私は大学を卒業した後,不動産会社の営業職をしていました。そこでは,毎日夜遅くまで働き,休日もとれない日々を送っていました。
営業職に将来の不安を感じていたとき,会社でお世話になっていた土地家屋調査士の先生とお話をする機会がありました。話を聞いていくなかで,次第に調査士に対する関心が強くなったのでした。それまで,自分のやりたい仕事をまったく考えることなく就職したため,初めて興味ある職種に出会えたと感じました。私は大学時代の専攻が工学科だったこともあり,測量士補を取得していましたので,「この資格しかない!」と強く思いました。
その後,半年で不動産会社の営業職を辞め,調査士の補助者として勤めるとともに,試験勉強を始めることになりました。
私の勉強方法を,ご紹介します。
勉強方法には,いろいろとやり方はあると思いますが,私のやり方も一つの方法として参考にしていただければ幸いです。
私自身もそうでしたが,働きながら資格取得をめざしている人が苦労する点は,時間の確保だと思います。私の場合は,まず電車通勤の際には,必ず参考書を開く習慣をつけました。たとえそれが1駅,2駅でも,地目の一つでも覚えようと参考書を開きました。
そして,わからない箇所には必ずマークをして,帰宅してから六法で条文を確認しました。また,出社1時間前に,会社近くで択一式の勉強をしました。
半年ぐらいこの作業を反復することにより,択一式問題がおもしろいように解けるようになりました。逆にいえば,働きながら択一式と書式の両方を自宅で勉強する時間を確保することは,難しいのではないかと思います。
そして自宅に帰ったら,書式を決めた時間内で,毎日2問解きました。疲れているときは,先に1時間程仮眠した後,勉強するようにしました。
書式もただ図化するだけではなく,集中して毎日解くことが大切だと思います。さらに,自分でわかる箇所(例えば,作成人欄や申請人欄,境界標の種類など)でも省略せず,書くことを常に心がけました。
上記の方法で,1日約3時間から4時間の勉強時間を確保しました。
時間の活用法については各々やり方はあるようですが,うまく時間を活用した人は,やはり早く合格しているようです。
私は,補助者として働いていましたが,土地の仕事を担当したため,区分建物の問題が理解しにくく,苦手意識がありました。特に,敷地権の問題が理解できなかったため,遠回りだとは思いましたが,マンション管理士の参考書を購入し,マンションにおける基本的な法律や知識について勉強しました。
誰にでも苦手な分野があると思いますが,他資格の基本的な参考書を読んでみるのも,案外と合格への近道につながるかもしれません。
私は,東京法経学院の実戦答練に通学していましたので,実戦答練の理想的な活用法と悪い活用法の両方をあげてみたいと思います。
有効な活用法としては,まず実戦答練が始まるまでに,一通りの勉強を終わらせて臨むこと,そして復習に力を注ぐことです。もう一つあげれば,いつも本番のつもりで毎回臨むことです。
これを確実に行えば,1発合格も決して夢ではないと思います。
逆に悪い例をあげれば,答練を受けたまま復習をまったくしなかったり,あくまでも模試試験だからと,途中でわからない問題にあたると諦めてしまったりすることです。そして,一番陥りやすいことが,よい成績を残したいがために答練の問題にヤマを張ることです。「第1回目の書式は表示だろう」というようにヤマを張り,そのときは好成績のため,自分ではできている気になってしまうことです。
私も,成績上位者になりたいと思い,出る問題を予想していた時期があります。しかし,それは受験生にとって,とても陥りやすく,危険な落とし穴だと思います。くれぐれも,そのようなことがないように,注意してください。
本試験直前期の注意点はいろいろあろうかと思いますが,私の場合は,新しいものには手をつけないようにしました。混乱したり,自信を失ったりするだけで,決してプラスにはならないような気がしたからです。
そのかわり,直前期はなるべく復習することに重点を置き,過去に行った実戦答練の問題を,何度も何度も解いていました。
また,直前講習にも通学していましたので,直前期は上記の問題しかやりませんでした。
