●土地家屋調査士を目指した経緯
私が土地家屋調査士の資格の取得をめざしたきっかけは父からの勧めがあったからです。当時私は大学生で、土地家屋調査士という資格を詳しくは知りませんでしたが、自身のスキルアップのためにと思い、まずは測量士補の勉強から始め、独学で取得しました。その後、構造設計の仕事に就きたいという目標ができたため、モチベーションも上がらず、結局大学院卒業後、設計事務所に就職。就職後は一級建築士の勉強に専念し、合格することができましたが、出産を機に退職。建築系の仕事への復職も考えましたが、何か新しいことにチャレンジできるチャンスかもしれないと思い立ち、父の職場で働きながら土地家屋調査士の勉強を始めました。仕事と子育ての合間に勉強をするのは大変なことでしたが、以前ある方から言われた「忙しい毎日の中で時間を作れた人が合格する」という信念を胸に、学習に励みました。
●学習方法
5月頃から学習を始めました。学生の頃、通信講座を受講したものの、取り組まずに諦めてしまっていたので、まったくゼロからのスタートでした。
最初は聞きなれない言葉や言い回しばかりで問題を読むだけでもかなりつらかったです。それでも、わからない用語はその都度調べてノートに書き留めたり、法令集に書き込んだりを繰り返した結果、7〜 8月頃になると抵抗なく条文や問題を理解することができるようになりました。
択一については、ひたすら合格データベースや答練、模試の問題を繰り返し解きました。10周以上はしたと思います。合格データベースを攻略するだけでもかなり力はつきますが、模試や答練は過去問以外の予想問題が出題されているので、知識の幅を広げることができました。反省点としては、もっと法令集をきちんと読む時間を作れば良かったと思っています。学習を進めていくうちに、判例からの出題が思っていた以上に多いということに気づいたからです。私は問題を解くことに重点を置いていましたが、それでは既出の問題にしか対応できません。どのような問題にも対応できるようにするには法令集を条文だけでなく判例まできちんと読むことが大事だと痛感しました。私はそのことに気づくのが遅く、後悔したので、これから受験する方はぜひ法令集をきちんと読み込んでほしいです。法令集を読み込むことは楽なことではありませんが、間違いなく一番の参考書です。
記述式の勉強については、はじめのうちは1問すべてを解くのではなく、「申請書」、「図面作成」、「計算」に分けて勉強するのがおすすめです。全容がつかめていない初歩の段階では、記述式問題を1問解くのは時間もかかるうえに要領もつかめず、かなり高度なことだと思うからです。私自身、はじめは記述式の勉強の仕方が全く分からず、1問1問すべて解いていました。しかし、時間ばかりかかってなかなか身につかず、モチベーションは下がる一方でした。そこで思い切って申請書と図面作成とを分けて勉強したところ、習得のスピードが格段に早くなりました。なので、まずは、基本的な問題(本科を受講している方は書式攻略ノート)の申請書作成を身に着けるのが習得の近道だと思います。これができるようになったら、過去問や答練のような応用的な問題に取り組み、引き出しを増やしていくといいと思います。また、「不動産表示登記申請マニュアル」は申請書のすべてが詰まっているといっても過言ではないので、こちらに収録されている申請書をすべて書けるようになれば、怖いものなしだと思います。
図面作成については、記載する項目は暗記の必要がありますが、定規の使い方さえマスターしてしまえばあとはどの問題も要領は同じです。数をこなせばスピードと正確性は必ずアップします。問題の異同を問わず、とにかく数をこなすことが図面作成の習得の近道です。
面積計算については、近年は難しい問題は出ていないようですが、どの問題も一見して全く違うように見えても、最終的に使う公式やパターンはだいたい決まっています。そのパターンを引き出すことができるように、とにかくたくさんの問題に取り組むのが近道だと思います。私は「自分が入手できる問題はすべて入手して解く」意気込みで取り組んでいました。
●学習する際に工夫したこと
