◆合格発表日のこと
編集部(以下,編) 合格おめでとうございます。本日はお忙しい中,合格者座談会にご参加いただきましてありがとうございます。本日,当座談会に出席いただきましたのは,平成20年度司法書士試験に見事合格されました星野陽佑さん,榊原麻由さん,そしてお二人を指導されました名古屋校専任講師の簗瀬徳宏先生です。まずは星野さん,簡単に自己紹介をお願いいたします。
星野さん(以下,敬称略) 星野陽佑です。年は26歳です。この試験を勉強し始めたのは大学3年生くらいからです。もう5年,6年はやっているので,けっこうベテランの域になるのですかね,6年になると(笑)。
簗瀬先生(以下,敬称略) 中抜けがあるから(笑)。
星野 はい,中抜けがあります。
編 といいますと,途中受験を断念された時期があったのですか?
星野 断念というか,仕事のほうに精を出すというわけではないのですけれども,そちらのほうに重点を置いていたのです。今回,思い切って仕事をきっぱりと辞めて,簗瀬先生のところでお世話になろうと思いました。
編 それでは続きまして榊原さん,簡単に自己紹介をお願いいたします。
榊原さん(以下,敬称略) 榊原麻由です。年は25歳です。私も勉強し始めたのは大学2年生ぐらいからでしたが,なんとなくだらだらとやっている感じでした。仕事を始めてから,知識がないことがすごく不安だったので,やっぱり資格を取ろうと思って仕事を辞めました。それから簗瀬先生を紹介していただき,それで先生のことを知って,この学校に入りました。
編 ありがとうございます。ところで,合格発表は直接法務局へ見に行かれましたか?
榊原 行ってないです。
編 では,どのようなかたちで合格をお知りになりましたか?
星野 僕は,パソコンの前に座って。
編 ということは,法務省のホームページですね。
星野 はい,16時ちょうどにサイトへアクセスして,番号を確認しました。
編 ご自分の番号を確認したときの気持ちは?
星野 そうですね。最初,ずうっと縦に書かれていたんですけれど,最初は名古屋のほうから出たもので,榊原さんの番号を最初に見つけて,「あっ合格だ」と思ったあとに岐阜までいって。岐阜の上から2段目だったもので,「ないのかな」と思ってすごく緊張しましたが,見つけたときにはすごくうれしかったです。
編 合格をいちばん最初に報告したのは,どなたでした?
星野 確認したのは事務所のパソコンですから,ちょうどそこに父親と母親がいましたので,二人に。
編 そのときのお父様とお母様の反応はどんな感じでしたでしょうか?
星野 母親はさすがにちょっと泣いていましたけど,父親はあまり表情に出さないもので。喜んでいたとは言っていました。
編 榊原さんはどのようなかたちで合格をお知りになりましたか?
榊原 私は簗瀬先生の授業を受けていたので,発表を母親が見て,メールで教えてくれました。
編 では,お母様から合格のお知らせを聞いたときの感想などをお聞かせいただけますか。
榊原 ただただ,安心しました。今年落ちたらダメじゃないかなと思ったぐらいなので,本当に安心して。
編 ちなみに榊原さんが受験された回数は?
榊原 5回目です。
編 今年もしダメでしたら,もう受験は断念されてました?
榊原 いや。
編 では,またもう1年続けるというお気持ちでした?
榊原 はい,続けようと思っていたんですけれど。でも,今年ダメだったら,もう来年は無理じゃないかとずっと思っていました。
編 なるほど。では,簗瀬先生におうかがいします。お二人から合格の一報を受けたときはいかがでしたか。
簗瀬 榊原さんは先ほど言われたように夏から授業に復帰していたので,ちょうど授業中で,事務局のほうに,法務省の発表があったらすぐ持ってくるように言っていたものですから。それで持ってきてもらって,合格最低点などをみて,たぶん大丈夫だと思ったので,合否を確認しようと本人に聞いたんです。そしたら,本人が「実は・・・」って言ったものですから,「だったら早く言え」と(笑)。
編 榊原さん,簗瀬先生にすぐにご報告しなかった理由はあったのですか?
簗瀬 僕が(教壇で)試験結果についてしゃべっていたもんな。
榊原 そうですね,授業を中断するわけにはいかないので(笑)。
編 なるほど。では星野さんからの報告はいつでしたか?
榊原 星野さんは直接来ましたよね,学校に。
簗瀬 そう,来たときに。ただ,今年の合格の最低点を見ていましたから,まあ,たぶん受かっているだろうっていうことはわかっていましたので,安心はしてたんですけど。
【星野陽佑さん】
◆司法書士を目指そうと思ったきっかけ
編 ところで,そもそもお二人が司法書士を目指そうと思ったきっかけっていうのは何だったのでしょうか。
星野 やはり,いちばん身近な父親が司法書士の仕事をやっていたということでしょうか。うちは自宅が事務所も兼ねていたので,小さい頃から父親の仕事場を,現場を見ていたというのがあるのですが,そのときの父親は,普通に家族団らんしているときとは違う一面を見せていたので,憧れというものがいちばん強いですね。
編 ちなみに小学生のときの夢というのは何でしたか?ちなみに,私は小学校のときの卒業文集には,プロ野球選手って書いていました(一同笑)。
星野 小学生のときの卒業文集には,すでに司法書士と書いていました。
編 小学生の時から既に司法書士を目指されていたのですか!(驚)。
星野 そうですね(笑)。ほかの世界を知らないっていうのもありますけれど,やっぱりいちばん身近だったもので。
編 逆に司法書士を知っている小学生というのもなかなかいないですよね。
星野 たぶんいないですね。
編 榊原さんは司法書士を目指そうと思ったきっかけは何でしたか?
榊原 最初は法律を勉強するのが好きだったので,高校のときに法学部に入るっていうのは決めていたんです。そのあとに,本当は弁護士にも興味があったのですが,しゃべったりとか戦ったりするのはあまり向いていないかなと思っているときに,ちょうどテレビで観たのが,勘違いだったのですけど「カバチタレ」という,行政書士だったんですけどあれが司法書士だと思って,「あ,司法書士ってこんなことするんだ」と思って。それがきっかけでした。
編 なるほど。
榊原 なので,勘違いから始まったんですけど。
編 ちなみに榊原さんは小学生のときの夢は何でしたか?
