初めに司法書士試験を受験するきっかけを書かせてもらいます。きっかけは,大学4年のときに何か資格を取得しようと思い,平成18年度の宅地建物取扱主任者試験を受験し合格したことでした。宅建を勉強していく中で,法律に興味が出てもっと難しい資格にチャレンジしたくなり,取り敢えず「難しい試験を受けるならこれくらい一発で受からなければ話にならない」という気持ちで平成19年度の行政書士試験を受験しました。行政書士の勉強中にいろいろと資料を取り寄せてみると,行政書士からのステップアップとして司法書士という資格があることを知り,司法書士という仕事に興味を持ったので次に受験することにしました。
そうして司法書士に興味を持って勉強を始めてみたものの,今まで受けてきた資格と違い範囲が広く,しかも記述が難しく,「えらいもんに手を出してしまった」と後悔しつつ,1年くらいかけて一通りの範囲を終えて東京法経学院の名古屋校の答練を通学で受けることにしましたが,答練の問題が全く理解できずに半分くらいしか正解できずボロボロでした。
最初,手ごろな値段だったので個人の経営する司法書士試験の予備校の通信を利用して勉強を進めていましたが,どうも自分に合わないのか,いままで勉強してきた民法等は別として,そのほかの初めて勉強する不動産登記法等は,その予備校のテキストに書いてある内容を理解できず知識を吸収しきれずに,点数が思うように取れませんでした。答練終了後に行われる簗瀬先生による解答の説明も理解できず,質問しようにも何を聞いていいのかわからないくらいの状況でした。
そこで,東京法経学院のテキストを揃えて勉強することにしました。最初の予備校のテキストは情報量が多いため要領を得ず理解できずにいたことも,東京法経学院のテキストでは簡潔にまとまっていたため,理解がしやすかったです。
東京法経学院のテキストを中心に勉強をするようになってからは,答練でなんとか基準点を取れるくらいまでになりました。
そうして臨んだ平成21年度の試験が,初めて受ける本試験でしたが,不十分な知識の上,緊張で基準点すら取れませんでした。
明らかに不合格であることが分かっていたため,気持ちはすぐに切り替わり,本試験終了1週間後から平成22年度の本試験に向けて勉強を開始しました。今度は,初めから東京法経学院のテキストを読み込んでいきました。テキストと過去問と条文の読込みをこなしていくことで,ある程度の実力がついていきました。
このころは,答練で基準点以上は取れるようになりました。そして,答練終了後には予め簗瀬先生に質問することを絶対1つは考えていきました。質問するためには,自分がどうして理解できないかを考えて,いろいろ調べたりするため勉強になり,簗瀬先生から教えてもらうことで,さらに勉強になり,すごくためになりました。
平成22年度の本試験直前期は,10時間勉強することをノルマにしていました。ですがこれは,今思うとあまり意味のないことだったと思います。10時間ずっと集中できれば話は別ですが,時間だけ決めても内容のないものになってしまうので,かえって勉強になりませんでした。
そうして受けた本試験は,昨年の本試験と違い午前の問題もそれなりに解け,午後の択一もそれなりに解け,不動産登記の記述もそれなりに解け,このまま順調にいくと思って商業登記の記述を読み始めると,予想しなかった問題だったので頭が真っ白になり,冷静に考えられず,なんとなく書いた解答になりました。
結果は,択一と記述の基準点は足りていたものの,総合点が4点足りませんでした。結果としては,あと少しでしたが,自分の手応えでは点数が足りていないと思っていたので,あまりショックではありませんでした。
平成22年度の本試験は総合点で4点足らずに不合格でしたが,手応えのわりには点数が取れたので,平成23年度の試験対策は確かな手応えを得るために基礎を重視して取り組むことにしました。
ですが,本試験終了後1ヶ月までは何もせず,本試験1ヶ月後から科目別答練が始まる前までも,やる気が出なかったので商業登記・不動産登記の記述を各一問と条文を読むくらいしかしていませんでした。ほとんどの人がそうだと思いますが,本試験後は張り詰めていた緊張の糸が切れており,「また1年」と思うとやる気はでないので,リハビリのつもりで取り敢えず取り組みました。
