「合格と不合格を分けたもの」|合格体験記|司法書士試験|東京法経学院





司法書士 合格体験記

「合格と不合格を分けたもの」

体験記

 体験記

M.Tさん(福井県)

◆苦い経験から学んだもの

  私は平成16年,3回目の受験で司法書士試験に合格しました。
1回目の受験は,平成14年度。択一式は55問正解でしたが,記述式で足切りとなりました。2回目の翌平成15年度は,択一式正解56問,記述式38点で,総合点が2.5点不足して不合格となりました。3回目の平成16年度は択一式正解58問でした。ずいぶん勉強したはずなのに,択一式の成績はあまり伸びませんでしたが合格となりました。合格と不合格を分けたのは,一体何なのでしょう。

 平成14年度の本試験では,商業登記記述式の論点が話題になりました。私は,合併の登記を消極にしました。そのことがどのように影響したかはわかりませんが,記述式で大きな失点をしていました。受験指導校の模範答案が,合併積極になっているのをみて,ずいぶん悔しい思いをしたことを今でもよく覚えています。

 平成15年度の試験では,商業登記記述式の問題で,新株発行数を800株としてしまいました。おそらく大きな減点となり,不合格の直接の原因となったと思われます。しかし択一式でも,合否を分ける分岐点で,不合格の側を選択していたものがありました。まず,商業登記法の問題で,新株発行の添付書類に株式申込証と引受けを証する書面を添付すると書かれた選択肢で,これを誤りと判断しました。次に,不動産登記法の問題で,農地の条件付所有権移転仮登記に関する選択肢の記述が先例の記述と明らかに異なることに気づいて,出題者の考えはおそらくこれを正解としたいのだろうと思いながらも正確を期すれば誤りであるとして,結果的に失点しました。さらに,民事保全法の問題でも記憶が曖昧で,2肢のどちらかに決めかねていたものがありました。答案を早く作成できたこともあり,この問題の見直しに5分を費やし,とりあえず塗っておいたマークを消し,別のマークに塗り直しました。ところが,最初にマークをした肢が正解でした。もし見直しをする時間がなければ,合格していたのでした。

 平成15年度の筆記試験の結果をみて,その後,平成16年度に向けた受験勉強を始めました。勉強をするのは当然のこととして,過去の苦い経験から,勉強以外のことにも気を配るようになっていました。答案練習会や書式の問題で,点数が良かったり悪かったりする原因は何なのだろう,と考えました。自分が苦手な分野や間違えやすい出題形式が出ること,試験中に集中力を削がれる場合があること,体と脳が疲れた状態で受験すること,などに気がつきました。

◆3年目の試行錯誤

 最初にしたことは,苦手をなくすことでした。それには実戦訓練がベストと考え,できるだけ多くの問題に接することにし,答案練習会の受講,過去問のおさらいなどに時間を割きました。そのうち,どんな問題が出されても困惑することがなくなりました。

 次に,試験中に集中力を切らす要因を探しました。答案練習会を受けているときに,すぐ近くで騒音を立てて工事が始まった時には,明らかに集中力が落ちました。そして,意外だったのが,隣に座る人の影響でした。答案も作成せずに,腕を組んでぼーっとしている人がいる,カンニングをしている人がいる,そんな時には気を取られて,集中力が削がれるのでした。

 体と脳が疲れた状態はどうかということで,答案練習会前の1週間を猛勉強した時と,まったく勉強せずに遊び歩いた時とを比較してみました。すると,猛勉強した時は不合格の判定をもらったのに,遊び歩いた時は全国でトップクラスの成績になりました。

 そんなことをあれこれと試し,自分なりに改善を加えながら受験生活を過ごし,平成16年度の本試験に臨みました。どんな問題が出ても,大崩れしない答案が作成できるはずでした。そして,試験前の1週間は映画を観に出かけたり,のんびりと過ごし,嫌が応にも盛り上がる緊張感をほぐしながら,疲れないようリラックスすることに努めて過ごしました。

◆合格を左右したもの

 さて,本試験が始まりました。自分の判断基準ではなく,出題者の判断基準に留意して,答案を作成するようにしました。午前の部も午後の部も難しいと感じましたが,そこそこ正解できたはずだ,という感触を得ました。

 疲労については,午前の部を終わった時点で体と脳にかなりの疲労を感じましたが,昼食をしっかり摂って休んだところ,直前期をのんびりと過ごしたことが奏功してか,午後の部を開始する時にはかなり回復していました。

 集中力を切らす要因として,騒音はありませんでしたが,果たして右隣には午後の部の答案をまったく作成しないで,ぼーっと宙を眺めている人が座りました。やはり気を取られ,集中力が削がれました。無視しようとするのですが,視野に入っていなくても,無気力な雰囲気を感じてしまうのです。

 しかし,幸いにも,左隣の人に救われました。左隣に座ったのは,齢90歳にもなろうかという風貌の女性でした。床に新聞紙を敷いて靴を脱ぎ,タオルや座布団を用意して,戦闘態勢を調えていらっしゃいました。お昼休みにちょっとお話したのですが,その短い会話からエネルギーをいただきました。右隣の人の無気力を感じる度に,左隣の人のやる気を感じるようにしました。結果的に,午後の部は思ったほど得点が伸びませんでしたが,大崩れすることはありませんでした。

 試験後は1回だけ自己採点しましたが,その後は結果発表まで試験を振り返ることはしませんでした。自分にできることは精一杯やったのだから結果は知らない,という気持ちでした。

 さて,私の試験の合否を左右したものは何でしょうか。もちろん勉強が最も大事で,運に左右されない実力を備えることは肝要だと思います。しかし,私が経験したような出来事など,細かい部分に作用する運の波に上手に乗っかることも必要ではないかと思います。私は普通の人間ですので,たいしたことはお話できませんが,なにかしら参考になれば幸いです。

 最後になりましたが,皆様の合格を心よりお祈り申し上げます。