榊原 体育の先生でした。
編 体育の先生になりたいというのはいつぐらいまででしたか?
榊原 中学に入ったら,教師にはなれないなって,なんとなく思ったので。そこからだんだん自分が資格を持っているほうがいいなって思うようになりました。
編 名古屋校の全日制の授業というのは,朝から夕方まで行われているのですが,ということはお二人は受験勉強に専念されていたということですよね。お二人とも以前はお勤めをされていたということですが,お勤めを辞めるにあたっては,何か不安とかはありましたでしょうか。
榊原 そうですね。でも,仕事をしていると「逃げ場」ができるのですよね。「仕事をしているから勉強ができない」とか。自分の収入がなくなるから,もうやるしかないじゃないですか。なので逆に,やる気にはなりました。
編 なるほど,自分を追い詰める形で気合いをいれたのですね。
榊原 もう逃げられないし,周りの人たちは働いているっていうのもあるので。それに途中で諦めてしまったら,自分の性格上,この先全てに自信がもてなくなってしまうと思ったし,中途半端になってしまうと思って…。なので,すごく気合いは入りました。
編 榊原さんは,お勤めを辞めてから一年で合格されたのでしたよね。
榊原 そうです。
編 ということは,お勤めを辞めて自分を追い詰めたということがプラスの方向に行ったということですよね。
榊原 そうですね。続けていたら,たぶんそのままずるずるいっていたと思うので,辞めたのはよかったかなと思っています。
編 星野さんは先ほどのお話ですと,途中中断した時期があったということですけれども,受験を一度中断しようと思った原因というのは何かありました?
星野 正直に言うと費用的な面もありました。次の年また授業を受けていくには費用的なハードルもあったし,本当は最初ふつうにバイトを探して,バイトをしてお金をためようと思っていました。ただ,ちょっと実際に司法書士の仕事をやってみたいなという気持ちもあったので,思い切って親に手伝うと言いました。逃げかも
しれないですけれど,ここらで一回,実務を経験してみようかなというつもりで。
編 中断の時期を経て,また受験に専念しようと思ったきっかけは何だったんでしょうか。
星野 試験自体は毎年受けてはいたのですが,まったく勉強していないのでまったくできないですし,実務をやっているからといって書式も書けるわけではないし。ただ受けているだけではまったく意味がないなと思って。やはり受けるからには合格したいので,そのためにも,一から学校に行って勉強しなおさなければ絶対受
からないなと思って,思い切って全日制に行ってみようかなと思いました。
◆受験に専念するということ
編 ところで,受験に専念されていると一日フルで勉強に時間が使えますよね。そうするとどうしても時間に余裕があって,ついだらだらとしてしまうことがあると聞いたことがありま
す。フルタイムで働いている方は勉強時間が少ないぶん,かえってメリハリをつけて勉強できるという意見もありますので。そのあたりについて注意されていたことはありますでしょうか。
榊原 私は時間に余裕ができたことはありませんでした(笑)。先生の授業についていくだけで精一杯で…。その日の授業にやったことを夜に復習して,というようにやっていると,一日はあっという間に終わってしまうし,土日も,できなかった部分をやっていくと,余裕があるなんて思うことはなかったですね。仕事をしていたときには,勉強だけに専念したらそうなるのかなと思ったり,そう聞いたこともあるんですけど。でも,実際勉強だけに専念してみても,余裕がなかったですね。
編 ということは,逆に榊原さんの場合は毎日の学習スケジュールというのをキッチリと立てられていたということですよね。
榊原 いえ,先生のおっしゃったことをとりあえずひたすらやることを心掛けていただけでした。計画を立て始めたのは授業が終わってからでした。それまでは授業の復習とかテストの復習とか,そういうことをやっていたら,もうそれだけしかできなかったので,あまり時間に余裕があることはなかったです。
編 ということは,簗瀬先生の授業が学習のいいペースメーカーになっていたということですね。
榊原 はい。
編 参考までに,一日の学習時間の配分などを聞かせていただけますか。
榊原 授業がある日は,家が遠かったので朝は勉強せずに学校に来て授業を受けて,お昼休みはゆっくりと休んで。授業が終わってから帰るまでに時間があるので,その間に電車の中で寝たりして,家に帰ってからはすぐに勉強を始めるか,ご飯を食べてからすぐ勉強を始めるか,とにかくひたすら机の前に座っていようと心掛けていました。家族といるとどうしても話をしてしまうし,テレビがあると観てしまうので,自分の部屋だと何もなく勉強だけという環境になるので,ひたすら自分の部屋にこもっていました。
編 授業のない日はいかがでしたか。
榊原 授業のない日も,授業のある日と同じぐらいの時間に起きていました。生活のリズムを崩してはいけないと思っていたので,朝ご飯を食べ終わったらすぐに勉強を始めて,お昼まではずっと勉強をして,お昼ご飯も1時間半ぐらいで区切りをつけて,また勉強を始めて,4時くらいに休憩をして,夕ご飯を食べるまでもう一回勉強をして…という感じで,もうひたすら。もっとも,ずっとは集中できませんでしたが。
編 授業のある日とない日とでペースを変えることなく,毎日同じペースで過ごされていたということですね。
榊原 そうですね。ただ,ずっと勉強ばかりしてるといやになってくるので,遊びに行くことはありました。1カ月に1回とかは,「この日は遊ぶ」と決めて,けっこう遊んでいました。
編 電車の中の細かい時間とか休み時間とかまで休むことなく参考書をペラペラめくったりとか,根詰めて勉強している受験生も多いかと思いますが,そのへんは榊原さんはオンとオフをしっかり分けて過ごされたということですね。「休むときはしっかり休む」というように。
榊原 私の場合,勉強するときに声に出して読んだりしてしまうので,電車の中ではできないんです(笑)。学校でもブツブツ言えないので,自然と家で1人でしゃべりながら勉強することになります。電車で読んでても上っ面だけみたいな感じになってしまって,それだったら寝ようと休みました。
編 星野さんは,一日の学習スケジュールというのはどんな感じだったんでしょうか。
星野 正直に言うとスケジュールはほとんど立てたことがありません。先生の前では言いにくいのですが(笑)。榊原さんのように長い時間集中力を保つことはもともと苦手なもので。初めの頃に先生が,「自分にあった一番いい勉強方法を見つけろ」と言われていました。僕の場合は,長い時間勉強しても集中力がもたないので頭には入らないんです。短期集中というわけではないですけれど,通学の行き帰りのときは,やる気があるときは参考書を読んだり,過去問をやったり。通学時間が長かったもので,参考書を読むにも問題集をやるにもいい時間だったと思います。