科目別答練が始まってからは,範囲までの条文,テキストの読込み,過去問,記述式にとりかかっていました。テキストの読込みは何回もしていましたが,基本が大事だと思っていたので,初心に戻り丁寧に読んでいました。
年内は全範囲の条文とテキストを読むことを重視していました。そうすることで,問題を解く際にはほとんどの肢を理解することができました。
実戦答練が始まってからも,記述式,過去問,条文の読込みを,ひたすら繰り返して行いました。
平成22年度の本試験では,問題を正確に読んでおらず語尾を読み飛ばして判断していたことが多くあったので,答練を受ける際には,そのことを意識しながら問題を解いていきました。
答練の見直しに余計な時間をかけるのが煩わしかったので,答練を受けるときに,余った時間で全部の肢をチェックして正誤は出ても根拠となる条文,判例等が少しでも思い浮かばないもの等不安のある肢に印をし,見直しをする時に間違った所と印をした所のみにして時間を省いていました。
なかでも民事訴訟系をチェックしていたことが多く,ほとんどの見直しは民事訴訟系でした。チェックしたところの見直しは,じっくり考えながら行いました。
答練をこなしていくと見えてくる自分の弱点をどうやって克服していくかが難しいところですが,僕の場合,先ほど書いたとおり民事訴訟系の点数が取れず苦手意識がありました。今まで取得した資格の科目中では勉強したことがなく,条文も多くなかなか理解することができなかったのですが,諦めず繰り返し条文を読み返していくうちに,条文を見慣れるようになったころから,理解しやすくなったと思います。取り敢えず苦手と感じる分野は繰り返し読み返すことで,自分がどこで理解できなくなるのかなど,理解につながる手がかりを見つけるようにしました。
登記六法は毎年改正され,1年で使いこまなければもったいないので頻繁に読み返し,マーカーでチェックし,気になることやリンクする条文を赤のボールペンで書き込みました。特に書き込みをしておくことで,次に条文を読むときに併せて確認することができるため,理解が早まったと思います。
毎日勉強していると,モチベーションはどうしても下がってくるので,気分転換にたまには,釣りなどをして遊ぶことでストレスを解消し,やる気を高めるようにしました。
また,環境が変わると知識の吸収率が上がるという情報を聞いたので,勉強がはかどらない時は,いつも勉強している場所と違う場所で勉強することにより,質の高い勉強となるように心がけました。
それでも長く勉強していると,成績が伸び悩むことがあり,自分のやっている勉強の仕方が正しいのかと焦ったり,行き詰り精神的に辛くなったりしました。そういうときは,「苦しいのは,自分だけじゃないんだ,合格していく人はみんな同じ苦しみを乗り越えていくんだ」と,自分に言い聞かせたり,「司法書士試験の合格率は,2%くらいだけど,あくまでも,受験する人数に対する割合でしかないんだ,勉強すればするほど自分の合格率は上がっているんだ」とポジティブに考えることで乗り切っていきました。
公開模試は10個程度を受けると場馴れすると聞いていたので,6月前半くらいまでにある模試を9個受けました。これくらいの回数を受けることで本試験の長時間に耐える体力を付けることができたと思います。6月後半くらいにも模試を開催しているところはありましたが,本試験直前に模試の見直しに追われたくなかったので受けませんでした。
今年の本試験直前期には,商業登記・不動産登記の記述を各1問,択一過去問1年分,条文の読込み,今まで間違った所を書き留めたノートの見直しを1日のノルマにしていました。
間違った所を書き留めたノートの見直しは,1日で全部するわけでなく,だいたい1週間くらいで全部に目を通すくらいのペースでした。
択一過去問1年分は,全部の過去問の問題集を一枚ずつに切り取り,年代別にまとめて1年分として使っていました。1日に1年分をすることで,効率よく全科目の範囲の確認となったと思います。