わからないところを調べたものは、それを書き留めるノートを作成したり、法令集の関連条文のところに直接書き込むなどして、知識の幅を広げていきました。ノートには、調べ物のほか、自分が躓きやすいポイント、忘れがちなポイントなどを書き込んで、隙間時間にそれを眺めるようにしていました。さらに、法令集には各法律や見出しにインデックスを貼り、索引にかかる時間を短縮するよう工夫しました。準備に時間のかかる作業ですが、時間をかけてでもやることをおすすめします。このように、法令集にいろんなことを書き込んだり、自分なりの工夫を加えることで、自分だけの法令集が完成して、試験直前に大変役立ちました。
また、土地家屋調査士の参考書や問題集はどれも分厚くて重量級のものばかりなので、ちょっとした隙間時間や外出先ではスマートフォンで問題集などを撮影してそれを学習していました。こうすることで子供の寝かしつけの際にも学習することができたのは大きかったです。
さらに、答練や模試、過去問を解いた際には、解答冊子の表紙に「1 回目 択一○○点 記述第21問○○点 第22問○○点」のように記載していました。これにより、何回解いたか、前回は何点取れたかを確認して、学習の進歩を視える化しモチベーションをあげていました。また、記述式問題では、間違った箇所にマーカーを引き、メモ書きで「何回目 計算ミス、○○記載忘れ」などと記載して復習の際に同じ間違いをしないように工夫しました。
●使用教材や受講講座について
私は数年前の通信講座の教材をメインとして使用しました。数年前ということで法改正など不安な点もありましたが、大部分は問題なく賄うことができました。最新の法改正や記述問題の添削については、答練や模試を利用して補いました。ただ、法令集は最新のものを買い直しました。この他に買い足した教材としては、「不動産表示登記申請マニュアル」と「合格データベース」です。この2種類は買って損はない教材なので、教材選びに迷っている方はぜひこの2 種類を購入してほしいです。私は試験直前までこの2種類の教材と答練や模試の復習を繰り返し行いました。合格データベースは一問一答形式なので隙間時間での勉強に大変役立ちました。表示登記マニュアルは、申請書の書き方のすべてが掲載されているので、これを丸ごと暗記すれば、申請書に関しては怖いもの無しだと思います。
●使用した筆記用具など
何を使ったらいいか全くわからず、周りに聞ける人もいなかったので、作図に必要な道具はすべてインターネット等で調べるところから始めました。ボールペンについては、ネットでおすすめされているものや店頭で実際に試し書きをして、書きやすくかつ速乾性のあるものを一通り購入し、自分にあったものを探しました。最終的に私はぺんてるのエナージェル0.3oを使用していました。申請書も作図もこれ1本のみを使用しました。また、消しゴムはサクラクレパスのArchを使用しました。かなり大胆に消しても消しゴムが欠けたりせず、かつきれいに消すことができるのでとてもおすすめです。
また、受験生の中では常識となっているそうなのですが、三角定規には滑り止めとして裏にビニールテープを貼って使用していました。手軽にできるのでぜひやってみてください。
●本試験について
本試験会場は青山学院大学の青山キャンパスでした。大学受験の際にも訪れたことがあるため、なんとなくのイメージは掴めていました。当日は開場時間の1時間半前くらいに会場に到着しましたが、すでに結構多くの人がいました(他の資格の試験も多く行われていたので、調査士試験の受験者でないかもしれません)。ベンチやテーブルなどが多く配置されていたため、開場時間までそちらで六法を読んだり、補食をとったりして過ごしました。開場時間が近づいてくると、ベンチやテーブルは埋まり、立って待機する人も多く見受けられました。開場時間になると検温と消毒を行うため列になって会場の建物内に入り、各自受験番号の教室へ向かいました。教室内は、3〜4人掛けの長机が横に2列あり(縦は覚えてないです)、蜜を避けるためその机に1人または2人が着席する形でした。机のスペースは比較的余裕がありましたが、奥行きは少し狭い印象でした。(問題用紙を開くと、奥行きはいっぱいいっぱいな感じ。)試験時間まで、机の上のレイアウトを整えたり、鉛筆や定規の手入れや点検を行ったり、六法を眺めて過ごしました(六法はほとんど眺めているだけで頭に入ってきませんでした)。教室のドアは常時開放されていて少し寒かったので、持参していたマフラーをひざ掛け代わりに使用しました。
