土地家屋調査士は不動産表示登記に必要な土地・家屋の規模や現状を正確に調査、測量することをはじめ、登記書類の作成や代理申請、審査請求の手続きなどをおこなう専門家です。登記のコンピュータ化に伴う業務の拡大、不動産関連資格としても、近年土地家屋調査士の人気が高まっています。
土地家屋調査士の会員数は16,141人(令和3年4月時点)となっています。約97%が男性会員となりますが、3%に当たる女性会員は521人となり、近年では増加傾向になります。(参考:日本土地家屋調査士連合会「土地家屋調査士白書2022」)
年代は20〜80歳代まで幅広く活躍していますが、50代以上が73%以上を占めています。高齢かも進んでいることから、若い世代の方でも充分に活躍できる職種となっています。
「土地家屋調査士」年代別構成(令和5年4月1日現在)
※出典:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士白書2024」
会員数の推移(平成25〜令和5年度)
※出典:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士白書2024」
「土地家屋調査士」新規登録の年代構成(令和4年度)
※出典:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士白書2024」
土地家屋調査士になるには、年に1回実施される土地家屋調査士試験に合格する必要があります。試験は、筆記試験と口述試験の2段階に分かれており、筆記試験に合格した人が口述試験を受験することができます。土地家屋調査士試験は難易度が高く、勉強時間も必要となります。
土地家屋調査士になるために、ほとんどの人が選ぶのが、土地家屋調査士試験に合格する方法です。土地家屋調査士試験は法務省が実施している国家試験で、試験を受けるのに年齢制限や受験資格はなく、希望すれば誰でも受験できます。試験の詳細は後で詳しく紹介するため、受験を考えている方は参考にしてください。
土地家屋調査士は合格率が8~9%台の難しい試験です。毎年4300人前後の受験者がいます。
令和5年度は受験者数4,429人のうち、合格者428人(男373人・87.1% 女55人・12.9%)という結果で、合格率は約9.7%でした。
本学院の合格者アンケートによると、合格者の半数以上は3回以上受験して合格しています。択一式と記述式の問題を時間配分を考えて解く必要があるため、精神力や集中力、作図力、計算力も求められる試験だといえます。
土地家屋調査士試験に合格した人の平均学習時間は1~3年です。半分以上の合格者は学習開始から2年以内に合格しています。また、平日2~3時間、休日5時間程確保できることが望ましいです。特に記述式の問題に関しては解き方を身に付けるためにも、1日2~3時間は時間を確保しておきましょう。
学習方法の効率化や講座・教材選びの参考に!
●令和6年度 土地家屋調査士試験 試験概要
学習方法の効率化や講座・教材選びの参考に!
土地家屋調査士試験は,土地家屋調査士法に基づき法務大臣により年1回以上(平成30年より毎年10月中旬の日曜日に1回)行われる土地家屋調査士としての能力を審査するための国家試験であり,合格者には土地家屋調査士となる資格が付与されます。その他に土地家屋調査士法は,一定の官職に一定期間従事した者で,法務大臣が土地家屋調査士としての能力を有すると認めた場合も資格を付与するとしていますが,一般には,国家試験の土地家屋調査士試験に合格しなければなりません。
土地家屋調査士試験は,年齢,性別,学歴等に関係なく,誰でも受験することができますが,昨今の不動産等に対する国民の権利知識の向上,認可試験から国家試験に移行したことによるスペシャリストとしての土地家屋調査士の社会的地位の向上などにより,年々その難しさを増し,最近では,合格率8%台という難関になっています。
筆記試験には,午前の部(平面測量及び作図に関するもの),午後の部(不動産の表示に関する登記に関するもの等)があり,10月の中旬に午前2時間,午後2時間30分に分けて,全国の9会場で実施され,その合格者に対して翌年の1月に口述試験が行われます。最終の合格発表は,2月中旬に行われ,官報に氏名が登載されます。
このうち,午前の部(測量科目)については,測量士・測量士補・建築士等の資格があれば免除されます。合格者のほぼ全員が,この午前の部の免除者です。この時期,午前の部の試験と午後の部の試験とを併せて受験して合格しようと思うと,大変な労力とプレッシャーがかかることは間違いありません。
したがって,5月に測量士補試験を受験し,7月に合格(28問中,18問以上の正解で合格)すれば,その年の10月の土地家屋調査士試験の午前の部の免除が受けられるのですから,測量士補の資格取得が土地家屋調査士合格の第一条件といっても過言ではないでしょう。
午後の部の試験の過去5年間(平成25年度〜29年度)の出題科目は,次の表のとおりです。
内容 | 年度 | ||||||
25年 | 26年 | 27年 | 28年 | 29年 | |||
科目 | 択一試験 | 民法に関する事項 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
登記の申請手続(申請書の作成に関するものを含む。)及び審査請求の手続に関する知識 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