去年は1日10時間のノルマを決め,それだけで安心して勉強をしたつもりになっていましたが,今年は,時間を決めることなく自分が合格するためには何が必要かを考え,それをこなしていくことで充実した勉強をするようにしました。1日の勉強した時間を平均すると,だいたい8時間くらいだったと思います。
最後の1週間は,不動産登記・商業登記の記述各1問に加え,知識を確実とするために,何回も間違える過去問のチェックを重点的に行いました。
本試験1ヶ月前くらいからは生活習慣を規則正しくし本試験の時間帯に合わせることが必要だと思います。しかし,本試験前日になると緊張で眠れなくなることもあるかもしれないので,軽く2〜3キロのランニングやウォーキングをしてから入浴すると,早く寝付けるかもしれません。僕の場合,本試験の時間帯に合わせて,生活をしていましたが,本試験前日の布団の中で「もし今年も合格しなかったらどうしよう」と一瞬考えただけで,それから不安で一睡もできずに朝になり,緊張と絶望感で体が重く最悪のコンディションでした。取り敢えず試験時間までにコンディションを整えることだけを考え,吐きそうになりながらもいつも通りの朝食を流し込み,少しでも脳の疲れを取るためにチョコレートで糖分を補充したりして,なんとか本試験に臨みました。
本試験では,択一で少しでも詰まったら考えず,解けるところをすべて解いてから時間を使い,自分の知識の範囲になく考えようのない問題については,開き直って勘に頼りました。これは,いままで自分のしてきたことを信じて,自分に解けないものは合格できる順位にそれほど影響がないものと考えていたためです。また,去年の本試験では取れる問題であった個数問題で,読み間違えて取れなかったことがあったので,今年はすべての肢に判断をつけることができても,一度で出さず後からもう一度読み直して語尾などを確認し慎重にしました。
毎年記述対策について悩まされますが,「問題の形式が今まで受けてきた答練で見たことのないものであっても,問われる内容は変わらないはずだ,仮に書いたことのないものであっても,みんな書けないはずだから択一の知識で書けば基準点には届くはずだ」と腹をくくり問題にあたりました。
いままでに受けた本試験の記述式では,初見の問題に動揺し,「これじゃ合格できないかも」ということを考えてしまい,頭が真っ白になり大粒の汗が出て,その汗が眼鏡に溜まって問題が見えなくなったりと,我を忘れてしまい冷静に考えることができずにボロボロになりましたが,今年は,本試験を迎えるまでに記述式対策をたくさんこなし,見たことのない難しい問題を何回も受けておくことで本試験を受けるときには自信を持ってできるようになりました。おかげで,自分を追い込むようなことは一切考えることなく問題を解く手がかりを見つけることだけに集中でき,動揺することなく冷静に問題を解けました。
全体を通して,手応えはあったものの,一睡もしていないため,その影響でしているであろう判断ミスがどれだけあるか計り知れなかったので,答え合わせをする勇気がでず,口述試験の通知が届くまでは,自分が合格していたことを知りませんでした。
最後に,合格してみて実感することは,本試験を乗り切るには精神的なところが大きく,どんな問題が出ても動揺することなく,難しい問題は必ず数問はあることを想定しておき,たとえ解けない問題があっても,解けない問題に固執することなく解けるところを確実に,満点じゃなく合格点であればいいんだという気持ちでいればやりきれるということです。
本試験を受けるときに自分の中でそういったルールを作っておくことにより,本試験で精神的に落ち着くことができると思います。
また,自信も必要です。最初勉強を始めたころは,自分にこんなことが理解できるようになるのかと思いましたが,諦めずに毎日コツコツ継続して勉強することで自分の知識となり,そうやって積み重ねてきたことが自信となり本試験で力を発揮できるようになります。
そうして自分を信じて最後まで力を出し切る思いでやり抜けば,良い結果がでると思います。
つたない文章になりましたが,これを読んでいる方が一人でも多く合格しますことをお祈りしています。