合格体験記|合格するという目標を見失わなかった1年間|土地家屋調査士試験|東京法経学院





土地家屋調査士 合格体験記

合格するという目標を見失わなかった1年間

体験記

M,Kさん


 体験記

 私が土地家屋調査士試験の受験を決意したのは平成29年の春頃でした。そこから約 1 年半をかけて来年度の試験に臨む計画を立て、東京法経学院の通信講座を申し込んだのが 5 月頃だったと思います。しかし、実際には仕事などもあり、ほとんど手つかずのまま数ヶ月が経ちました。次第にモチベーションもなくなりかけていた頃に、重なるようにして仕事のほうでもうまくいかず、 8 月には仕事を辞めることを決意しました。やや衝動的に辞めたこともあって、その後は勉強どころか何もする気が起きないような、最悪な時期を過ごしました。

 もはや試験云々は関係なく、このままではまずいと思っていたところ、試験の日程が変更となり、平成30年度からは10月に行われることになったと知りました。その時点でちょうど試験 1 年前にあたる平成29年10月だったのですが、そんな大事なことさえ把握していなかった自分に呆れると同時に、仕事をしていない今の状況で勉強だけに集中することができれば、十分すぎる程の時間があると考え始めました。生活は貯金を切り崩してなんとかやりくりすることにして、とにかく 1 年は勉強だけに集中することを決意して、ようやく私の試験勉強がスタートしました。

 

 勉強を開始するに当たって、講座のカリキュラムとスケジュールを確認したのですが、当初の予定から約半年もずれ込んでいるため、当然スケジュール通りに勉強を進めることはできませんでした。こうなってしまっては自分のペースで勉強するしかなかったので、まずは比較的馴染みのあった民法を勉強することから始めました。数年前に宅建を取得していたので、多少は理解できるところもあるだろうと思いながら、実際に講義を視聴してみたのですが、やはりそんなに甘いものではなく、初っ端から本腰を入れて取りかからないことには合格はあり得ないとわかりました。そこから約 1 ヶ月を費やし、全ての民法の講義の視聴とテキストの読み込み、そして問題演習を一通り行いました。この時点で、択一問題のレベルをある程度把握することができ、予習復習を怠らず、講義中はしっかりと集中してさえいれば誰でも解答できるようになるものだとわかり、勉強に対するモチベーションが格段に上がりました。

 

 そんな中、民法の次に取りかかったのが、おそらく私にとって最大の難関であると見ていた求積でした。大学も出ておらず、高校でも文系だった私にとって数学というのは中学生レベルあるいはそれ以下、もはや算数程度の知識しかないような状況からのスタートでした。講義は基本的な数学から始まるわけですが、その段階から早くも未知の世界で、その後に不安を感じざるを得ませんでした。いわゆる数学アレルギーのようなものを発症してしまっていたのですが、これを乗り越えるために、学生時代に勉強してきたようないわゆる「数学」と思うのはやめて、あくまで問題を解くために必要な手段の一つと思うように試みました。

 そもそも、なぜ数学が必要になるのかということを理解できていなかったので、目的もわからずに未知の世界に飛び込んでも意味がないと思い、土地の記述式問題の構成を把握することに取りかかりました。この時点では不登法の知識は全くないため、問題を見ても検討もつかないのですが、どうやら、申請書というものは地積を記載する必要があり、その地積を計算する上で数学が必要になるのだと、ここで初めて数学を勉強する意味を理解しました。

 ただ漠然とした中で勉強しようとして頭に入らなかったものも、勉強する意味や目的を念頭に置いた上で取りかかることで、勉強をはかどらせることができると感じました。これは数学だけでなく他の部分にも通じるものであり、大の苦手であった数学の勉強によって、後の勉強にも生かせる考え方や勉強方法を習得することができました。その後は四苦八苦しながらも求積をなんとか形にすることができ、電卓の操作にも慣れてきて、一つ大きな山を越えることができた気がしました。

 この時点で12月に差し掛かろうとしており、ここからいよいよメインの不登法の勉強に取りかかることになります。

 

 不登法を勉強する上で、まず気をつけたのは、先の数学の勉強で得た教訓である「漠然と勉強しないこと」でした。意味や目的をまず念頭に置き、問題に対してどのように関わってくるのか、ということを理解するために、講義の視聴やテキストの読み込みとほぼ同時進行で問題文及び解説文の精読並びに申請書の解答例の書き写しを行いました。そのようにしながら勉強を進めていると、次第に得た知識と問題が結び付くようになり、年明け頃には、それまでは解いているというよりは読んでいるだけだった問題も、解いているという実感が持てるようになりました。

