●書籍概要
土地家屋調査士試験は,実質上,筆記試験の午後の部の試験のみで合否が決定され,最近では,合格率6 %台という難関な試験になっています。調査士の試験は,「不動産の表示に関する登記につき必要と認められる事項であって,次に掲げられるもの」として,
@「民法に関する知識」,
A 「登記の申請手続(登記申請書の作成に関するものを含む。)及び審査請求の手続に関する知識」,
B「土地及び家屋の調査及び測量に関する知識及び技能であって,次に掲げる事項」
ア 平面測量(トランシット及び平板を用いる図根測量を含む。)
イ 作図(縮図及び伸図並びにこれに伴う地図の表現の変更に関する作業を含む。),
C「その他土地家屋調査士法第3 条に規定する業務を行うのに必要な知識及び能力」
に関する事項について行われ,このうち,午後の部の試験は,@ACの内容で,午前の部の試験は,Bの内容で行われます。なお,午後の部の試験は,多肢択一式問題20問と記述式(書式)問題2 問で,解答時間2 時間30分の枠で行われます。また,午前の部の試験は,多肢択一式問題10問と記述式(書式)問題1 問で実施され,解答時間は2 時間です。
この試験の最大の特徴は,「条文等の法律知識」と「計算・作図の技術」という異なる二つの要素が同時に行われていることです。
ところで,土地家屋調査士試験の午後の部の試験科目を学習する際に,重要なポイントは何でしょうか。まず第一に「不動産の表示に関する登記」において,「択一の知識」と「書式の知識」とを別のものと考えてしまわないことです。言い換えますと,択一の知識の延長上に書式の知識があり,書式の知識の延長上に択一の知識があるということです。
したがいまして,常に両者を関連づけて学習することが大切です。これができれば,合格への学習期間・労力の大幅な短縮につながります。
第二に,この午後の部の試験は,一見すると出題範囲が他の試験に比較して狭いので,合格への学習期間が短くて済むのではないかと思われがちですが,後掲する合格者アンケートからも明らかなように合格者の平均学習期間は2 〜 3 年位です。ただし,最近は,午後の部の試験の学習期間が1 年未満の合格者が増えてきています。
また,同一年度に,「測量士補」と「土地家屋調査士」をそれぞれ1 回の挑戦でダブル合格される方も決して珍しくありません。したがいまして,基礎学習期,実力養成期及び直前学習期の各学習段階で,“キッチリした学習”をしていくことが短期合格のためには重要であるといえます。
このキッチリした学習をするために,調査士を初めて受験される方にも,既習者の受験生の方にも必要な書籍と考え,この度本書の発刊に至りました。
最後になりましたが,本書をご利用の受講生のお一人でも多くの方が,早期に合格の栄冠を勝ち取られることを祈念しております。
平成25年3月
東京法経学院 制作部
「改訂二版」の発行にあたって
本書の改訂版「新版 調査士合格ノートU」は,民法の「債権総論」,「債権各論」,「親族」及び「相続」の追加,一般法人法の施行に伴う法令改正の反映,等大幅な改訂を加え平成21年3月に発行しました。
その後,平成23年6 月3 日に民法等の一部を改正する法律(平成23年法律第61号)が公布され平成24年4 月1 日に施行されました。
今回の「改訂二版」は,当該法律の施行に伴う民法(親族法)の改正を反映させ,発行した次第です。
本書が,今後とも,土地家屋調査士の資格取得を目指している受験生の方々にとって,真に役立つ「実戦的なテキスト」として活用されることを念じております。
平成25年3月
東京法経学院 制作部
第6章 民法に関する事項 目次
項目No. | 事項 |
---|---|
6-1 | よく用いられる法令用語の一般的な意味 |
〈総則〉 | |
6-2 | 権利能力 |
6-3 | 未成年者 |
6-4 | 成年後見制度 |
6-5 | 制限行為能力者の相手方の保護 |
6-6 | 任意後見制度 |
6-7 | 成年後見登記制度 |
6-8 | 不在者 |
6-9 | 失踪宣言 |
6-10 | 法人 |
6-11 | 物 |
6-12 | 意思表示 |
6-13 | 法律行為 |
6-14 | 代理 |
6-15 | 無効及び取消し |
6-16 | 条件及び期限 |
6-17 | 期間の計算 |
6-18 | 時効 |
〈物権〉 | |
6-19 | 物権の意義及び種類 |
6-20 | 物権の客体 |
6-21 | 物権の効力 |
6-22 | 物権の変動 |
6-23 | 占有権 |
6-24 | 所有権 |