編 ということは,星野さんはどちらかというと細切れの時間を有効活用されていたということですね。
星野 いや,活用できていたかどうかは…(笑)。一応,家に帰ってから集中して勉強しない分,電車の中とかのほうがけっこう自分の世界に入ることができました。家だとどうしても誘惑が多いということがあるので,なかなか自分の世界に入るということができませんでした。周りに誰も知っている人がいない場所の方が自分の世界に没頭することができて,そういう時は集中することができたので,それなりにそのときやっていたことは結構ためになったと思います。
編 そうしますと,現在お勤めしながら受験勉強をされている方は,星野さんの勉強スタイルが参考になるかもしれないですね。ちなみに試験直前期,またそれ以外の時期の学習時間はどれくらいでしたでしょうか。
榊原 ふだん授業があるときは,授業以外で平均4時間,3時間以上は絶対やろうと思っていたので,終わらないときは5時間で,とか。
編 授業のない日はどれくらいでしたか。
榊原 10時間以上を目指してやっていました。
編 なるほど。それだけの集中力持続はなかなかできないことだと思いますね。星野さんはふだん授業のある日はどれくらいでしたか?
星野 ふだんすごく集中してできるときは3,4時間くらいのときもありましたが,基本的には2時間くらいでした。授業の予習・復習をやったりするくらいでしたので,あまり長い時間はやっていなかったです。
編 試験直前期の学習時間はどれくらいでしたでしょうか。
榊原 普段と同じくらいだったと思います。
星野 多いときは7,8時間くらいですけど,日によって浮き沈みが激しかったです(笑)。気持ちが乗るときと乗らないときがあったもので,乗らないときは5時間くらい。
簗瀬 そうだったのか(笑)。
編 衝撃の告白ですね(笑)。
星野 これは言ってはいけなかったのかな(一同笑)。
編 簗瀬先生,そのあたりはご存じでしたか(笑)。
簗瀬 いやあ,知らなかった(笑)。もっとまじめにやっていると思ったのに,違ったのか(笑)。
編 ところで,お二人は受験勉強を始めるにあたり,それまで法律の学習経験はありましたでしょうか。
榊原 大学入試の時にはもう司法書士になろうと思っていたので,法学部に入りました。
編 そうしますと,受験予備校に通われる以前に,大学でひととおり法律の勉強をされていたということですよね。
榊原 そうですね。はい(笑)。大学の法律の勉強は好きなところはやるんですけれど,全体的にはやっていなかったですね。
編 星野さんはいかがでしたか。
星野 僕も大学は法学部でした。本当は最初から専門学校へ行こうかとも思っていたんですけれど,親から大学くらいは出ておけといわれたので一応進みました。実際に自分で参考書を買って司法書士の受験勉強をしてみると,大学でやる勉強とはちょっと違っていたので,大学で勉強をやっていたとはいっても試験勉強に実際に役に立っていたかどうかわかりません。
◆簗瀬クラスについて
編 では,名古屋校全日制の簗瀬先生のクラスを選ばれたきっかけや動機をお聞かせいただけますでしょうか。榊原さんは数ある受験予備校の中から,なぜ東京法経学院名古屋校全日制の簗瀬先生のクラスを選ばれたのでしょうか。
榊原 もともと探していた授業の形態というのが,朝から夕方まで本当の学校のように授業がある学校で,生講義が受けられるところがいいと思っていました。でも,自分で調べてもよくわからなくて,前の事務所の方にうかがったらこの東京法経学院の全日制がいいよという話を聞いたので,それで一度学校を見学して,というのがきっかけです。
編 星野さんはどんなきっかけで簗瀬先生の全日制を選ばれたんでしょうか。
星野 父親が東京法経学院のOBですので,うちの事務所に紹介状が来ていて,それをきっかけにここを選びました。最初はもともと夜間クラスの方で,そのときは簗瀬先生ではありませんでした。そのときは,簗瀬先生の授業は数回しか受ける機会はありませんでした。
簗瀬 少しだけ私が担当して,主としてほかの先生に依頼していた講座だったね。
星野 その先生も簗瀬先生の教え子の先生だったのですが,簗瀬先生のお話を聞いたりしていましたので,夜間クラスで受からなかったら簗瀬先生のクラスに行きたいなと思っていました。
編 そのようなきっかけで簗瀬先生の全日制クラスを選ばれたお二人ですが,簗瀬先生の講義を受講しての印象をお聞かせいただけますでしょうか。
星野 ひと言で言ってパワフルですね。先生とうちの父親が同い年なもので,うちの父親と先生を比べるっていうわけではないですけれども,やはり若さというかパワーが全然違いますね
(笑)。
編 榊原さんはいかがですか。
榊原 そうですね。授業の進度が早かったです。授業についていくのに必死で,話の内容を聞いてメモを取っていると,もう違うところに行っていたりするので。とにかく必死についていくという感じの授業でした。すごかったです。それまであんなに六法を使ったことがなかったので,「勉強ってこうやってやるんだ」っていうのを体感しました。
編 やはり,そういったかたちで簗瀬先生のパワフルかつスピーディな授業に食らいついていったのが合格力になったということですかね。
榊原 そうですね。授業では,その場で吸収できることはできるだけ吸収したかったので,よかったなと。授業の進度が早い分,集中していましたね(笑)。
【榊原麻由さん】
編 簗瀬先生の講義の中で,特に印象に残っている名講義は何でしたか。
榊原 私は会社法ですね。もともと仕事でやっていたのが商業登記の担当だったので,その頃にわからないこともいっぱいあったし改正前も改正後も,どれが改正したところなのか全然わからなかったので,授業を受けることで少しずつ自分が仕事でやっていたことに理由がついてくるのがすごく楽しかったです。それまで会社法の勉強は嫌いだったのですが,おかげで会社法が好きになりました。
編 星野さんは,パワフルな簗瀬先生の講義の中で特に印象に残ったというのは何でしたか。
星野 僕の場合には不動産登記ですね。仕事で不動産登記ばかりやっていたもので。それでけっこう自分では相続関係とか慣れてるつもりでいたんですけど,想像以上に知識的に深いことがいろいろあったもので。そこでの驚きというか,「まだこんなに知らないことがあるんだ」っていうことがいっぱいありました。あとは会社法,商業登記ですね。以前,旧商法のときに勉強をやるにはやったんですけれど,ほとんど忘れていたので,また新たに一からやり直すみたいな感じでした。新しいことだらけで,毎日驚きの連続という感じの授業でしたね。