  2 月頃には、一通り全ての講義を視聴し終え、問題を 5 割ぐらいは解けるようになってきたので、ここまで見て見ぬふりをしてきた作図に取りかかり始めました。こればっかりは勉強というよりも作業であり、毎日こなすことでスピードや精度を上げていくしかありませんでした。方法や道具も多種多様なので自分に合った方法を見つけ、使用する道具もある程度見極める必要があります。最初は問題を解いて作図をするというよりは、解答にある座標値で作図をすることだけに集中しました。実際に問題を解くにあたっては、私の場合作図をしながら求積をするのではなく、全ての求積をして申請書を書き終えた上で作図をしていたので、作図に関しては単なる作業というとらえ方をしていました。申請書のことやまだ算出できていない座標値のこと等を考えながら作図をするとミスや時間のロスにつながると考えたからです。これは土地の問題について述べていますが、建物の問題に関しでも全く同様の考え方でいました。とにかく問題を「解く」のは申請書等を全て書き終えるまでで、その後の作図はミスが許されない単なる「作業」という姿勢で問題に取りかかるように心がけました。そのようにしていくうちに作図もある程度形にでき、その後は、これまで勉強してきたところをもう一度復習することと、毎日過去問を解くという日々の繰り返しでした。

 

 時は 3 月を過ぎ、中頃に差し掛かってきた頃には、ほぼ全ての分野を 7 割程度は理解し、問題も全て解き終えることができるようになってきました。後はこれをさらに熟練させ、法令及び先例に対して理解を深めることや、問題を解くスピードを上げていくことができれば、確実に合格が見えてくると思えるようになりました。しかし、本来のスケジュール通りに勉強を進めていれば、すでに答練に取りかかっているはずであったのに、私は大きく遅れを取っており、さらに測量士補の勉強にも未だ手をつけられていなかったので、ここからさらにギアを上げていかなければならない状況でもありました。この時点で測量士補の試験まで約 2 ヶ月ですが、測量士補の試験勉強と並行して土地家屋調査士の試験勉強も続けていかなければならなかったので、今思えば最もきつい時期だったかもしれません。

 測量士補は、電卓が使用できないという点で数学が苦手な私にとっては、決して世間で言われているほど簡単なものとは思えませんでした。この期間は思いの外、測量士補の勉強に時間や労力を使ってしまったため、土地家屋調査士の勉強は毎日 1 問記述式問題の過去問を解くという程度に留まりました。測量士補の勉強に苦戦をしいられながらも、 5 月の測量士補本試験を無事に終えることができ、ここからはまた土地家屋調査士の勉強に集中することができるようになります。

 

 測量士補の試験を終えた後に、まず取りかかったのは、これまで勉強してきたこと全ての復習からでした。具体的には、再度講義を視聴し、テキストや六法を読み込み、択一問題を繰り返し解き、記述式問題についても引き続き毎日 1 問は過去問を解いていました。また、この時期に「不動産表示登記申請書マニュアル」を購入し、講義も視聴して、あらゆる種類の申請書を把握しイレギュラーな問題にも対応できるようにしました。頭に定着させるため、重要だと思われる申請書の記載例は、大きな紙に書き出して部屋の壁に貼り付け、いつでも確認できるような環境も作りました。さらに、これまでは求積の際に複素数を使っていなかったものを、状況に応じて使えるようにするため、メディア講義を利用して複素数を身につけました。その後は、問題を解く際には複素数を使う方法と使わない方法どちらも練習して、求積をより確実にできるようにしました。この時点ですでに 7月を過ぎており、 5 ヶ月近く遅れを取っている中、私の場合ここからようやく答練に入ることになります。

 

 答練を始める前は、これまで法令や先例の理解を深めるための勉強や、過去問演習ばかりに時間を費やしていたため、自分の実力をはかる機会がなく、勉強方法やスケジューリングを間違えたのではないかと正直不安を感じていました。しかし、実際に答練に取りかかると、思いの外簡単に感じることができて自己採点ではあるものの、点数も満点に近いものばかりを上げられるようになっていました。基礎を固め、知識を定着させることに時間をかけすぎていた節はありますが、問題を解きながら手応えを感じられたという意味ではそれが功を奏したのかもしれません。