その他土地家屋調査士第3条に規定する業務を行うのに必要な知識及び能力 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
記述試験 | 土地に関する記述問題 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
建物又は区分建物に関する記述問題 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
土地家屋調査士試験の午後の部(平成20年度までは「午前の部」として実施されていました。)は,平成12年度試験からは,択一式問題20問と記述式問題2問で行われています。択一式問題は,解答の組合せ群の中から一つを選ぶ問題,正誤の肢の組合せを選ぶ問題が最近では90%以上出題されています。また,通常の5肢択一にしても問題の長文化が定着しており,解答時間は50分〜1時間程度は必要であると思われます。記述式問題は,例年,土地から1問,建物又は区分建物から1問,合計2問から出題されます。
土地については,測量の知識,計算力が要求されます。建物又は区分建物については,応用問題を中心に出題される傾向にあります。
次に,土地家屋調査士試験について,最終合格までの過程をみてみましょう。
午後の部では,多肢択一式問題(20問で50点満点)の答案が一定の基準に達しない場合は,記述式問題(2問で50点満点)の答案を採点することなく,不合格になります。つまり,択一式問題で足切りが行われるわけです。次に択一式のラインをクリアした答案について,記述式の採点が行われ,これについても足切りが行われ,最終的には,択一式と記述式の総合点によって合否が決定します。
平成28年度の場合,択一式は30.0点(1問2.5点で換算),記述式は31.5点でそれぞれ達しない場合はそれだけで不合格とされ,合格のためには総合点で100点中,74.5点以上の獲得が必要となりました。
筆記試験の合格者について課せられる口述試験は,全国8管区の法務局(札幌,仙台,東京,名古屋,大阪,高松,広島,福岡)で午前と午後の組に分かれ,試験官数名との質疑応答の形で行われます。この試験では,毎年欠席者を除きほぼ全員が合格していますので,土地家屋調査士試験=筆記試験といっても過言ではありません。
次に過去15年間(平成19年度から令和3年度)の土地家屋調査士試験の受験者,合格率の推移をまとめてみると,下表のようになります。全体的な流れとしては,受験者は微減傾向にあり,合格者もそれに準じて減少傾向にあり,一定数の合格者を確保しようとする政策的な理由や資格者需要の高まりを考えれば,今後も大きな変動はなく推移するものと思われます。
年度 | 申込者数 | 合格者数 | 対前年増減数 | 合格率 |
平成19年度 | 7,540名 | 503名 | -17名 | 6.7% |
平成20年度 | 7,270名 | 488名 | -15名 | 6.7% |
平成21年度 | 7,234名 | 486名 | -2名 | 6.7% |
平成22年度 | 6,739名 | 471名 | -15名 | 7.0% |
平成23年度 | 6,310名 | 390名 | -81名 | 6.2% |
平成24年度 | 6,007名 | 418名 | +28名 | 7.0% |
平成25年度 | 6,017名 | 412名 | -6名 | 6.8% |
平成26年度 | 5,754名 | 407名 | -5名 | 7.1% |
平成27年度 | 5,659名 | 403名 | -4名 | 7.1% |
平成28年度 | 5,658名 | 402名 | -1名 | 7.1% |
平成29年度 | 5,837名 | 400名 | -2名 | 6.9% |
平成30年度 | 5,411名 | 418名 | +18名 | 7.7% |
令和元年度 | 5,270名 | 406名 | -12名 | 7.7% |
令和2年度 | 4,646名 | 392名 | -14名 | 8.4% |
令和3年度 | 4,733名 | 404名 | +12名 | 8.5% |
令和4年度 | 4,404名 | 424名 | +20名 | 9.6% |
参照元:法務省
※「受験者数」を基礎に合格率を算出しますと,合格率は1.5%ほど上昇します。
次に本学院発行の月刊誌「不動産法律セミナー」の編集部のアンケート調査により,合格者の性別,学歴,受験動機,職業,受験回数,受験生活,平均学習時間,受験指導校利用の有無などについてみていきましょう。
★ 性別 ★ 学歴 ★ 受験動機(主なもの) ★ 受験時の職業 |
★ 受験回数 ★ 合格までの計画期間と実質学習期間 ▼実質学習期間 ▼直前期 ★ 受験指導校利用の有無 |
合格者の経歴をみると,8割の方が大学(短大を含む)以上を卒業されています。また,土地家屋調査士事務所等で勤務する人の割合も多いことがわかります。
土地家屋調査士を受験するにあたって初めて法律の勉強をしたという合格者も非常に多く,これから学習を始めようとする人にとっては,心強い結果が出ています。受験の動機については,独立開業を目的としている人が最も多く,その他,転職やキャリアアップにつなげたいとする回答が目立ちました。