いよいよ試験が始まりました。まずは落ち着いてパラパラと問題用紙をめくり、ざっと全体像を把握しました。択一は苦手な民法の問題がすごく難しく、最初の3問を解くのに時間を要しました。最初から難しくて焦りましたが、多少択一に時間を割いても大丈夫という自信があったので、焦らずにゆっくり考えました。以降の問題はすらすらと解けましたが、筆界特定の問題は躓きました。ここでも、とにかく焦らず解くことに意識をしました。結果、択一は30分ほどで解き終わりました。記述式問題に最低でも1 時間半残せばいけると踏んでいたので、記述式問題には時間をかけられそうでした。土地と建物どちらから解くか迷いましたが、どちらも難しさは同じように見えたので、土地から解くことにしました。筆界点の計算や求積は問題なく解けましたが、「土地の筆界が不明である」という記載に惑わされ、登記の目的はかなり迷いました。結果、そんなわけないと思いながらも「土地合筆・分筆登記」という訳のわからない解答をして、解答欄をすべて埋め、50分ほどで図面作成まで終了しました。いつもは30
〜 40分ほどで解き終わっていたので、少し焦りましたが、まだ時間には余裕があったので落ち着いて建物の問題に取り掛かりました。建物の問題は、問われている内容自体は難しくないものの、情報量が多く、整理をするのに時間を要しました。30分程時間が余ったので自信のなかった土地の問題に戻り、計算ミスがないか、問題の読み落としがないかを入念にチェックしました。登記の目的は最後まで悩みましたが、最初に書いた答えのままいこうと決め、残り10分ほどになって、択一と建物の解答の見直しを行い、試験終了。この時は、とにかく「試験が終わったこと」がうれしかったです。帰り道も、試験の結果云々よりも試験勉強から解放された喜びの方が大きかったです。
●試験後から合格発表まで
解答速報は、怖くてすぐに見られませんでした。でも、やっぱりどうしても気になってしまって、その日の深夜に1番引っかかっていた土地の記述式問題の解答を見ると、登記の目的から何から何まで、自分の書いた答えとまるっきり違いました。不合格を確信しました。一気にどん底に落とされ、その日は涙が止まらず、一睡もできませんでした。択一については15〜17問くらいの自信はありましたが、記述式の足切りで落とされると思ったので、自分に腹が立ち、立ち直れませんでした。不合格を確信していたので、悔しくて悔しくて試験が終わってからすぐにまた勉強を始めました。
●合格発表
受かっていたら奇跡、合格なんてありえない、と思っていたので、自分の受験番号も確認しておらず、仕事から帰宅後、ご飯の支度をし終わった20時頃にダメ元でHPにて合格者の番号を確認しました。そこに自分の番号があったときは手が震えて軽くパニック状態でした。見間違えじゃないかと、何度も何度も確認しました。主人にも確認してもらったほどです。成績開示の結果は、択一42.5点、土地15.5点、建物21点でした。未だになぜ合格できたのか不思議でなりませんが、諦めずにとにかく解答用紙を埋めたのが功を奏したのかなと思っています。
●口述試験
口述試験は落ちる者はいないといわれていながらも、だからこそとても不安でした。コロナ禍ということもあり、口述試験対策模試への出席を迷いましたが、出席したことで雰囲気や要領を把握することができ、先生に「自信をもって」と言われ、だいぶ不安が払拭されました。
試験当日までは、東京法経学院で配付された口述試験受験対策資料を熟読し、記載してある内容はすべて完璧に答えられるようにしました。二次試験ではこちらに載っていないものも質問されましたが、難しい内容は問われないので、基本的な事項に関してなんとなく記憶を呼び起こしておいて、かつ口述試験対策資料を覚えておけば問題ないと思います。
●最後に
私は、試験を受ける前の自分に「とにかく自分のやってきたことに自信をもって」と言ってげたいです。試験勉強中も、独学かつ通信講座ということもあり、孤独との戦いでした。試験直前になってくると、模試や答練でA判定を取れるようになってきましたが、それでもなお、自分のやっていることは本当にこれでいいのろうか、という不安が最後まで拭えず、疑心暗鬼のまま試験当日を迎えました。
問題は解いた分だけ必ず力になっています。これから受験される方は、ぜひ、自分のやってきたことに自信をもって試験に臨んでください。
難しい試験ではありますが、勉強しても合格できないような試験ではなく、より多く勉強時間を確保した人が合格できる試験だと思います。ライバルよりも1秒でも多く勉強するぞ!といった意気込みで試験勉強に臨んでほしいです。