大学卒業後,10年以上会社勤めをしていましたが,不安定な雇用状況を懸念し,専業受験生となって司法書士をめざす決心をしました。
ほぼ独学に近いかたちで受験勉強を始めましたが,ある日,知り合いの司法書士の先生の勧めで,東京法経学院名古屋校の講師である簗瀬先生を,ご紹介いただきました。
私にとって,この出会いがなければ,おそらく合格はありませんでした。
さて,講師の先生や,周囲の受講生と疑問点を話し合って解決できる頼もしさは,とてもありがたいものでした。しかし,せっかくよい環境に身を置いたにもかかわらず,私は頭に詰め込む作業だけに専念し,体系的に知識を整理することはしませんでした。例えば,苦手な択一式よりも得意な書式を勉強したり,問題を解く速度が遅いにもかかわらず,その対策を怠ったりです。
結局,1年目は不合格でした。
2年目は,これらの欠点を意識して,勉強を進めました。
1年目と比べて,横断的なつながりも理解できるようになり,解く速さも備わってきました。
とはいっても,合格するほどの実力がついたわけではなく,結局,この年も不合格でした。
まんべんなく得点する力がついていなかったことに加え,できる問題を難しく考えすぎて,点を落としていたのです。例えば,最初に選んだ肢に自信が持てず,別の肢を答えた結果,実は最初に選択した肢が正解だった,などということが何度もありました。
合格に対する貪欲さがなかったこと,それが失敗の原因だったと思います。
3年目は,六法と過去問を中心に,問題集を速く正確に解くことだけを考え,わからない問題に遭遇しても,そこで止まらずに次の問題を解き進むようにしました。
多くの問題集を解いてみていえることは,わからない問題があっても,そのあとに続く別の問題や解説を読むことによって,疑問点が解決することが,結構あるということです。
このように勉強を進めたところ,前年度よりは,かなり力がついたように感じました。
しかし,落とし穴は,別のところにありました。それまで風邪ひとつひかなかったのですが,本試験の数日前に帯状疱疹になってしまったのです。痛みに耐えながら受験はしたものの,集中力を欠き,結果は惨憺たるものでした。
健康管理の不徹底は,最もやってはならないことです。
この勉強は長丁場ですから,体力作りは必須で,運動を定期的に行うことをお勧めします。
4年目は,過去の答練を中心に,勉強することにしました。答練には,過去問に似た問題もかなり出題されているからです。
また,条文をしっかりと読むことも繰り返し,誰もが落とさない問題で失敗しないようにしました。
そして,答練では上位をめざす気持ちを抑え,あくまでも本試験のシミュレーションの場と思い,さまざまな解き方を試しました。
午前の部では,解き始める科目を変え,午後の部では,書式から解き始める場合には90分で中断して択一式にとりかかり,択一式終了後,再度書式問題の残りに取り組む,というルールを作りました。これは,まんべんなく得点して,足切りを防ぐためです。
この答練でのシミュレーションは,成績の安定にもつながり,「自分が解けない問題は,誰も解けない」と思えるようになりました。
解く速さは,気にしないようにしました。なぜなら,不思議なもので,自分のリズムで解いているときの方が,じっくりと解いているときよりも成績がよかったからです。
頭の回転がうまく働いているときは,より力を発揮できるのでしょう。
本試験前の1週間は,勉強が手につきませんでした。そのようなとき,講師の先生に「合格するときはそんなもの。大切なのは平常心」と教えられて安心し,落ち着いて過ごしました。
そして,試験当日。
午前の部の試験が,例年に比べて易しかったので,午後の部の試験は,難しくなるだろうと,気持ちを引き締めました。また,午後の部の試験では,開始直前に書式の解答用紙が配付されるので,それを見て出題予想をし,少しでもスムーズに取り組めるようにしました。
午後の部の試験が始まり,予定どおり,書式から解き始めました。
不動産登記は少々悩んだものの,自分の事案分析を信じ,素直に書き終えました。商業登記は,想像していなかった譲渡人の債務免責の承諾書が登場しました。しかし,合否が左右されるほどのものではないと判断し,すべてを書き上げた後に,択一式に取りかかりました。
マークミスをチェックした後,時間に余裕があったので,商業登記の登録免許税を再計算しました。すると,間違いがあることに気付き,終了時刻が迫るなか,何度も計算をやり直し,最後に確信を持った数字を書いて試験は終了しました。
このとき,私は初めて達成感を味わうことができました。
優れた能力があるわけでもない私が合格できたのですから,諦めずに勉強を続けることで,道は必ず開けると思います。また,勉強方法は,十人十色です。自分の勉強方法を早く確立させることが,目標達成への近道だと思います。
私がここまで辿りつけたのも講師の先生のご指導,司法書士の先生や友人の励まし,そしてよき勉強仲間に恵まれたおかげです。
また,長く勉強を続けられたのは,家族の協力があったからです。最後に,その妻に感謝の意を述べてこの体験談を終えたいと思います。