私が土地家屋調査士受験を志したのは,22歳のときでした。
それまでに行政書士,宅建,測量士補に合格していましたので,調査士試験も2年以内に合格する計画を立てて試験に臨みましたが,現実には3年かかってしまいました。
1年目は毎日2時間程度,基本的な問題を何度も何度も繰り返す勉強でした。試験前には一通り基本事項を覚え,択一式も足切りにはかからない程度の実力をつけることができました。
初めての試験には,運がよければ合格できるのではという思いで挑みましたが,書式にまったく歯が立たず,土地はほぼ白紙。まったくの惨敗でした。
平成14年度からは,不合格者に成績通知がなされるようになりました。私は,まったく問題外の成績だろうと思っていましたが,択一式が1,123位,書式が2,050位という成績で,少し驚きました。1年目の受験生で図面が白紙でも,この順位が取れるということは,やはり実質的に競争をしているのは全受験者の1〜2割程度の人たちであると実感しました。
個人的な意見ですが,受験者が1万人程度であれば,択一式と書式の平均順位が1,500位以内に入っている人は,いつでも合格する可能性のある競争組だと思います。それは,会場にい
けば感じられることですが,合格する気のない記念受験者や,勉強不足で合格レベルに達していない受験者も多数います。1年目の私は,間違いなく後者であったと思います。初学者は,早くこの競争組に入ることが賢明だと思います。
2年目は,1年目の失敗を踏まえて書式に重点を置き,毎日必ず1問は書式を解くことを継続しました。
今回こそはという思いで臨んだ2回目の試験でしたが,土地の書式に予定以上の多くの時間がかかり,択一式も十分な見直しができず,試験終了となってしまいました。
結果は択一式1,311位,書式1,168位でした。書式の順位も十分伸びず,択一式にいたっては,順位を下げる結果となってしまいました。
2回目の試験が終わったときは,しばらく無気力状態となってしまいました。いつになれば合格できるのだろうと不安になり,自信もなくしてしまいました。
そこで,調査士試験から少し目をはなして別の資格試験に挑戦することにしました。
挑戦した試験は,管理業務主任者です。この試験を選んだのは,調査士試験に活かすこともできると考えたからです。特に,自分の苦手な区分所有法等の理解を深めるにはもってこいの資格試験だと思いました。
調査士試験終了後から勉強を始め,実質2ヵ月程度の勉強でしたが,合格することができました。この試験に合格したことで,自分はやれるのだと自信を取り戻すこともできました。
3回目の受験にあたっては,それまでの勉強方法を根本的に見直すことから始めました。
どうして合格できないのか,合格者との間にどんな差があるのか必死で考え,情報を収集しました。合格者がよいと薦める教材も,一通り目を通してみました。
合格者が一番多く使っているという電卓を購入し,東京法経学院の作図・求積ビデオ講座を使用し,作図方法を一から改めました。
このようなことから感じたことは,この試験は,知識よりも受験テクニックが問われる試験だということです。実際,2年目までと3年目の勉強方法で最も異なることは,作図・求積のテクニックを身につけたということです。
具体的には,いかに早く三角定規を動かし,少ない動作で図面を完成させるか,いかに電卓の機能を活用し,ミスのない求積をするかです。
書式の練習問題を解くにあたってはストップウォッチを使用し,作図時間を毎回チェックしました。作図・求積講座のなかでもいわれていますが,自己流の作図では,一定のレベルまでは上達しますが,そこから上へは伸びません。
しかし,基本に忠実な作図であれば,最初は慣れずに時間がかかっても,練習を重ねることによって急速に作図時間を短縮できます。私の場合,1時間以上かけて解いていた答練の書式が,30分程度で解けるようになりました。
とにかく書式においては,無駄な作業をしないということにつきると思います。
択一式対策としては,過去問の反復練習のみです。未出題の問題にはあまり深く踏み込まず,過去問の徹底理解に努めました。
苦労した合格者は,最初の年から合格した年の勉強方法をしていれば,もっと早く合格できたとよくいわれます。ですから,近くに合格者がいれば,その人の話を真摯に受け止めなければなりません。
3回目の試験には,やるべきことはすべてやったという気持ちで臨めました。試験終了後は「会心のでき」という気はしませんでしたが,自分のベストは尽くせたと感じました。
合格発表のときは,うれしいというよりホッとしました。会心のできではなかったので,本当にこれで合格してよいのだろうかとも思いました。特に今回の試験にいたっては,正解率が7割を切っても合格できる試験となりました。
これには,合格ラインを下げてでも一定の合格者を輩出しなければならないという政策的な意図があるためでしょうが,今回は,それを実感させる年度であったと思います。
私は,このような合格者制限をしている試験は,バス停の順番待ちのようなものだと感じています。必ず自分にも,バスに乗れる順番がまわってきます。ですから,合格圏の競争組に入ったら,あとは実力を落とすことなくじっと我慢していれば,必ず自分の順番がまわってくるはずです。
一番大切なことは,志を強く持ち,受験し続けるということだと思います。そのような人には,必ず順番がまわってきます。
最後になりましたが,長い試験生活を支えてくださった多くの方に感謝申し上げたいと思います。