試験官は優しく助け船を出してくれた−口述体験記|司法書士試験|東京法経学院





司法書士 合格体験記

試験官は優しく助け船を出してくれた−口述体験記

体験記

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◆試験前の説明など

 東京都渋谷区にあるフォーラム8が口述試験の会場である。エレベーターで6階に上がると,係員が会議室のような会場に誘導してくれた。
会場は人でごった返している。部屋に入るとボードに数字が書いてあるので,受験番号かと見ていると,係員に「受付をすませていない方は,そちらに」と誘導され,くじを引き,受付をす
ませた。このくじで,口述試験の順番が決定する。
くじは「組」と「番」が書かれている。同じ「組」の人が十数人おり,1番から順番に試験を受ける。私は2番だったので,比較的初めの方に試験を受けることになる。やがて,職員による説明が始まった。壁に貼ってある注意書きが読まれ,試験が始まるまではトイレや自動販売機での買い物は自由にできると告げられる。
試験開始の13時30分以降は,自由にはできなくなり,係員の付き添いが必要になるとのこと。
試験会場に移動したら,この部屋には帰ってこないため,すべての荷物を持って移動するよう,何度も言われる。
やがて,13時30分になると,1番の人たちが呼ばれ,手続をして,部屋を出て行く。2番は13時45分からだ。口述試験はもうすぐ。

◆試験会場への誘導

 13時45分になり,2番の人たちが呼ばれた。
手続をし,忘れ物がないか,念を押されて,「これより後,私語は厳禁です。では行きまし
ょう」。係員にぞろぞろついて行く。エレベーターにみんなで乗って,12階で降りる。似たよ
うなドアがたくさんある。そのドアの入り口にそれぞれ椅子が置いてあり,係員に「ここに座
ってください」と指示される。「呼ばれたら,中に入ってください」とのこと。緊張してきた。
何が訊かれるのだろう? どんな試験官だろう? 勉強してきたことが訊かれればいいけど,
そうじゃなければ・・・,と考えていると,中にいた男性がドアを開けた。「次の方,お入りください」。いよいよだ。「失礼します」と言って,中に入った。部屋の中にはドアを開けた40代くらいの男性と,50代くらいの温和そうな試験官がほほえんで座っている。部屋の大きさは,大学時代にお邪魔した,教授の研究室より狭いくらい。2人が座っているところから,少し離れたところに椅子がぽつんとある。
ドアを開けた男性に,「荷物は壁際の机に置いて,そちらの椅子に座ってください。受験票は手に持っていてください」と言われた。荷物を置くと,「失礼します」と頭を下げて,座った。
椅子に座ると,右側に座っている50代くらいの試験官が,私の顔を,うんうん,と頷いて見ていらっしゃる。「これから口述試験を始めます。リラックスして,緊張しないで,答えてくださいね」と,優しく言ってくださった。「はい」と答えると,うんうん,という風に頷いてくださる。緊張はしているけれど,ちょっと,安心した。

◆口述試験の内容

1 試)それでは,始めますね。受験番号と名前と,それから,生年月日を言ってください。
私)受験番号,名前,生年月日をいう。(通常は生年月日ではなくて,住所を言うらしいのですが,私は筆記試験後に引っ越し,住所が変わっていたので,生年月日だったのかもしれません)

2 試)はい。それでは,これから質問していきますからね。落ち着いて,ゆっくり答えてくれて,良いですからね。慌てないでね。不動産のね? 不動産の,登記識別情報・・・ありますね?
私)はい。
試)これから何問かね,その登記識別情報のことを質問します。不動産の,登記識別情報,分かりますか?
私)はい。分かります。

3 試)登記識別情報とは,どういうものですか?
私)はい。登記名義人を証明する情報です。

4 試)(頷く)では,登記識別情報がなくても,登記できる場合が,ありますね?
私)はい,あります。
試)どんな場合に,登記識別情報がなくても,登記を申請できますか?
私)はい,登記識別情報を紛失した場合とか,失効の申出をした場合,それから,登記識別情報がないことで取引に支障が出る場合・・・などだと思います。

5 試)(頷く)では,その場合ね,どういう手続を登記官は取りますか? その,登記識別情報がない場合。
私)本人確認の手続をすると思います。
試)本人確認の?
私)はい。
試)登記官が行う手続ですよ。
私)登記官が・・・
試)うん,本人確認・・・,それをなんていうんだっけ?
私)え・・本人確認の手続・・・だと思います。
試)うん,なにか名前があったよね?
私)な,名前・・・

6 試)では,どういう手続をしますか?
私)はい,資格者代理人にどういう風にしてその申請人に会ったかを問い合わせたり,本人が本当にその不動産を所有しているかを確認するなどです。

7 試)うん,その手続が必要ない場合はありますか?
私)はい,あります。
試)どんな場合ですか?
私)資格者代理人が提出した資料で,本人がその不動産を所有していると認められるのが相当な場合や,あと,公証人の証明がある場合・・・。

8 試)うん,そうですね。では,登記官が,登記識別情報を添付しないで登記を申請した場合に,事前通知をする場合がありますね。
私)はい。
試)どんな場合ですか?
私)はい。所有権に関する登記を,申請する場合に,登記名義人が,登記名義人住所変更登記を申請している場合で,その登記の受付の日から,3か月が経っていない場合です。