編 では,逆に簗瀬先生にお伺いしますが,お二人が今年合格しそうだなと思われたことはありましたか。
簗瀬 ありましたよ。星野くんの場合は,夜間クラスで一回勉強して,そのときにも受かる力,センスがあるなと,だから勉強を続けるといいなと思っていました。同期の子は勉強を続けて,その後全日制クラスに入ってすぐに受かったんですけど,星野くんも同じくらいの力を持っていましたし。まあ,これは各自の人生設計の問題なので強制できないんですが。なので,受験を中断したときはもったいないなと思っていました。でも,先ほどの話にありましたが,何年か経って,星野くんが「本当に(司法書士資格を)取りたいんだ,だから全日制に通うんだ」と言って私の所に来たときは,それなら1年で受からせてやらないといけないなという思いがありましたね。榊原さんの場合は,9月ぐらいには「この子はもういける子だな」と思っていました。僕の場合,生徒が合格する実力があるか否かを判断する材料はほとんど書式問題で,その解答を見るのがいちばんいいんです。解答が間違っていないということもあるんですが,それよりも彼女の場合,私が受験生の解答としては受験技術上「こういうふうにやってほしい」というのを,ほとんど解答例を見たんじゃないかと思うくらいピシっと書いてきていました。それをやってくる子はたいてい受かります。ただし,その頃はまだクラスの中でも3番目くらいかな,必ずしもトップというわけではなかったですけれども,でもまあいけるだろうと。これが1年でいけるか2年目でいけるかはともかく,合格することは間違いないと。
編 このまま続けていれば,いずれ合格するのではないかという感じですか。
簗瀬 ただ年が明けてから,ググッと伸びたので,もうこれは確実に1年でいくなと思いました。本当,見る見る伸びた。で,星野くんはぐっと離された(笑)。
星野 一瞬で,(榊原さんに)追いつかれたと思ったら,すでに抜かれていました(笑)。
簗瀬 そこからが早かったですね,伸び具合が。グーッと年が明けてから伸びたその分の勢いがあって,これはいけるだろうと思っていたのです。でも,本試験では一番確実と思っていた榊原さんのほうが,1つ爆弾を抱えていたので。だから,さっき「教室で」って言われたときに「だったら早く言え」って言ったのはそういう意味です。ある意味で星野君はたぶん合格するだろう,たぶん午後の択一だけ(が課題)だったので,それはボーダーが読みどおりだったら受かると思っていたので。実は書式のほうで榊原さんのほうが大丈夫かというのがあったので,先ほど本人からもう1年やったらというのがあったんですけど,正直,僕ももう1年榊原さんがやらなければならないということになったらどうしようかと思ったんです。講師としては,あるレベルまでいった子をどうやって飽きさせずにもう1年気持ちを維持させて受からせるか,こっちのほうが難しいんですよ。だから,本当に本人もうれしかったと思うんですけど,僕もほっとしたという気持ちがすごく強かったです。
◆条文の重要性
編 それでは,簗瀬先生の先ほどの講義の話に戻りますが,お二人は授業に臨むにあたって何か心がけていたことはありますでしょうか。
榊原 そうですね。先生の授業で条文をいっぱい拾っていたので,その条文を順番どおりにメモをして,家でもう一回その順番どおりに読んでいくっていうのはできる限り毎回やっていました。いろんな条文に飛んだりするので,自分ではその条文とどこが関係しているかっていうのがわからないので,そこをちゃんと聞くようにしていたのがいちばん注意していたところですね。
編 先ほど榊原さんのお話で出ましたけど,榊原さんは条文の学習を重視されたのかなという印象を受けましたが,簗瀬先生もふだんの授業
ではそのように指導されていたのですか。
簗瀬 はい。最近では条文を使わない受験指導もあるんですけれども,最終的に司法書士を生業にするのであれば業務の根拠となるのは条文ですから。条文を読まないでいて何を基準にして今後商売をしていくんだろうと。受験生はいいですけれども,受かったあとは法律を仕事にしていくわけですから。法律の改正だってあるわけですし。やはり条文を読めてこそプロだと思うし。法律の学習だって,その条文の行間が読めるようになって初めて楽しくなってくると思うんですよね。だから,幸いにも全日制クラスは時間があるので,その意味でも条文をなるべく読んでもらうし,自分で読み込めるようになってもらいたいというのもあって。条文を読まない学習方法もあるのでしょうけれど,なるべく読んでもらうようにしています。
編 星野さんも条文は大切にされていましたか。
星野 そうですね。登記六法に参照条文がつくようになったので,そこを特に重要視して,重要な関連条文にすぐ飛べるように,特別に色を変えてチェックしたりとか,参照条文のほうを重要視して条文を読んでいました。
編 司法書士試験では,六法の持ち込みまた備え付けというのはないですが,ふだんから条文を大切にされていて,本試験で役に立ったということはありましたか。
星野 そうですね,やはり授業から条文を読んでいたので,問題を解きながら六法が頭に出てきましたね。こことここに書いてあるというところまで,すべてというわけではないですが,何度も読み込んだところなどは,だいたい右か左のどちらのページの上か下か真ん中かという場所まで覚えるくらいになっていました。
編 六法以外に,例えばこれは役に立ったというような参考書や教材,または簗瀬先生が授業でお配りになったレジュメ等で,これは役に立ったというのはありましたでしょうか。
榊原 ほとんど六法だったので,参考書は授業で使うもの以外は民法・会社法の基本書は一応持ってはいましたけれどもほとんど使うこともなく,授業で使うもの以外には手を出さないようにしていました。先生のプリントは何回も読むようにしていました。
編 星野さんはそのあたりいかがでしたか。
星野 問題プリントですね。時間短縮というわけではありませんが,僕はすぐに結果を求める傾向があったので。問題を解いて,解ける・解けないという結果が出ることもありますし,解説もいっしょについていたので。それから六法,条文と判例ですかね。登記六法にない判例は,模範六法などからコピーしたりして,自分が使っている六法に貼り付けたりしていました。
◆穴をつくらない
編 では,話は少し変わりますが,お二人は不得意科目とかありましたでしょうか。
榊原 何が不得意科目か,正直わからなかったんですよね。あえて不得意な科目っていうと…司法書士法はすごくだめでした。
簗瀬 午前の択一(の正答数)は34問だったっけ?午後は?