6-25 | 地上権 |
6-26 | 永小作権 |
6-27 | 地役権 |
〈担保物権〉 | |
6-28 | 担保物権総論 |
6-29 | 留置権 |
6-30 | 先取特権 |
6-31 | 質権 |
6-32 | 抵当権 |
6-33 | 根抵当権 |
〈債権総論〉 | |
6-34 | 債権の意義と性質 |
6-35 | 債権の目的 |
6-36 | 債権の種類 |
6-37 | 債権の効力 |
6-38 | 債権の対外的効力 |
6-39 | 多数当事者の債権関係 |
6-40 | 債権譲渡 |
6-41 | 債務引受 |
6-42 | 債権の消滅 |
〈債権各論〉 | |
6-43 | 契約の意義と種類 |
6-44 | 契約の成立 |
6-45 | 懸賞広告及び優等懸賞広告 |
6-46 | 同時履行の抗弁権及び危険負担 |
6-47 | 第三者のためにする契約 |
6-48 | 契約の解除 |
6-49 | 贈与 |
6-50 | 売買 |
6-51 | 交換 |
6-52 | 消費貸借 |
6-53 | 使用貸借 |
6-54 | 賃貸借 |
6-55 | 雇用 |
6-56 | 請負 |
6-57 | 委任 |
6-58 | 寄託 |
6-59 | 組合 |
6-60 | 終身定期金 |
6-61 | 和解 |
6-62 | 事務管理 |
6-63 | 不当利得 |
6-64 | 不法行為 |
〈親族〉 | |
6-65 | 親族 |
6-66 | 氏 |
6-67 | 婚姻 |
6-68 | 親子関係 |
6-69 | 後見・保佐・補助 |
6-70 | 扶養 |
〈相続〉 | |
項目No. | 事項 |
6-71 | 総則 |
6-72 | 相続人 |
6-73 | 相続の効力 |
6-74 | 遺産分割 |
6-75 | 相続の承認・限定承認・放棄 |
6-76 | 財産分離 |
6-77 | 相続人の不存在 |
6-78 | 遺言 |
6-79 | 遺贈 |
6-80 | 遺言の執行 |
6-81 | 遺留分 |
第7章 土地家屋調査士法に関する事項 目次
項目No. | 事項 |
---|---|
7-1 | 調査士の業務 |
7-2 | 調査士の資格・欠格事由 |
7-3 | 調査士の登録 |
7-4 | 所属する調査士会の変更の登録 |
7-5 | 登録の取消し |
7-6 | 業務関係の規律 |
7-7 | 土地家屋調査士法人 |
7-8 | 懲戒処分 |
7-9 | 調査士会(その1 ) |
7-10 | 調査士会(その2 ) |
7-11 | 調査士会連合会 |
7-12 | 公共嘱託登記土地家屋調査士協会 |
7-13 | 非調査士等の取締り |
7-14 | 罰則 |
〔1〕 本書の内容
本書は,土地家屋調査士の午後の部の受験対策用の択一対策の実戦テキストです。
本書は,先に刊行しました「新版 調査士合格ノートT 上・下 不動産登記法編(新訂版)」の続刊であり,収録科目は,「民法」及び「調査士法」の分野です。
平成16年度の本試験から民法の出題分野が拡大され(20問中3 問の出題),それまでの出題歴があった「親族・相続」の出題範囲を中心としたものから,「総則」・「物権」及び「相続」を中心とした内容が問われるようになりました。
今後の試験の出題実績を勘案しなければ,どの範囲まで出題傾向が拡大されるのかは判然としませんが,実務における「筆界特定」等の業務範囲の拡充,及び「民間紛争解決手続代理関係業務」における業務範囲の拡充の観点からしても,土地家屋調査士試験で問われる民法の出題範囲が拡がる可能性が高いと考えられます。
そこで,本書の民法分野を収録するに際しては,近時の本試験の出題の中心である「総則」・「物権」・「相続」に留めず,「債権総論・各論」及び「親族・相続」を含めました。
〔2〕 本書の構成
上記〔1 〕の記述と重なる内容もありますが,本書は「民法(全分野)」,「土地家屋調査士法」を収録した書籍ですが,以下の諸点にご留意ください。
@「民法」は分野ごとに収録
上記のとおり,民法は「総則」〜「相続」までの全分野を収録していますので,「小扉」を設けて,「総則」,「物権」,「担保物権」,「債権総論」,「債権各論」,「親族」及び「相続」の7分野に明確に分けています。
A「土地家屋調査士法」の分野で引用している商法等の根拠条文につきまして調査士受験生の方々には,「商法」については馴染みがないので,「商法」又は「会社法」の条文を極力掲げています。
B末尾に「判例の索引」及び「先例の索引」を追加