司法書士試験の受験生には,司法試験と縁のある方も少なくないと思います。例えば,司法試験から転向した方や司法試験へのステップとしている方,受験期間等の年数等を比較検討して,司法書士試験を選択された方も多いのではないかと思います。
私も司法試験からの転向組の一人で,共通科目が多いこと,独立可能なこと,司法試験の受験長期化の不安などもあって,司法書士試験に方向転換しました。
ところが,いざ受験を決意して,司法書士の平成12年度問題を解いてみると,民法の択一問題は,司法試験レベルを超え(今年は違いましたが),商法・民訴は司法試験の択一科目にないため,条文レベルの細かい知識に欠け,結局,司法試験で養った知識をそのまま流用できたのは刑法だけでした。
他の科目は全く手つかずの状態で,本試験まで約1年という時期でした。とりあえず,平成13年6月末から(7月は予備にとっておき)逆算して年間スケジュールを立てました。すると足りないんです,日数が……。最低この程度は勉強しておきたいと思うことを日数に割り振ると,基本書だけ読んで終わってしまいそうなので,思わず目眩がしました。
ちなみに,この程度は勉強しておきたいと思ったのは,1.基本書の3回精読,2.平成12年度までの過去問の理解,3.基本書式が即座に書けるまで練習,4.書式の論述対策の4つでした。
しかし,結論からいうと,1.基本書は2回目の途中まで,2.過去問は択一80%,書式70%程度の学習,3.基本書式70%,4.論述対策60%程度という状態で本試験当日を迎えてしまいました。
本当は,1週間・1日単位で予定を立てた方が,勉強もはかどるだろうと思ったのですが,あまり几帳面でも計画倒れになりそうなので,1ヵ月単位で予定を立て,予定表に,問題集の開始日と終了日を記録しておきました。また,同様に基本書・問題集自体にも日付を書いておくと,前回どこを学習したのかが分かり,便利でした。
択一過去問は,まず,できなかった肢にV,曖昧な肢は△,絶対自信のある肢は×,2回目で正解した肢はV×,解説部分だけ読みたい肢は□などの記号を付け,自分なりに過去問を分類しました。そして,2回連続で誤った肢だけ,サブノートに抜き出して貼りました。裏には,何を間違ったのかの自分の弱点を端的に書き,
これが弱点補強に役立ち,本試験まで重宝しました。
基本書式は,毎日1つ,就寝30分前に書いて覚え,起床後,洗面中に頭の中で反復し,覚えていなかった書式はもう一度覚え直すということを繰り返しました。
書式の論述対策は,解答例などを丸暗記せず(そんなことはできず),自分なりの言葉でノートに書き直しました。結論→根拠条文・制度趣旨など要件成立→事例への具体的当てはめというように,一応のひな型を用意して,初めての問題を見ても,何とか書式の形ができるように備えました。以前していた司法試験の論文対策の学習は,本格的には取り組まなかったものの,論理の流れを作る上での参考になったと思います。
また,添付書類の添付理由は,何が出ても書けるように約20パターン位,準備して暗記しました。
人によると思いますが,基本論理を理解するためのサブノートは,司法試験時代の経験からいっても学習の始めほど作りたい欲求にかられますが,時間がかかる割には,勉強が進むと殆ど使えなかったので,基本書などへのメモ書き程度で済ませました。
やるべきことは沢山あるので,まとめノートを作るぐらいなら,基本書の読みと過去問や問題集を反復学習した方が効果的だと思います。
私は,問題を解く時間が遅く,時間内に本試験を全て解くことは,不可能に思われたので,得意分野から本試験を解答する作戦をたてました。1次試験は,問18の身分法から刑法,商法の順番で解き,財産法に長時間あてる予定にし,2次試験は商登書式,不登書式をまず解答し,択一問題は民訴法問1から始め,最後に不登法択一を解く作戦を立てました。マークミスの心配な方には,お薦めできませんが,とにかく時間切れにならないように私なりに考えた解答順序です。
結果として,今年の本試験の印象としては,知識型が多く,肢の文章も短めで,一番苦手としていた不登書式は,事実関係を整理する必要がほとんど無かったので,最後の15分で見直しする余裕さえがありました(自分のミスを2か所見つけました)。
余談ですが,会場は冷房の調節ができない大学の教室だったため,私は寒くて2回冷房を切ってもらった程なので,念のため,冷房対策をして行くことをお薦めします。
最近,合格の条件として,「法的思考力」「論理的思考力」とよくいわれますが,幾ら思考しようとしても考える素材がなければ無意味な訳ですから,基本的事項の記憶は決しておろそかにできません。ただし,理解していなければ応用もできませんし,記憶も定着しません。
具体的には,民法・商法は制度趣旨,刑法は保護法益,不登法・民訴法等の手続法は,実体法の何を実現しようとしているのかをいつも考えていれば,合理的に記憶できると思います。
なお,基本書や条文を読む時も,絶えず全体の中での位置付けを意識しておかないと,頭の中で法体系がつながりません。
また,ポイントだけの学習では,実務に就いた時に苦労するという話を聞いたことがあります。しかし,必要以上に広範囲に学習すると,自然と受験も長期化し,精神的にも経済的にも追い詰められ,リタイアしてしまうことも考えられます。それよりは,一定量の必要情報を自分なりに早く見つけ出し,繰り返し学習し,「使える知識」として定着させるのがよいと思います。何といっても,合格しなければ実務に就けない訳ですし,今年駄目でも来年合格できるという保証も無い訳ですから。
最後に,諸先輩方の合格体験記は,勉強に今一つ気が乗らない時や頭の疲れた時に読むことをお薦めします。なぜなら,「きちんと学習をしなければ合格できない」と,頭に刺激を与えて貰えることが多いのです。