1 .はじめに
私は、土地家屋調査士業務とは関係が無い、情報通信の技術開発系の仕事をしていたため、土地家屋調査士関係の法令、技術、実務は、まったくの初心者でした。従って、独学での合格は難しいと考え、東京法経学院に 4 年間お世話になり、仕事を続けながら67歳で合格することができました。私は、合格者の中で上から 3番目の高年齢者でした。
私は生涯現役での仕事を目標にしていますが、長年続けてきた会社生活も終息に近づいていると感じ、新たな方面の業種に踏み出すことを決意しました。土地家屋調査士の資格を選んだ理由は、士業の中で理系の部分があり、自分に合っていると感じ、これらの知識や技術を身に着ければ、一生の仕事になると思ったからです。
2 .試験勉強の方法と経緯
1)受講講座と書籍
東京法経学院の講座については、モチベーションの維持及び少しでも多くの知識を吸収したいため、 5 月連休の臨時の講座を含め、多くの講座を通学で受講しました。その中で、初心者にとって必須と思われる講座は、本科と答練だと思います。私は、ベスト答練、実戦答練とも、自分の実力がわかるので、毎年受講しました。
書籍については、講座を受講すると、書籍が付いているので、その範囲内の書籍で十分だと思います。特に、本科で付いている書籍は、必要なものが、ほとんど揃っていると思います。私が、別に、単独で書籍を購入したものは、「不動産表示登記申請マニュアル(東京法経学院刊)」、「表示登記教材 地目認定(民事法務協会刊)」と「表示登記教材建物認定(同)」の本だけでした。
2)勉強の進め方の経緯
(1)基礎知識の習得( 1 年目、 2 年目)
そもそも、どういう法律体系で、具体的にどういう実務があるのかを知らなかったので、勉強すべき全体像が見えない中でのスタートでした。
また、最初の年の東京法経学院の答練では、問題文の意味が理解できないことが多かったこともあり、 1 年目の本試験結果は、合格点まで15点の差があり、基礎知識が不足していると感じました。答練で問題を解くだけでは体系的な知識の修得はできないと思い、 2 年目は、本科に申し込み、基礎から勉強することにしました。その結果、全体像がやっと見える様になりました。後から考えると 1 年目から本科に申し込んでおけば良かったと思っています。 2 年目の本試験結果は、本科で基礎知識を勉強したこともあり、択一の点数が 9 割正解と良くなりましたが、記述式が足切りで不合格となりました。
(2) 解答のスピードアップ訓練( 3 年目)
2 年目の記述式が基準点まで届かない原因は、記述式の土地、建物の内、土地が8.5点と極端に低いためでした。問題解答の順番を択一、建物、土地の順番で解いており、最後の土地の解答が試験時間内に終わらなく、空白解答があったため低得点となりました。
記述式の点数を上げるためには、試験時間内に全解答を行う必要があり、そのためには、択一、記述式のそれぞれについて、スピードアップを行う必要があると考え、その訓練を行いました。
択一については、 2 年目の本試験での択一時間が40分かかっていたので、目標を35分以下に抑える様にし、答練では 5 問の解答が終わる毎に時間を見て時間経過を把握してスピードを調整する様にしました。記述式は、解答方法手順の定型化(後述の3.4)項参照)を行い、何回も問題を解き、手順を身につける様にしました。
3 年目の本試験は、スピードアップ訓練の効果が出て、試験時間内に全部の解答を行う事ができ、足切りもなかったのですが、合格点に 2 .5 点及ばず残念ながら不合格でした。
(3)質の高い解答への対応( 4 年目)
3 年目の本試験結果は、合格点数が今までより高く、 8 割正解しても受からない状況になったため、目標を 9 割正解に置く必要がでてきました。この目標を達成するためには、単に全部の解答ができても、質の低い解答では、合格点まで届かず、質の高い解答を行う必要があります。質の高い解答を行うには、知識の正確な記憶と単純ミスの撲滅への対応(後述の 3 の 6 )項を参照)が必要と考え、実施しました。
4 年目の本試験は、質の高い解答への対応の効果が出たためか、択一、記述式共 9 割の正解となり、合格することができました。
3 .工夫したこと
今回の資格試験の体験で感じたことは、長年、会社一筋の仕事をしてきて、資格試験の経験が無かったこと、加えて、年齢の原因もあると思いますが、集中持続力、記憶力、スピード・柔軟性、の衰えを感じました。
これらの状況を受け入れて、自分なりに工夫したことは、次の通りです。
1)生活習慣の見直し
