私が測量士補の資格を取得しようと思った動機は,土地家屋調査士試験の試験免除資格を得るためでした。法律学と社会基盤学という,文系・理系の融合した資格職に興味を覚えました。測量学は土地家屋調査士としても業務に影響する基本的能力です。私は大学では,法律学を学んでいたので「法規」の分野は得意でしたが,計算問題は悩まされました。
しかし,測量士補の試験は計算問題も基本的な問題が中心であり,試験本番でも工業高校の生徒が多数受験していたので,社会人であっても「過去問」をこなせば十分合格できると思います。本試験では,測量法規などの文章選択問題は同じ問題や似たような問題が繰り返し出題されます。この点,古い参考書を使用して勉強をしていては法改正などがあった場合には「誤った解答を一生懸命勉強する」ことになるため,参考書・問題集類は最新版を使用することが大前提です
私は,1回の試験で合格することができたため,参考書類は既に役目を終えましたが,再受験となってしまった場合には,同じ参考書類を使用することは,法改正のポイントに注意をしないと危険です(とはいえ,他の国家試験と比べて毎年のように法規の改正が頻繁にない点は測量士補試験の特徴ではありますが)。計算問題については,法改正の影響が少ない点で,ある意味得意な方には強みであると思います。三角比や三角関数など,数学の部分でややこしい分野もありますが,そこを避けていては,合格後に測量士補として現場に出たときにも苦労すると思います。また,基本的な公式で問題に対応できるものばかりですので,苦手意識をもたずに計算練習をしてほしいと思います。
そうはいっても,この基本的な公式を理解することが一番苦労します。私は,三角比・三角関数については,大学受験用の数学の参考書(入門レベル)を読み返しました。私立大学法学部には数学が受験科目になかったため,高校レベルからのやり直しです。「サイン・コサイン・タンジェント」が,どこをどう数値として算出するのに役立つのか,丁寧な説明を受けていないと混乱してしまいます。また,機械的に暗記することは面白味がないだけでなく,合格後の実務にも全く役に立たないと思います。私は,「この長い線とこの角度の比を掛け合わすと,ここが算出されるのかな?」というあいまいな意識で捉えていたため,いつまでたっても計算に慣れませんでした。
計算問題が不得意な方は,予備校の答練や講座を計算分野に限り受講することは有益だと思います。計算問題での過去問利用は,@過去問の焼き回し(数値を変えて再出題)のような問題があること。A過去問が基本ベースとなって,本試験の問題に対応できる「応用問題」が出題される可能性があるという点で重要です。要するに,「文章選択問題」でも,「計算問題」でも,過去問をやっておくことが第1の受験準備の条件といえると思います。その他,過去問をやっておく意味は,「問題作成者が受験生に勉強しておいてほしい点をメッセージとして発している」という点でも重要です。これくらいは解いてほしい!という「レベルの観点」,実務に必要な最低限の知識を繰り返し出題するのは,落とすための試験ではないが,あまりに測量士補として仕事を始める前提を欠く者は合格させないという「試験委員の気持ちの観点」を尊重したような試験ではないかと私は思います。
測量士補試験は,過去問を中心に独学をすることが,「一番低コストで近道」ではありますが,合格後に資格を活かそうと考えている受験生であれば,もっと深く勉強していても損はないと思います。実際,法規等文章問題の正誤問題が相当得意な方は,計算問題が数題解ければ,合格してしまうことも可能です。試験の合格が目的であり,またこの点に苦労されている方はこのような「文章問題中心」の勉強法もありだと思います。
しかし,私のように土地家屋調査士試験を目指し,測量士をも視野に入れている方は,「計算問題中心」で合格したほうが後々の苦労はないと思います。測量学の研鑽は一生続きます。いくら測量機器が発達したとはいえ,すべてGPSのような衛星を用いた測量方法に置き換わるものでもありませんし,基本的な知識を習得しているからこそ,測量機器の「ボタン」を押すこと(設定すること)ができるものと考えます。私のような独学で一回目での合格者が,測量士補として優れた能力資格をもっているといえるわけではありません。その点は理解した上での勉強計画を立てていただきたいと思います。 以上のように,直前期には「過去問の解いた部分の見直し」中心で復習をすること。計算問題だけは予備校講座を利用して真の理解を図ったほうがいいのではないかという点,勉強方法を誤らなければ時間をかけず合格できますが,そのことと合格後に経験する苦労の度合いは異なるということを皆さんにメッセージとして伝えておきたいと思います。同じ「合格」でも,合格の種類や質が異なることが測量士補試験の特徴です。
他方,同じ「不合格」でも,不合格の種類と質も異なる点も特徴です。残念にも不合格を経験された方は,「あと何点の不足だったのか」,「計算問題を苦手としてしまったのか」,「法規等の文章問題の比較が苦手だったのか」等いろいろと差異はあると思います。既に過去問を覚えるくらいに押さえた方は,予備校等の答練で実力を確認するだけで,翌年度の対策は十分です。計算問題を得意とする方は,計算問題を完璧にして文章問題を数問とれるようにしてください。文章問題を得意とする方は,文章問題を完璧にして計算問題を数問とれるようにしてください。「自分の得意分野を完璧にする」ことが測量士補試験合格への近道です。このことは,合格率が何%であろうと変わらないセオリーであると私は確信しています。
そして,試験合格後を活かそうとするならば,測量士補試験合格後に苦手であった分野を得意とする努力も継続して怠らないようにお願い申し上げます。測量士補試験に合格した後も,各種予備校の「測量士補試験対策講座」を再び受講することも有益であり,無駄ではないと考えます。さらに,測量関係の公益社団法人も存在しますので,試験合格後は私も皆様も共に測量学の勉強を続けていきましょう。