榊原 30問か31問のどっちかだったような。
簗瀬 だから択一はだいたい全部取れているっていう感じだよね。
編 そうすると,ほぼ穴がない感じですね。
榊原 穴を作らないようにしていたというか,どっかの科目に集中しちゃうと忘れるのも早かったので,ひたすらいろんなところを勉強するようにしていたので,苦手科目っていうのはあまり考えたことがないですね。最初は刑法が嫌いでした。嫌いというか…
簗瀬 というか,榊原さんは少し遅れて全日制に参加したんですよ。そのとき刑法をある程度やっていたので,それで刑法の学習が中途半端なまま次に行っちゃったというのが原因でした。
編 刑法は,ただ勉強不足だったという感じでしたか。
簗瀬 まあでも,年明けにもう一度刑法の講義をしたときには,すぐに間に合っちゃったね。
編 そうしますと榊原さんは,ほぼどの科目も偏りなくウェイトを置いて,しっかりまんべんなく学習されたということですかね。
榊原 そうですね。もっとも,いちばん気をつけていたのは民法だったので,民法はつねに勉強するっていうのを試験前には心がけていました。午後の科目は,実務をやっていたことがよかったと思うんですけど,午後のほうはあまり忘れにくくて,それなので午前のほうはひたすら続けてやろうと思っていました。成績が悪いときは午前が悪かったので。
編 星野さんは何か不得意科目というのはありましたか。
星野 僕の場合は,授業を受ける前は食わず嫌いというか,会社法が自分の中では苦手意識があったんですけど,授業を受けていくうちに,まあそれなりに点数を取れるようにはなってはいました。
簗瀬 会社法はけっこう取っていたよな。
榊原 でも嫌いだったみたいですよ。
簗瀬 そうなのか。
星野 そうです。やる前は,本当に会社法だけはやりたくないと思って(笑)。
簗瀬 でも,会社法で(点数は)取っていたよな,最後は。
星野 何か,まったく知識がなかった分,逆に,素直にできるようになりました。
編 星野さんは,会社法は苦手で嫌いだったけれども,とくに克服のために何か努力されたというよりも,簗瀬先生の授業を受けていたら自然と克服されていたという感じですか。
星野 そうですね。先生の授業と,あとはその授業を理解しているか理解していないかは,自分で問題を解いてみてそのときに初めて授業で言っていた意味がわかるということが多かったんです。授業のときは,けっこう首をかしげることが多かったですが,その問題で,点と点が一本の線につながるというような感じになっていきました。でも,最後まで苦手だったのは,刑法と民訴の2科目でした。
編 その2つはとくに克服せずに終わってしまったのでしょうか。それとも試験までには何か克服されたのでしょうか。
星野 両方とも年明けにまた新たに授業をやり直してもらったんですけど,民訴のほうは条文プリントを新たにもらって,そっちで授業をし始めてからけっこう頭に入ってくるようになりました。たぶん,それがなかったらまったくわからなかったんじゃないかというほどのレベルでした。
編 やはり,民訴も先ほどのお話しではないですけれども,条文プリントで条文を中心に勉強をされたっていうことですよね。
星野 そうですね。条文と,付いていた解説を重要視して,けっこう読むようにしていました。それと,補充でもらったプリントも何度も読みかえしていました。
編 ということは,やはり受験生の中には民訴法関係を不得意にされている方が多いのではないかと思いますが,簗瀬先生,そのあたりはまず条文をしっかり学習したほうがよいのでしょうか。
簗瀬 民訴の場合は両輪だと思います。条文に基本原理もつなげないと面白くないし,だからといって弁論主義とか基本原理の学習だけでいけるかというと,司法書士試験では条文知識が出る場合もありますから。両方そろわないとやはり無理なんです。手続規定なので条文の嫌いな受験生が多いと思いますが,そこを少し強制的にでもやるということが必要だと思います。
編 そうすると,民訴が不得意な受験生は,まず基本原理を押さえつつ条文もしっかり確認することが得意科目にするために必要ということなのですね。
簗瀬 まあ,得意になる必要はないですけれども。不得意科目というか嫌いになってしまって穴ができてしまうとこの試験は絶対に受からないので。そこそこうまく付き合ってやるということかなと思います(笑)。
【簗瀬徳宏先生】
◆挫折しそうになったことは?