また,50 代以上の合格者には,退職・定年後のセカンドキャリアとして,この資格を選んだという意見が多く見受けられました。
受験をスタートするにあたっては,大半の人が2〜3年以内の期間を目安として,計画を立てているようです。
実際に合格までに要した時間については,最も多かった回答は,「2年以内」です。6割以上の人が仕事をしながら(アルバイト含む)合格していることがわかりますが,これから土地家屋調査士を目指す人の中には,仕事を辞めて受験に専念するという人もいるかもしれません。計画期間としては,この「2年」というのが,一つの目安となるでしょう。学習方法によっては,1回あるいは2回の受験で合格という,短期決戦が十分に狙える試験でもあります。
「毎日どのくらい勉強したか」は,受験生の皆さんには最も興味深いところでしょう。上記には合格者の回答をもとに算出した平均学習時間を表示していますが,一人ひとりの学習時間は,その学習スタイルによって千差万別です。通勤の電車の中や会社の昼休み時間など,コマ切れの時間も有効に活用し,3時間程度の勉強時間は確保したいところです。
受験生活に関する質問では,やはり「毎日コツコツ続けることが大切」という意見が多く見受けられました。最初は大変でも,継続して続けることで,日常生活のリズムに自然と「勉強時間」が組み込まれていくようです。
また,とても興味深いものとして,農業に従事されている方のコメントがありました。ちょうど7月から8月にかけて繁忙期を迎え,本試験直前期には勉強時間がとれないため,それまでにできるだけの努力をするよう心掛けたそうです。
直前期のラストスパートはもちろん大切ですが,それよりも普段の努力がいかに大事かということの好例と言えるでしょう。
学習方法の効率化や講座・教材選びの参考に!
土地家屋調査士試験(午後の部)に必要な「学習内容」についてご説明をいたします。
学習方法の効率化や講座・教材選びの参考に!
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最後に,土地家屋調査士業務の将来性と開業について考えてみます。
まず土地家屋調査士は,不動産の表示に関する登記の専門家として,必要かつ欠くことのできない資格です。
また,サラリーマンとは違い定年がないことから,高齢者の会員も多く,自己の健康管理によっては一生涯の仕事として,息の長い職業となる可能性があると言えます。まさに,高齢化社会の時代に合致した職業とも言えます。
事務所の立地条件についても,特に登記所の近隣でなければならないといった条件はなく,郊外に自宅兼事務所として開業するなど,分散しているのが実情です。その意味では,余分な開業出資を必要としません。
業務関係の機器に関しては,GNSSなどの進歩に伴い,確かに精度の高い測量器材や図化器等もありますが,実務をしているすべての土地家屋調査士全員が必ずしもこのような高価な機材を持っているわけではありません。しかしながら,これらの機器等は,年々その操作性や作業時間の短縮においての性能が向上しており,その進歩には目を見張るものがあります。つまり,それら機器の進化とともに,業務拡大の将来性があるということです。
なお,土地家屋調査士の業務においては,測量機器だけでなく,パソコンによる申請書の作成,図面の作成は勿論,登記申請もパソコンによる「電子申請」が多くなり,OA機器の操作も,土地家屋調査士業務では重要性を帯びています。
さて,土地家屋調査士試験に合格して業務を行うためには,日本土地家屋調査士会連合会に備える名簿に登録をすると同時に,事務所を設けようとする所在地に設立されている土地家屋調査士会に入会しなければなりません。ちなみに,各土地家屋調査士会では,業務の改善進歩のために各種の研修会を行っており,その一環として新入会員のための研修も行っている会もあります。
また,官公署が登記所に対し登記を嘱託して行うことを「公共嘱託登記」と言いますが,この公共嘱託登記は全表示登記事件のうちのかなりの件数を占めています。昔は役所の職員が自分で直接登記を申請することが多かったのですが,現在は,各都道府県に「社団法人公共嘱託登記土地家屋調査士協会」と呼ばれる法人が設立され,土地家屋調査士はこれに入会・活動できるようになっています。これによって,土地家屋調査士同士での協力体制に基づいた仕事ができ,同業者同士での人脈も開拓できます。
さらに,他の資格との兼業の可能性ですが,測量士,司法書士業との兼業が多いようです。
行政書士や建築士との兼業も多いのですが,特に,司法書士との兼業は登記業務上一貫性があり,将来性が高く望めるものと言えるでしょう。
不動産は,最も財産的価値があるといっても過言ではありません。したがって,不動産をめぐり多くの人たちの思惑がからまり,時として不幸な事件へと発展する可能性があります。
こうした状況を未然に防ぎ,国民の権利保全に多大な尽力を与える土地家屋調査士が求められ,必要とされている時代が到来していると言えます。
現行不動産登記制度の下で,官の側では登記所における登記官が,民間の側では土地家屋調査士,司法書士が取引の安全と登記手続の円滑化に貢献しています。その責任は重く,何かと神経を使う仕事ですが,やり甲斐があり,充実感があり,そして,その将来性が十分に望める土地家屋調査士の資格を一生の仕事として,みなさんも挑戦・取得してみてはいかがでしょうか。
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