであります。決して強く叩いたわけではなく叩く位置ではなかったかと思いました。
私と同じ団塊の世代の皆様でこれから受験される方,再度挑戦される方に少しでも参考になれば幸いと思っています。
20年度行政書士試験を受験される皆様方の合格を心よりお祈り申し上げます。