長時間勉強を続ける集中持続力が衰えており、体調に左右されますが、頭がボーとしてきて理解力、記憶力が極端に落ちてしまいます。従って、生活面を見直し、毎日コンスタントに勉強する習慣作りが必要と考えました。通勤時間が2 時間あるので、この時間を活用するため、座席に座れる各駅電車に乗り、通勤中に勉強を行う様にしました。また、65歳からは週 3 日の仕事となったため、平日の仕事休みの日は、東京法経学院の自習室で、休日は東京法経学院の講義・答練又は図書館で勉強を行いました。休みの日の勉強は、頭がスッキリしている午前中に集中して勉強をし、勉強以外の用事や体力維持のためのスポーツクラブでの運動は、なるべく頭が疲れた夕方から行う様にしました。
2)計算式と電卓操作を身に沁み込ませる
土地の筆界点を求める計算式の記憶や電卓の使い方は、 1 度覚えても数週間経つと忘れてしまいます。短期間で覚えることが難しいので、何回も繰り返して覚える様にしました。土地の筆界点を求める問題は必ず出題されますが、問題を把握してから計算式を考えている時間的余裕がありません。また、電卓の操作についても正確性が求められます。従って、問題を把握したら、瞬時にどのパターンの計算式で求めるかを判断し、電卓を正確に使いこなせる必要があります。この計算式のパターンが25種類程度あるのですが、私は、手のひらサイズのメモ帳に各パターンを書き、通勤電車の中や帰りにコーヒー店に寄り、毎日練習をする様にしました。身に沁み込むまで、約 1 年かかりました。
3)計算の速さと正確さを複素数方式で補う
電卓のスピードが遅く、速く打とうと意識すると、押し間違えが頻繁に出てしまい困惑しました。この為、電卓を叩く回数を減らさないと試験時間内に終わらせることや正確性を上げることができないと感じました。
この点、複素数方式はX軸とY軸の両方を同時に計算することができるので、スピードを上げることが出来ました。又、押し間違え対策としては、=やメモリ登録の前に表示確認をしてから 叩く様にし、正確性をあげました。試験問題の関数表の値での計算結果と電卓の中での自動計算が、一致しない問題があるため、関数表の値を取り入れて複素数計算を行いました。電卓のメモリ数は、同じメモリを何回も違う意味づけで行うと頭が混乱して間違えるので、メモリ数の多い19メモリ対応の電卓を選びました。
4)記述式の解答方法手順の定型化
問題を読んでから解答するまでの動作で、3 つの問題がありました。一つ目は、 2 つ以上のことを同時に別々に考える並列思考能力が衰え、柔軟性が欠けてきたと感じました。例えば、後回しにしていた問題を忘れてしまったり、次の文脈に入ると前の文脈を忘れてしまったりします。二つ目は、通常と違う順番で解いていくと、慣れていないせいか単純ミスが出やすい傾向にありました。三つめは、問題文を全部読んでから問題を解きにいくと、もう一度問題文を確認しないといけないので、 2 回読みが多くなり、時間が取られる傾向にありました。
これらの対策として、 1 回目を読みながら、その読んだ内容から解答を書ける様に訓練し、手順を定型化しました。例えば、土地の杭についての記述を読んだら、その時点で、地積測量図に記載してしまう方法です。問題を忘れてしまったり、不慣れな手順によるミスを無くせて、スピードアップができるので、私に合った方法と思っています。
5)各階平面図、建物図面を下書き無しでも画ける様にする。
建物については、各階平面図と建物図面を下書き無しで、直接正確に画く訓練をしました。この方法が出来ると、かなりの時間が節約でるので、問題解答の順番を択一、土地、建物にし、試験の残り時間により、各階平面図と建物図面の作成スピードを調整することが出来る様にしました。
6)知識の正確な記憶と単純ミスの撲滅への対応
択一の 3 年目の本試験結果は、 3 問があいまいな知識によるもので、 1 問が勘違いによる単純ミスでした。あいまいな知識については、条文を正確に覚えていないことが原因と考え、過去問の量を解くよりも、地道に法令を読んで正確に条文を覚える様に心がけました。
勘違いによる単純ミスは、誤りを選ぶ問題なのに、設問の後半になると頭が混乱して、いつのまにか正解を選んでしまったというもので、答練でも同じ間違いがありました。このため、誤りを選ぶ問題については、問題文の左空白に大きな印をつけ、かつ設問毎に正しい、間違いを記号して残し、頭の混乱による単純ミスを防ぐ様にしました。また、目標を 9 割正解とすると、 2 問以内の間違えに抑える必要があるため、苦手な民法の対策として、東京法経学院の民法講座を受け、試験前にも、その復習を行いました。
記述式は、小論文の解答を、その場で考えて解答していたため、模範解答と比べると、不正確又は的外れな解答となり減点の対象となっていました。このため、小論文に出そうな問題の模範解答を記憶することにし、何回も書いて覚える様にしました。また、図面での記述項目の抜けを無くすため、必要な記述項目をゴロで覚え、図面作成終了時に再確認する様にしました。
4 .終わりに
東京法経学院で指導して頂いた先生方、又、自習室を使わせて頂き、見守って頂いたスタッフの方々に深謝いたします。