大学卒業が近づき就職をすべきかどうか迷っていたとき,夜間大学に通い,昼間働いていた経験から年功序列型のサラリーマン社会に疑問を持ち,資格を取って独立開業をしようと考えました。法学部出身ということもあり,司法試験を目指そうと考えましたが,数年はかかると思い司法書士なら半年もあれば受かるだろうという浅はかな考えで受験を始めました。司法書士は会社の同僚が受験していたので,資格自体は早くから知っていました。
夜中にファミレスでバイトをし,昼間は図書館で勉強するという生活で,最初は独学で合格を目指していました。大学で使った教科書で実体法を勉強し,手続法は東京法経学院の基本書を揃え,他に法学書院の過去問,書式要覧で勉強しました。これらをひと通り読み終えた頃に1回目の受験となりましたが,結果はボロボロに終わりました。
「独学では厳しい」と考えを改め,東京法経学院で開講中の基礎講座を途中から受講しました。講義を聴いて,大学での勉強と資格取得のためのそれは違うことを認識し,講義の内容をよく聴きしっかり復習するよう努めました。受験を開始した平成12年度は,大学で使った有斐閣双書民法を読み耽り,翌年を迎えました。
基礎講座に続いて答練も受講すると,勉強することばかりが多く辛くなりました。しかし同じクラスの,朝一番に学校に来て最後まで勉強している人の姿を見て,趣味程度の勉強では合格できないと感じ,私も学校の自習室でできる限り勉強した後にバイトに行くという生活を続けました。自習室では,基本書を読み,集中力が途切れると商法,民訴の条文や書式雛形の書き写しをしました。答練は復習するだけで手一杯だったため予習ができず,成績はボロボロでしたが,着実に実力はついているのを実感していました。そして,総合模試では6割程度の得点を取ることができました。本試験までには8割取れる実力をつけたいと思いましたが,上積みするどころかそれをキープするのも大変で,そのまま2回目の受験となり6割のできで終わりました。
夜中のバイトでは生活パターンもお金も大変なので,補助者をしてみようと求人をしている事務所に電話をしましたが,実務経験も資格も無いということであっさり断られました。心機一転,建築の肉体労働の仕事に変え勉強を再開しました。
まず基礎から徹底的にやり直そうと,東京法経学院の基礎講座の教材を丁寧に理解する学習スタイルにしました。
年明けの答練は他の指導校も合わせて受講しました。3回目の受験では一次を無事クリアし
たのですが,二次の民訴で失敗し,またも不合格に終わりました。年1回の勝負の恐ろしさを痛感しました。
3回目の本試験が終わり,仕事に精を出して勉強の再開をと思っていた頃,東京法経学院の学生が中心となって実施しているゼミの誘いを受けました。週1回,午前は書式,午後は科目を決めて過去問や答練を中心に各自の解らないところを質問し合う形で行うものでした。ゼミ長が進行役をしてくれ,基礎的なところで間違って理解していたところが発見することができたりと,大変勉強になりました。また,合格者の方もゼミに出席してくださり,解けない問題や理解できない先例,判例等も理解できるようになりました。その際,みんなが解らないものは出題されないと割り切ることができました。
ゼミでの勉強を通して,人に説明する難しさや,他の人がどんなところを理解してないのかを認識しました。また,ゼミの中に補助者の方が何人かいて,実務ではどうなるのか,気になる報酬等もわかり,将来のイメージが広がりました。
また,試験に合格している方の話を聞く機会がありました。仕事の合間に勉強し,もちろん朝や夜も勉強時間を作っていたことを聞き,刺激になりました。直前期以外はその準備をし,直前期は1日に15時間も勉強しており,過去問は受験生全員が全部できると思った方がいい,などの助言や体験談を教えていただきました。
年明けからは,時間がもったいないので家で勉強するようにし,これまで受講した答練の復習と過去問ももう一度丁寧に学習したかったので,全国模試だけを受けました。答練を受けない分,自分で週単位にメインで学習する科目を決め,なるべく多くの科目を少しずつでも学習するようにしました。模試でも安定した成績を維持することができ,本試験を迎えました。試験当日は落ちる事を考えず平常心を心掛けました(書式ではどんな問題が出題されるか心臓がドキドキでした)。
結果は午前30問,午後27問で,書式では,不登法の相続登記で持分を記載し忘れ,共有者全員持分全部移転で所有権移転とし,商登法で新株発行を1人多く記載してしまいました。配点や採点方法が不明なため,こんな基礎的なところを落としては受からないだろうと思っていましたが何とか合格していました。
受験経験からいいますと,私の学習法で失敗したなと思うのは,基本書重視の学習方法に重きを置き過去問を徹底征服していなかったことです。出題頻度等の分析は重要です。受かるためには答練で上位になるのではなく,バランスよく午前と午後での書式を各8割取ることを認識することが大切だと思いました。私は,答練の復習でも,正答率40%以下の問題は重要視しないようにしました。また,推論や学説問題は,最近は出題されても2問程度なので,深追いしない方がよいと思います。
色々書きましたが,勉強方法は無限にあると思います。これなら誰にも負けないという自分だけの方法を生み出してください。
受験中も資格を取ってからも司法書士は1人でやるものと思っていましたが,受験時代も沢山の人に助けられてきたとつくづく感じます。
最後になりましたが,自習室やゼミで教室を提供して東京法経学院のみなさんや,マニアックな質問にもきちんと答えてくださった講師に感謝をしたいと思います。ありがとうございました。
これから実務を覚え,一人前の司法書士になりたいです。