編 いま簗瀬先生がおっしゃったように,不得意科目を克服しないまでも,最低点が取れないくらいまでには嫌いになるなよということでしょうか。では,暗い話が続きますが…受験生活で挫折しそうになったことはありますか。受験やめてしまおうかなとか。
星野 やめたいなと思ったことはないですけれども,勉強したくないなということは何回かありました(笑)。でも,やらなければやらないで当然成績も下がってくるので,その成績を見て「ヤバイ」と思って,また勉強に戻ったりっていうふうにしていましたね。
編 なるほど。いま星野さんがやめようと思ったことはないと言われましたが,逆に言うと司法書士を何が何でも取ってやるぞっていう動機付けをしたり,その動機付けを維持したりできた理由ということについては,小学校の頃からお父様の仕事にあこがれていたということは大きかったんでしょうか。
星野 そうですね。それもありますが,全日制クラスに入る時点では,親ともめたんです。親は全日制クラスに行くことに猛反対で,仕事を続けろというのが親の意見でした。それを押し切っての受験だったので。冗談だと思いますけど,「落ちたら勘当」なんて言われていました。まあ,そこまで言うなら親を見返してやりたいという気持ちもありましたし,それが気持ちを維持することにつながったのかなと思います。
編 榊原さんは先ほど,今年落ちたらどうしようというお話をされましたが,挫折しそうになったことっていうのはありましたか。
榊原 そうですね。大学2年から始めていたのですが,そこからどうにもやる気が起きず,だらだらとやっているだけで成績も上がらないし,まったく受かる気がしなかったですね。やる気を上げるために,ほかの授業に出たりしたこともあったんですけど,それでもなかなかやる気になれず,就職をしてしまったら仕事の方でいっぱいになってしまうし。そのあたりで「私にはこの試験は無理だ」って一回思ったことがありました。仕事を辞めようと決意したのは,諦めてほかの道に進もうとしたのもあるんです。
そのときに,周りの人に「続けたほうがいい」よ
と言ってもらえたのですが,それでも私には無理だ,本当にやめようと思っていました。
編 あえてもう一度がんばってみようと思ったきっかけみたいなものは何かあったんですか。
榊原 もともと負けず嫌いなので,途中で挫折することが悔しくて。合格してからその仕事を続けるかどうかはまた別にして,とりあえず合格することで区切りをつけたいと思うようになったので,ひとまず何も考えずに勉強をしようと。
編 先ほど,簗瀬先生の授業にとにかくついていくのに必死で,挫折している暇はなかったということもあるんですかね。
榊原 そうですね。ここで諦めたら次の目標も探せないなと思ったんです。自信をなくしたくなかったのがいちばん大きいです。
◆20年度試験を振り返って
編 では,ここで簡単に今年の本試験を振り返ってみたいと思います。まず午前の部の試験ですが,お二人の受験された印象はどんな感じでしたか。
星野 僕は正直に言って,まったくできなかったと思いましたね。会社法を最初に解きはじめたときは3問目くらいまでは「よしっ」て思っていたんですけど,そこから後半は「あれっ」て思って,それから憲法にいっても微妙な感じで,民法も微妙な感じで。刑法はけっこう簡単な感じだったので,そこはできたかなとは思っていましたけれど。でも全体的には微妙だなって思っていました。
編 星野さんは,実際に本番で解かれた順番というのは,必ずしも1ページ目からではないっていうことですか。
星野 はい。もう最初にやるときから,最初に解くのは会社法に決めていたので。
編 それは答練などふだんの練習のときでも同じだったということですか。
星野 はい。
編 榊原さんはいかがでしたか。
榊原 今年の試験を受けたときは,民法が簡単だなというか,一つ一つの肢を見たわけではないんですけど,答えはすんなり出てきたので。民法はすごく簡単に答えが出ちゃったので,逆に不安になりました。あと,刑法も。午前中は,そうですね,終わったあとはあまり不安はなかったですね。
編 解くのに手間取った問題というのはとくになかったですか。
榊原 そうですね。いちばん最初に憲法を解いたんですけど,そのときはすごく不安になって。そのあと刑法を解いたら,憲法よりも楽に答えが出たので,そこで落ち着いて,民法,会社法という順番でやりました。
編 そうしますと,憲法で難しいと思ったときに,そこにずっとこだわらずに次に進んだということですかね。
榊原 はい。それは模試でやっていたときに,先生も授業で言っていたんですけど,迷ったらとりあえず飛ばしてそこにこだわらずに,という話だったので,とりあえず飛ばしました。憲法のわからない問題を飛ばして進めていって,最後にゆっくり解きました。
編 そうしますと,時間配分ということでは時間が足りなくなったということはまったくなかったということですね。
榊原 はい,なかったです。
編 ちなみに榊原さんはどの順番で解かれましたか。
榊原 解いた順番は,憲法,刑法,民法,会社法です。
編 それは実際の答練や模試でも同じようなかたちでしたか。
榊原 はい。でも最初のうちは1ページ目から順番に解いていたんですが,答練の真ん中ぐらいから変えましたね。
編 1ページ目から解いていく方がけっこう多いのでは,と思うのですが,簗瀬先生はそのあたりはふだんどのように指導されていますか。
簗瀬 僕は,なにも1ページからやる必要はない,馬鹿正直に前からやる必要はないと言っています。だからふだんから答練も順番を考えて,そのときに難しかったらやさしいほうからやればいいわけなので。ただどれが難しいかは自分で考えろって言っています。なにも最初からやるばっかりが能ではないので。最初のすべり出しが落ち着かないとあとに影響してしまうので,その意味では2人とも答練で練習して,いい結果になったと思いますよ。