そのほかは,勉強しない日を設けて,自分の趣味に時間を費やしたりしていました。これは,平成15年度の試験で神経質になりすぎて,本試験で緊張して失敗した経験から学んだことです。
「自分が知らない問題が出題されたらしようがない!他の人もできないだろう。」と考え,半分開き直りのようですが,他の人も確実に正解してくるだろうと思われる箇所を決して落とさないように心がけました。
さて,勉強を始めたのは,平成12年12月からでした。8月までは時間がなかったこともあり,初めての試験は記念受験のつもりで臨みました。
いま振り返ってみますと,試験に対して非常に楽観的でした。受験指導校の答練にも行かなかったため,結果は散々でした(おそらく,択一式10問くらいだったと思います。もちろん,書式もできませんでした)。
2年目は,9月から「調査士合格ノート」(東京法経学院刊)を読み込み,書式も毎日1問ずつ必ずやるように習慣づけました。 翌年の1月からは,東京法経学院の実戦答練
に通い始めました。そして模試の結果をみて,愕然としました。毎回ランクCで,上位者とのレベルの差が歴然としていたからです。そのうえ,問題の難易度にも唖然としました。
「何が違うのだろう?」「上位者はどんな勉強方法をしているのだろう?」そんなことを考えながら,自分自身の勉強方法を見直そうと考えました。
それからは択一式対策として,参考書を読むだけではなく,自分でサブノートを作りました。そして,調査士六法(東京法経学院刊)で一つ一つ条文を調べ,択一式の応用問題に対応できるようにしました。もちろん択一式だけではなく,書式の記述式問題にも対応できるようになったと思います。
しかし,2年目の試験結果は択一式18問,総合で3点足りず,不合格に終わりました。書式の問題で,時間をかけ過ぎたことが原因だと思いました。
3年目も2年目と同様に,択一式は条文を引き,書式は自分で時間制限を設けて(土地,建物各1問を,1時間20分で解くようにしました),勉強をしました。この頃の答練の結果は,BとAを行ったり来たりしていました。
自分でも絶対の自信を持って臨みましたが,3度目の試験結果も不合格でした。その原因は,土地書式問題の座標値の転写ミスでした。 そして平成16年度も,勉強方法は基本的には
変えずに試験に臨みました。結果は,択一式15問,書式は土地,建物両方8割ぐらいはできたと思います。
近年の土地家屋調査士試験は,かなり法律の問題にウエイトが偏ってきたのではないかと考えます。
平成16年度試験では,民法の問題が3問出題されたように,これからはこのような問題が主流になると思います。
さらに,実務的な要素もここ数年出題されています。まるで重箱の隅を突くような問題が,これからも受験生を悩ませることと思います。
もっとも,平成16年度試験の民法の問題をできた人はそんなにはいないと思います。法律の勉強を専門にしている人はできたと思いますが,逆に土地の閉合問題については,理系の人
に分があったと思います。
そういう意味では,均衡された良問になってきたともいえると思います。
自分のできる問題を,確実に点にする。些細なミスやうっかりミスをしない。本番での合格者と不合格者との違いは,ここにあると思います。
また,今後の合格の決め手は,あの膨大な問題を時間内に終わらせるスピードと精度でしょう。
平成16年度の試験についていえば,試験終了後,周りを見渡すとすべて終わっている人のほうが少なかったように思います。図面が白紙であったり,作図までいっていない人が,多々見受けられました。電卓や三角定規の活用法はもとより,日々の作図の成果が問われているような気がしました。
私も4年間という長い歳月をかけてしまいましたが,東京法経学院の講師の先生にいわれた忘れられない一言があります。
先生曰く,
「試験は負けグセをつけないように。負けグセをつけると慣れてしまって合格できなくなるよ」と,よくおっしゃっていました。
その度に,今回こそはとモチベーションをあげるようにしましたが,難関の資格に合格するには「誰にも負けない」という執念が一番必要なのかもしれません