私が司法書士を本格的に目指して勉強を始めたのは,平成13年4月のことです。平成12年の記念受験を除けば,合計6回受験して,ようやく平成18年の試験で合格することができました。5,6回程度の受験回数は,他の合格者と比較しても平均的な受験回数だと思っています。でも,合格でお世話になった講師の先生に報告したときに,「もう1年早く合格してもよかったはずだよ。」と言われたこと,また,常々「合格点に届かなかったのは,貴方の勉強方法にどこか欠陥があったのですよ。」と言われたことが,今なお印象に残っています。そこで,なぜ6年かかったのか,その問題点も検証し,それが受験生の参考になればと思い,この体験記を書くことにしました。
最初に受験した年は,東京法経学院の通学講座を受講しました。当時は,その前年に国家公務員U種の筆記試験と,行政書士試験に合格したこともあって,少々有頂天になり,「そう何年もかけなくても受かるだろう。」と楽観視していました。
週3回の講義のレジュメもテキストも,復習を十分にやらなかったので,講義が進んで商法や商業登記法に入ってくると,講義についていくことさえ,できなくなりました。
やみくもに過去問を解こうとしてもほとんど解くことができず,そのまま,自分の実情も省みずに答案練習(講座)を受けたら,理解していたはずの民法,不動産登記法でさえ,目を覆いたくなるような点数を取ってしまいました。「手続法は,法のみならず,規則や通達,他の法律との関係も把握できていないと理解できない科目」との認識が足りなかったことも,原因だったのではないかと,今では思います。
今後どうすべきか,自分には何が足りないかを知ることができたのは,大学OBの先生に相 談したことでした。
この時こそ,「全科目について基本書と過去問を備え,基本書は六法を引きながら読み,単 元ごとに過去問を解く。」という,インプットの最低限のことさえもできていない状態で答案練習に挑戦した,自分の愚かさを思い知らされた瞬間でした。
それまでは,自宅で土地家屋調査士事務所を営んでいて,登記事項証明書等に接することもあったので,商業登記法や民事訴訟法に比べれば,不動産登記法はスムーズに理解することができました。けれども,最初の1,2年間は,午前の部,午後の部の試験とも,半分くらいの得点しか取れませんでした。
先生の指摘を受けてインプット学習をこなしたところ,3年目あたりから,午前の部の試験科目については,勝負できる得点が取れるようになり,克服すべきは商業登記法の択一と書式問題,そして,午後の部の試験科目という状況に変化していきました。
先生からは,「商業登記法が理解できないのは,商法の理解が十分でないからだ。」とも言われ,なんとか商法を得意にしたいと思い,受験参考書や学者の本を読んだ時期もありました。
しかし,なかなか得意科目にすることはできませんでした。それは,ようやく一通り学習が済んだと思うと法改正があり,「マスターできた」という実感を持つことができず,常に不安な状態でいたからでした。
そんな状況だったとはいえ,一応,択一問題全科目と書式の勉強も一通りこなして臨んだ平成17年。結果は不合格でした。午前の部の試験
では,合格ラインに及ばず,涙をのみました。とはいえ,今から考えれば,敗因は明白でした。
それは,「試験前に,あと1回全科目を見直すことができなかったこと」,そして,当初は場慣れしておくために受験した模擬試験で,たまにAランクの評価を出したときに有頂天になってしまったことで,「模試のための勉強という状態になり,本番をベストな状態で迎えることができていなかったこと」です。
逆に,今年合格できた理由を考えてみると,「昨年の筆記試験合格発表前から再スタートを切ることができたこと」,「途中,入院などのハプニングはあったものの,勉強の中断時期がほとんどなかったこと」,そして,「答練をペースメーカーにして本番をベストな状態で迎えることができたこと」を挙げることができると思います。
「〜したつもり」と,有頂天になることは,大変危険なので,注意が必要です。
司法書士試験は,受験指導校を利用しない独学では,とても合格するのは難しい資格試験であることは事実です。
しかし,自分ではなんら努力せず,1から10まで受験指導校任せの人をたまに見かけます。ですが,授業に出ているだけで試験に合格する
ことは100%ありません。
例えて言うなら,行き先が分からないジャングルのような密林地帯で,合格という目的地に案内してくれるのが受験指導校であり,講師の先生はあくまでガイドだと思います。
合格のゴールへ着くには,自分自身の足で進んで行かなくてはならないことを,忘れてはならないと思います。
無駄な日々を過ごした時期もあり,もう少し早く合格しようと思えば,できていたのかもしれません。でも,人にはそれぞれの勉強方法があり,状況も異なれば,勉強をこなすスピードも異なります。そのため,必ずしも短期合格が良いことだとは,私は思っていません。
最後に,受験指導校,大学OBの講師の先生,家族,友人等多くの支えのおかげで,合格することができました。合格した今,ご恩に報いる
ためにも,早く一人前の司法書士になれるようにさらに精進していくつもりです。この場を借りてお礼を申し上げます。