9 試)(頷く)では,通知が必要ない場合もありますか?
私)はい。
試)どんな場合ですか?
私)はい。所有権に関する登記を,申請する場合に,登記名義人が,登記名義人住所変更登記を申請している場合で,その登記の受付の日から,3か月以上が経過している場合,それから,登記名義人が法人の場合です。

10 試)うん,そうだね。では,これで,不動産登記法は終わりにします。次に,会社法と,それから,商業登記法について,質問します。
私)はい。
試)会社の株式の募集手続について,質問しますね。・・・これから質問するのは,取締役会設置会社,監査役会設置会社,委員会設置会社以外の会社を指します。第三者割当てで株式を発行する場合に,募集事項を定める機関はどこですか?
私)株主総会で決めます。

11 試)では,そのあと,その,割当てを決める機関はどこですか?
私)取締役・・・取締役会・・・だと思います。
試)取締役会設置会社以外の場合ですよ?
取締役会設置会社以外だから・・・
私)あ,株主総会で決めます。すみません。
試)(頷く)そうですよね。取締役が決める場合もありますか?
私)・・・・・
試)もしね,もし,募集株式をして,登記を申請するとしたら,添付書類は・・・?
私)あ・・・はい。その場合は,株主総会の委任をすることを決定した,株主総会議事録と,取締役会議事録を・・・。
試)取締役会設置会社以外だから?
私)あ,取締役の決定書が,必要です。

12 試)(頷く)それでは,株主に何か通知はしますか?
私)株主に通知・・・,いえ,株主には通知しないと思い・・・ます。
試)・・・・株主に通知しない・・・?(明らかにまちがっている雰囲気)
私)・・・・・・・はい・・・株主には通知・・・・しないと・・・思います。
試)・・・・・・しませんか?
私)第三者割当てですよね・・。・・・(答えられない)

13 試)では,次に,司法書士法について,質問します。司法書士法の目的が,司法書士法の1条に書いてあります。どんなことが書かれてありますか?
私)はい。司法書士制度を定め,業務の適正を図ることにより,登記,供託,訴訟等に関する手続に関して,適正かつ円滑な実施に資し,もって,国民の権利保護に寄与することだと思います。

14 試)(頷く)では,司法書士として働く場合に,どんな手続が必要ですか?
私)はい。司法書士会を経由して,日本司法書士会連合会に登録し,名簿に登録しなくてはならないと思います。

15 試)(頷く)では,司法書士の,資格者として登録できない,欠格事由というのがありますね? 欠格事由を3つ,挙げてください。
私)はい。未成年者,成年被後見人,被保佐人,あと,公務員で懲戒処分を受けた者で,3年が経っていないものですとか・・・。
試)はい,そうですね。(左側の試験官が,質問をした試験官に「未成年者と成年被後見人は一緒だから,もう1つ」と言う)
試)うん? そうか。まだ,何かありますか? 欠格事由・・・。
私)はい,業務禁止を受けてから,3年経っていない場合ですとか・・・。
試)うん,そうですね。・・・(紙をめくる)(右側の試験官が質問した試験官に,「さっきの会社法のこの質問だけ・・・」と言う)

16 試)ん? あ,これ・・・(紙をめくる),では,もう一度,会社法の第三者割当てによる株式発行のことについて,質問します。株式発行による登記を申請する場合の,登記の日付はいつですか?
私)はい。株式の,払込みの日,払込期日だと思います。
試)・・・それだけですか? ・・・他には?・・・2種類あるでしょう?
私)・・・・・2種類・・・?
試)期日の場合と,期間の場合と・・・2種類・・・
私)あ,期間の場合は,払込期間の最終日,だと思います。払込期日の場合は,払込期日,だと思います。
試)(頷く)以上で,口述試験を終わりにします。お疲れ様でした。
私)・・・・はい。・・・・(起立して)ありがとうございました。

◆試験終了後

 荷物を持って,部屋を出ると,私が最初に終わったらしく,係員に「少しお待ちください」と言われた。待っていると,同じフロアの部屋から,試験が終わった受験生が次々に出てきて,係員と一緒にみんなでエレベーターに乗った。
12階から6階まで降りると,係員は,「では,このまま1階まで行かれまして,お帰りください。お疲れ様でした」と頭を下げて,降りた。
係員のいなくなったエレベーター内で,「お疲れ様でした」と声をかけると,エレベーター内の空気が弛んで,みんな,「お疲れ様でした」と声を掛け合った。ほっとしているのが分かる。
ともあれ,終わったんだ,という安堵感が表れている。

◆試験の印象

 試験官の方はこちらを緊張させまいとしてくださる雰囲気があった。穏やかで,優しく,しょっちゅう助け船を出してくださった。それにもかかわらず,私は答えられず,情けない限り。
ちゃんと答えると,うんうん,と頷いてくださって,その反応が頼もしかった。
口述試験の解散後,帰り道で話しかけた受験生は,試験官に首を傾げられたとのこと。試験官によって反応は異なるようだ。
なお,会社法の質問内容について,答えられなかったためか,記憶が薄いのです。きっと,焦りで頭がパニックだったのだろうと思うのですが。たぶん,こう質問されたような気がする・・・程度の記憶です。申し訳ありません。
(※本稿は受験生の記憶に基づく問答の再現です。したがって模範解答ではありません。)