編 そうすると,正直に1問目から解いていって時間が足りなくなる方は,そのあたりを工夫してみるのもいいかもしれないですね。それでは,午後の部の試験についてはいかがでしたでしょうか。
星野 午後のほうは,とりあえず時間配分を決めて答練のときからやっていたとおりに解きました。最初にいきなり商業登記で予定時間より10分くらいオーバーしたので,ちょっとあせって時間内に収めようと思ったものですから,ふだんの答練のときとかより1問にかける時間が少なかったですね。あとで見直しをしようというつもりでいましたが,その後の書式でだいぶ時間をとられてまったく見直しができない状態だったので,正直ダメだと思いましたね。見直しができなかったのがいちばん痛いなと思いました。
編 そうすると,午後の部の試験は全体に時間が足りなかったという印象ですか。
星野 そうですね。択一のほうは,最終的には時間内に収めることができました。書式は絶対に商業登記から解くことにしていたのですが,商業を解いた時点では「いける」と思ったんですけど,不動産登記法で完全にやられて(笑)。ちょっとこだわりすぎて見直しがおろそかになってしまいました。それが終わった後でいちばん悔やんでいたことですね。
編 商業登記から解くことを決めていたということですけれども,それは何か理由があったのでしょうか。
星野 最初,不動産登記のほうはもともと実務でやっていたこともあったので,自分では得意意識があったんです。でも,どんどん解いていくうちに商業登記の方が自分に合っているというか,解きやすかったので,そこまで時間をかけずにできるということもあったので。そこで,パパッと早く,できるだけミスなく早く終わらせて,時間を残して,じっくり不登法を考えて解きたいと思っていたので。それを心がけて,答練のときからそうしていました。
編 榊原さんは,午後の部の試験はいかがでしたでしょうか。
榊原 午後は,択一を解いたときには全体的に取れている自信はあまりなかったです。でも,とりあえず止まらずに解こうと思っていたので,ひととおり択一を解いて確認をしてから書式に入りました。でも,書式の別紙の多さに驚きました。最初のお昼の休憩が終わって試験の説明を受けた時点で別紙が16まであることを知り,その時点でびっくりして焦りましたね(笑)。不登法は,見ても書類の間違いに引っかかったりして,へんなところで悩んだりしていました。もう,2件目のっていうんですか,右のページのほうの答えは出なかったので,それはもういいやと思って。それで商業登記のほうにいって,時間はあったはずなんですけれど,ものすごいパニックになっていましたね。商業のほうも2件に分かれていたんですけれど,1件に分かれているのと書く量の多さっていうのでいっぱいいっぱいで,時間もぎりぎりで見直しもできるかできないかという感じで,いつもやっていたとおりにはいかなかったですね。ふだんやっていることも忘れてしまうぐらいパニックでした。
編 今年は,やはり不動産登記法の別紙の多さというのがかなり多くの受験生を悩ませたのではないかと思います。星野さんはお仕事で不動産登記の実務をされていたということですが,ふだんそういった書類に親しむ機会はあったと思うんですけれど,その辺りが何か有利に働いたというのはありましたか。
星野 最初パラパラと見たときに別紙と書いてありまして,何があるのかなと思ったらそういう実務的な様式だったもので,最初は「よしっ」て思ったんです。「これは実務をやっているほうが強いぞ」って思ったんですけれども,まったく役に立たず。読み取ることができなかったです。なんとかして読み取りたいという気持ちがあったので,その分余計にあせりました。正直,有利に働いたことはそれほどなかったですね(笑)。
編 そうしますと,簗瀬先生,補助者経験があるから別紙形式の問題で有利だというわけではないんですね。
簗瀬 そういうわけではないですね。
編 受験生の間では,あの問題は補助者をやっているほうが絶対に有利だというまことしやかな噂も流れているようですが。
簗瀬 べつに,読み取りが必要だったのは商業登記の登記記録だけですから。商業登記の登記記録はふだん商業登記の問題では見ているはずなので。だから,ほかの別紙が影響したわけで
はないので,それほど関係しないと思いますよ。ただし,ここ2,3年はほとんどああいうのがなかったですから,ほんとうにああいうのを不動産登記の問題で見たことが初めてっていう受験生は,もっとパニクったとは思いますけれど。
編 すると次年度以降の対策としては,何をするのが良いでしょうか。
簗瀬 毎年,違う手できますから,去年きたら同じ手ではこないですよ。
編 なるほど。20年度試験で別紙が出たからといってあまり過剰に反応しないほうがいいということですね。
簗瀬 はい,する必要はないです。同じ手を二度,三度はしません。毎年サプライズはありますから。
編 なるほど。次年度以降を考え,別紙にかなり敏感になっている受験生は多いかと思いますけれど,そのあたりはあまり過剰反応しないほうがいいということですね。
簗瀬 もちろん,別紙が読めなければ仕事はできませんから,それは大事なことだと思いますが。
編 ところで,試験終了後の手ごたえなど,お二人は率直な感じとしていかがでしたでしょうか。
星野 僕は,終わってすぐ親に電話をして「もう1年お願いします」と言いました(笑)。
編 榊原さんはいかがでしたか?
榊原 私は,書式がまったく自信がなかったので,ダメじゃないかなというのは親に電話をしましたね。「まだわからないけどダメな気がする」と言っていました。
編 試験終了後から合格発表まで,お二人はどのように過ごされていましたか。
星野 終わってから2ヵ月後でしたっけ,答練が始まったのは。
簗瀬 そうだな。9月の頭ぐらい。
星野 僕は,ほんとうにそれまで勉強関係のことにはまったく何にも触れませんでしたね。まったく(笑)。
編 榊原さんはそのあたりいかがでしたか?