 また、約 2 ヶ月をかけて全ての答練を終えましたが、本試験までに残された日数的に 1 回ごとに間隔を置くことができなかったため、ほぼ毎日新しい問題を解いていました。あくまで私に限った場合かもしれませんが、間隔を置かずに毎日新しい問題を解くというのが、新鮮な気持ちを生み、日々の勉強に対するモチベーションにつながったのかもしれません。答練を終えた後も、総整理・速解答練を申し込んで本試験形式の新しい問題を得られたので、結果的に答練を開始してから本試験日までの期間は、ほぼ毎日のように新しい問題を解きながら、本試験当日を迎えることになりました。

 

 本試験当日は、今思い返しても恐ろしいほどに緊張していました。前日に満足に睡眠を取ることもできず、体のだるさも感じていたので、試験会場に向かうバスでの移動時間約 2 時間半は何も考えず、とにかく脳を休めて、コンディションを整えることに努めました。若干精神的に落ち着くことができた中で、本試験会場に足を踏み入れると、正直目を疑いました。なぜなら、机が想像していたものより、はるかに小さく、さらには前後の間隔が狭かったからです。私は自宅で勉強する際、広いスペースを使って作図をしてしまっていたため、この環境では作図に支障が出るのではないかと不安に感じました。しかしそうはいってもどうにもならないことであるのは百も承知だったので、とにかく落ち着いて、問題に集中することだけを意識しながら開始時間を待ちました。

 

 そして、いよいよ試験が始まり、問題を開き、まずは記述式問題がどんな問題かを確認しました。
 この時点でまず頭に留めたことは、“土地はマイナス座標で桁数も多く時間がかかりそうであること”、“建物は非区分建物の合体の問題で、敷地の筆界点は座標値が記載されたものであること”でした。実際に問題を解いたのは択一問題からでしたが、法令や先例をひたすらに熟読し、過去問を繰り返し解いていたので、 9 割は間違いなく取れるだろうという自信を持って解答にあたりました。やや考えさせられる部分もなくはありませんでしたが、思っていた以上にスムーズに解答することができ、約30分で解き終えることができました。択一問題を良い感覚で終えることができたため、少し落ち着いた状態で、次に建物記述式の解答にあたりました。
 早い段階で問題の意図を汲むことができたため、申請書の内容については難なく解答できるだろうと思ったのですが、過去問ではあまり見なかったパターンの床面積の算出にやや苦戦した部分はありました。そんな若干の不安を抱えながら建物記述式を約1 時間で解き終え、最後の土地記述式の解答にあたりました。この時は、遂に最後の問題であるということを意識してしまい、何か不思議な感情にかられていたのですが、問題を読むと、マイナス座標や桁数に惑わされなければ決して難しい問題ではないことに気づき、冷静になることができました。最初に問題を確認した段階で、おそらく今回は複素数を使うべきだと考えていたので、座標値をメモリーに記録するときにミスをしないように心がけたぐらいで、申請書も特に悩むことはなく、求積も作図も容易だったので、スムーズに問題を解き終えました。全ての問題を解き終えて、残り時間が20分程あったため、マークミスがないこと、計算ミスや記入ミスがないことを念入りに確認し、遂に試験の終わりを迎えました。正直、終わった瞬間は大きな手応えがあり、結果が出るのが楽しみでした。そして何より、勉強に明け暮れたこの 1 年間に大きな達成感を得られました。

 

 結果発表までの期間は多少の緊張はあり、長く感じましたが、無事に合格したことを確認したときは、やはりうれしかったです。そして発表の数日後に成績通知が届いたのですが、驚くことに、100点満点中99点の点数で、全国 1 位という成績での合格でした。合格さえできればいいと思っていたものの、やはりこうして良い成績を残せたというのは自信につながりましたし、素直にうれしかったです。このような結果が得られたのも、今振り返れば“どんなに遅れを取っても自分のペースを保持したこと”、“勉強に対するモチベーションを維持するために考え方を工夫したこと”、そして何より、“合格するという目標を常に見失わなかったこと”が要因だったのではないかと思います。

 

 最後に、この 1 年間の試験勉強は楽しいものではありませんでしたが、どんな結果になったとしても無駄になることはないと確信できるものでした。目標に向かって真剣に向き合うことは、今回の試験勉強に限らず、どんなときにでも必要なことだと思います。社会人であれ、学生であれ、当然のことかもしれませんが、この土地家屋調査士試験を通して改めてそう感じることができました。本当に大きな経験を得られた 1 年でした。