私が司法書士試験受験を思い立ったのは,約3年前の12月,最初の試験まであと7ヶ月,という時期でした。法学部出身者でしたが,憲法,刑法を得意とし,民法,商法といった私法には疎かった私にとって,私法を中心とした司法書士試験は最初から敷居が高いものでした。
本試験まで7ヶ月しかないため,以前に勉強したことのある民法,商法はあと回しにし,手付かずの不動産登記法,商業登記法,民訴他,という順序で始めました。不登法,商登法のテキストは,A社のものを使用しました。ところが,これでは全く追いつかないことが判明したのは,本試験の2週間前に前年度の問題を本番の時間通りに解いてみて,半分も正解できないことが判った時でした。お陰で(不合格を確信して)本試験は気軽に受けることができ,自己採点の結果は択一5割,書式6割といったところでした。
そこで,東京法経学院(以下「学院」)から解説書を送ってもらい,敗因を分析したところ,民法では多くの判例の知識が不可欠で,また不登法,商登法では多くの先例の知識が不可欠であるにもかかわらず,当時自分の持っていたテキストでは全く情報量が足りないことが判りました。
合格に必要な情報はどうしたら得られるかを考え,最終的に受験指導校に通うのが一番近道と判断しました。法律の文章(特に問題文)は難解なため,独学や通信では完全に意味を把握することが難しく,逆に通学では講師に質問して疑問を解決することができると考えたからです。
平成12年度の学院の秋の講座「新本試験研究」 は,民法,不登法,商法,商登法の重要論点を掘り下げたもので,推論問題に対応しているが,それでも足りないと考え,全論点を網羅するために,さらに民法では司法学院の「択一論点総まとめ」,他の科目ではLECの「オールマイティ」を使用しました。2000年1月からは学院の答練を受講しました。答練の成績は,最初はCから始まり,3月頃からBが多くなってきましたが,最後までAは取れませんでした。
本試験ではよほど頑張らないと合格しないと,この時点ではまだ望みを捨てずに本試験に臨んだところ,本試験当日の早朝から吐き気をもよおし,当日の朝,何も食べられず,何も飲めずにふらふらになって横浜の試験場に辿り着きました。「よほど頑張らなければ」という思
いがプレッシャーとなって,体調を崩してしまったようです。結果は,体調を崩したこととは関係なく,択一6割,書式4割という,実力相応の結果でした。
平成12年度の本試験の結果を振り返って,試験で正解しなかった部分も含めて,自分の持っている教材で全てカバーされていることを確信し,目の前の教材を完壁にこなせば合格可能であることを確信しました。もう一度東京法経学院の秋の講座「択一パワーアップ講座」を受講し,翌年は答練を受講しました。1月末からは米国に出張しましたが,3月中旬から答練に復帰し,成績はAランクを維持し,合格を狙える範囲に入ったという手応えを感じました。
しかし,本試験まであと1ヶ月に迫ったある日,また早朝から吐き気に襲われました。またもやプレッシャーに取りつかれてしまったのです。このままでは昨年の本試験と同じになってしまうと思い,意識的に,「無理して勉強しなくても合格できる。不合格だったら,もう1年やればよい。」とマインド・コントロールして,プレッシャーをやわらげました。その甲斐あって,本試験では吐き気に襲われることもなく,落ちついて試験を受けることができました。結果は,択一が1次28/34,2次25/35,書式の不登法を単独申請,商登法95%という具合で,薄氷を踏む思いでしたが,横浜地方法務局の掲示板に自分の受験番号を発見することができました。
私の勉強のしかたについて振り返ってみると,最も重要だったのは,平日の勉強時間の確保でした。仕事の忙しさには波があり,予定外の残業が多かったため,毎朝出勤前に1時間勉強時間を確保し,通勤電車の中(45分座れる)
でも勉強に利用し,残業があっても最低限の勉強時間を確保しました。
次に工夫したのは,民法や商法の条文は文語体で書かれているため読みづらかったので,自分のパソコンのWord上で口語体に書き直したことです。こうして長い条文も読み易くなり,また重要な判例を括弧書きで追記したり,準用条文に括弧書きでメモを挿入し,準用先を引かなくても判るようにして効率を良くしました。
商法や商登法では,類似・関連事項をExcelの表を使って整理し,リレーショナル・データベースを作って,関連付けて覚えました。
テキストについては,学術的な概説書は司法書士試験で問われることがあまりなく,問われないことも書いてあるので効率的ではないと思います。受験指導校発行のテキストが試験範囲を過不足なくカバーしているので,最適なのではないでしょうか。テキストを1回読んでも1〜2割しか頭に残らないので,テキストを読み,過去問・答練で確認し,再度テキストを読むことの繰り返しで実力をアップさせました。答練でできなかった論点をパソコンで項目別に整理して,何度も読み直して確認しました。過去問・答練の論点は,結局のところ点でしかなく,最終的には試験範囲はテキストでカバーしなければならないと思います。
刑法は本試験で問われる範囲がある程度限定されているので,過去問で傾向を分析して,よく問われる部分を秋頃の時間に余裕のある時に基本書を読み込み,その後は模範六法を読んで,重要と思われる条文及び判例に赤ペンで印を付けておき,本試験前には印を付けた部分のみ読むという方法で効率アップを図りました。刑法は出題が偏っているので,傾向分析が重要です。
最後になりましたが,学院の答練では,鎌形先生をはじめ多くの先生方には,講義時間を大幅に超過してまでも,熱心に教えて頂き,大変ありがたく思いました。心より御礼申し上げます。