榊原 私はせっかく覚えたことをもう一回,一からやるっていうのはどうしてもいやだったので,先生の授業に参加して,その前の年と同じようなかたちで必死にやっていたわけではないですけれども,忘れないように六法を読んだりはしていました。でも,手につかなかったですね,何をやっていても,あんまり。ダラーっとやっている感じでしたから(笑)。
◆口述試験について
編 お二人とも筆記試験の合格発表までは不安な気持ちで過ごされていたわけですが,いざふたを開けてみれば筆記試験合格していたということで,次の口述試験までに焦りとかはありましたか。
星野 そうですね。僕の場合,逆に,先走って筆記試験を受ける前から口述の心配をしていたもので(一同笑)。「受かってから心配しろ」って言われたこともあるんです。でも,択一なら紙の上に答えが書いてあるわけなので,それを見つけ出すだけなんですけれど,口述は聞かれたことを自分で説明しなければいけないので,それがほんとうに不安でしたね。
編 そうしますと,口述試験の準備はしっかりされていたということですか。
星野 東京法経学院から発行されている口述試験の過去問の資料とか予想問題などは何回も読んだりしていました。
編 榊原さんは,筆記試験の発表後,口述試験まではいかがでしたか。
榊原 準備は星野さんと同じで,口述対策などの冊子をひととおり読んで覚えて,あとは司法書士法についてだけは条文を読んでいました。
編 口述対策としても,司法書士法に関して条文を大切にされていたということですね。
榊原 司法書士法は全然やっていなかったので(一同笑),覚えるのに必死で。あと,自分で問題を作って,自分で答えてみたりもしていました。
編 口述試験の感じとか雰囲気とかいかがでしたか。やはり,緊張されましたか。
星野 緊張しましたね。
編 準備していたとおりには答えられないものですか。
榊原 準備していたものは聞いてくれませんでした(一同笑)。最初の不登法で,全然思ってもみないようなところから出題されたので・・・。でも,試験官の人が優しかったので,助け船を出してくれました。
編 星野さんはいかがでしたか。
星野 終始パニック状態でした(笑)。まったく予想だにしていなかった分野からだったもので,「知りません」と(一同笑)。授業で聞いたような気がする,自分の頭の片隅にあるっていうことをしぼり出して,何とか答えました。
編 ということは,一応の会話は成り立ったという感じですか。
星野 なんとか,ですね。ほんとうに誘導してもらって最後にひと言言うだけみたいなところまでもっていってもらったりしていたもので。何とか答えを出すっていうところまでは,一応いきました。
編 といいますと,口述試験はある程度会話が成り立てば合格するような試験なんでしょうか。
簗瀬 はい,受講生には「会話だけしてこい」と言っていますから。違ってもいいからとにかく会話ができれば向こうが誘導して終わらせてくれるんで。
編 というと,口述試験に合格する秘訣は沈黙しないことですか。
簗瀬 はい,もうそれだけです,口述は。
◆これから
編 では,最後になりますが,お二人は今後,司法書士の実務のほうに進まれるということでしょうか。星野さんは,やはりお父様の事務所を継がれるのでしょうか。
星野 うーん,まだ悩んでいるんです。そのへんのことは親と相談ですが,自宅の事務所を継ぐかどうかは,今の段階ではまだ決めかねています。
編 どちらにしても,司法書士として実務に進まれるということですか。
星野 はい。
編 榊原さんはいかがでしょう。
榊原 まだ詳しくは決めていないんですけれど,これから3月,4月の終わりぐらいまでは研修が続くので,その研修の中で決めていこうかなと思っています。実務をもう一度やってみたいという気持ちもあるし,ほかのところに目を向けてみたいという気持ちもあります。でも,この業界に関わっていきたいというのは思っています。
編 司法書士業界ということですね。
榊原 はい。
編 では,星野さんはどのような司法書士になりたいと思いますか。
星野 相談される方や仕事を依頼される方はそれなりに司法書士を頼ってきたりしているので,そういう方との信頼関係を大切にして仕事をしていけたらと思っています。
編 何か専門にしたい分野はありますか。
星野 そうですね。できることなら,全部やってみたいなとは思っています。一生のうち一度でもいいので,全分野の仕事をちょこちょことでも,携わっていけたらいいなと考えています。
編 榊原さんは,理想の司法書士像,こんな司法書士になりたいというのはありますか。
榊原 そうですね,人の話をちゃんと聞ける司法書士になりたいと思います。
編 何か専門分野にしたいものとかありますか。
榊原 私は人とつながっている仕事をしたいというのがあったので,成年後見とか裁判関係とか,そういったかたちの仕事をしてみたいなと,いまは思っています。
編 では最後に,簗瀬先生から,今後実務に進まれるというお二人へ何かメッセージがございましたらお願いします。
簗瀬 そうですね。榊原さんも言っていましたけれども,資格をとりあえず取ると,そこで一回決着をつけたいと。取ったあとで,どう生かすかはそれぞれの人生設計だろうと思うし,司法書士の道に進むのかそれをステップにほかの道に進むのか,それは今後考えてもらえればいいなと思います。まあ,(二人には)せっかく苦労して資格を取ったので,それを有意義に活かしてもらえれば,その資格取得に少しでも協力できたことをうれしく思います。司法書士の資格も既存業者のあり方が正しいのかということもありますし,むしろ若い人たちが今後いろんなことを考えて,その資格が大きく広がってくれれば,ありがたいなと思います。今後の活躍を期待します。
◆受験生の方へのメッセージ
編 ありがとうございます。では,最後になりますが,読者の皆さまに星野さん,榊原さんからひと言ずつメッセージをいただければと思います。では星野さん,最後に来年の合格を目指す読者の方にひと言メッセージを。
星野 先ほども言いましたが,自分に合った勉強方法を見つけることも大切だと思います。それと最後まで諦めない,ということですね。やはり,諦めてしまうと自分の気持ちも切れてしまいますし,諦めなければ結果がよかったにしろ悪かったにしろ,自分自身でそれなりにやったという達成感はあるんじゃないかなと思いますので。僕も最初に受けた年は全然ダメだったんですけれど,それなりに1年間やりきった満足感というのはありましたので。とにかく,自分に合った勉強方法を信じて最後まで諦めずに続けるということですね。
編 ありがとうございます。では,榊原さんからひと言お願いします。
榊原 そうですね。私も諦めないことというか,途中でわからなくなっても投げ出さなければ,たとえ時間はかかっても理解ができたらその知識は忘れにくいものになると思います。試験を終えてみて,この試験は投げ出さずにコツコツとやっていけば大丈夫な試験ではないかなと思うようになりました。ですので,時間がかかっても,投げ出さずに一歩一歩がんばってほしいです。
編 ありがとうございます。本日はお忙しい中お時間をいただきまして,ありがとうございました。
星野・榊原・簗瀬 ありがとうございました。