合格体験記「暗記よりも理解が大切」|土地家屋調査士試験|東京法経学院





土地家屋調査士 合格体験記

「暗記よりも理解が大切」

体験記
柳田直樹 さん

 体験記

柳田直樹 さん(茨城県) 平成21年度合格


 僕は今年で23歳になります。
土地家屋調査士筆記試験に受かるまでの貴重な日々を,今ここでやっと振り返ることが出来ます。右も左もわからず始めた,あの頃の僕のような人がいるかはわかりませんが,もしそんな人がいれば参考にしてください。

◆きっかけ

 この資格を知ったのは父が調査士事務所に補助者として勤めていたからです。父も昔,調査士試験に挑戦したことがあったようなのですが合格率の低さもあり挫折したようでした。
僕が高校卒業間近になった頃,進路で迷っていると父に「今勤めているところの社長さんが『調査士の資格が取れれば事務所を継いでいいよ』と言ってくれているんだ」と知らされました。それまで,仕事の内容も,調査士という名前すら本当に何も知らなかったのですが,当時18歳の僕は「自分の事務所?ってことは社長?すごく難しい試験?一握りしか受からない?…………受かれば超かっこいいじゃん!?」
そんな感じで調査士になるという目標が生まれました。

◆心の準備期間

 高校卒業後,測量士補の資格を取るために専門学校に通い始めました。理由は皆さんご存知の通り調査士試験の午後の部(今年は午前の部)が免除になるのと,もし調査士が受からなくても手に職をつけておくことは無駄にならないと思ったからです。一年過程と二年過程があったのですが,卒業と同時にもらえる資格はどちらも同じだったので一年過程を選びました。
測量も未知の世界で,自分はこれから何を学ぶのかも分からず最初の授業で度分秒(角度の計算)が黒板に書かれた時に目が点になったのをよく覚えています。ただ寮に入っていたので思い出としては毎日が修学旅行みたいでとても楽しかったです(笑)。
そんな日々が過ぎ,なぜこの学校に通い始めたのか忘れかけた頃,調査士試験とはどんなものなのかいろいろ調べ始めました。
すると,毎年合格者500人前後,合格率約6%……………辞めようかと思いました。
しかし,「独立開業」という何とも言えない良い響きが僕の闘争本能に火をつけてくれて,やるからには始めたら一年間,遊びも行かず,飲みも行かず,寝る間も惜しみ,勉強しまくって絶対一年で受かってやる!!本気でそう決めました。
だから僕はこの年,遊びまくったのだと思います。こうして来年から始まるであろう受験勉強の心の準備をしました。
頭でいろいろ考え,期待したり不安になったり…きっと誰でもここまでは出来ます。
それを実行に移す勇気が,成功をこの手に掴むための第一歩なのだと思います(照)。
今から挑戦を始めようとしている方は,きっと不安だと思います。僕もそうでした。
…何が不安ですか?きっと敵が見えないからです。まず,試験の仕組みを把握しましょう。
試験時間は2時間半。択一問題が20問。書式が2問(土地1問+建物1問)。これくらいは頭に入れてから勉強を始めたらいいと思います。
勉強するにも何をどれだけやればいいかも分からず,闇雲に時間を割くよりも,きちんとやるべきことを把握してこなしていかないと合格への最短ルートから外れるので気をつけて下さい。

◆0年目(2006年)

 四月の就職と同時に勉強を始めることにしました。調査士試験は過去問の繰り返しと聞いたので,とりあえず過去問集と合格ノートを買ってきました。当然さっぱりわからず,東京法経学院本科講座に通おうとしたのですが,時期的に中途半端だし,あと四ヶ月じゃ無理だと思ったし「今年は会場の下見と雰囲気を味わえばいいや」となりました(笑)
しかし,来年に照準を合わせたとしてもあと一年四ヶ月…グダグダしている暇はない?と独学で始めました。まず合格ノートをとりあえず読もうとしたのですが,慣れない仕事での疲れと,文字を読むのが大嫌いなおかげで毎晩合格ノート1ページも読めず,深い眠りに…しかも読んだところで意味がわからないので止めました。今振り返っても過去問から始めていいと思います。理解の前に,もともと何もわからないのだから,とりあえず「こういうものなんだ」と問題についての解説を暗記していきました。書式も同様に。
がむしゃらに3ヶ月くらいやっていると,やっと「なぜだろう?」「この違いはなんだ?」という疑問が出てきて,これは少し自分の中に入ってきた証拠だと思い,ここでやっと合格ノートを合わせて読むようにしました。分野別になっているのですぐ調べられるし,なんの目的もなく読むのと違って,知りたいと思って読むとドンドン頭に入っていく気がしました。「大事なのは疑問に思うことだ!疑問になれば知りたくなる,知りたいことは覚えられる!」そんな感覚になったので,無理矢理にでも「なぜだろう?」と思うようにしていました。
一年目は時間を費やせば費やすだけ伸びると思い,朝,出勤する前に書式,お昼休憩に電卓を叩き,仕事が終わってからも勉強しました。
電卓はかなり重要な技術だと思い,少数点第二位の位が0.01ズレただけでもその原因を探したり,問題によって,やり方を換えると答えが違ったりするものを分析したりし,徹底的にやり抜きました。
計算式にフル桁で入力するのか,四捨五入してから入力するのかなんてどちらも差ほど変わらないと思っていましたが,座標が0.01p変われば当然面積もズレてきますし,問題によっては運命を分ける時があります。(土地は誰でも出来るような問題で,建物で点数に差をつけるような場合)。全員できるような問題を間違えるのは命取りです。
初めのうちは不安になってばかりでしたが,そのうち自信が出てきて,次はどんな問題がくるだろうと楽しみになっていました。楽しめる人には敵いません。
慣れてきた頃には土地の計算問題はクイズ感覚でやっていたので何も辛くなかったし,抵抗もありませんでした。
時間的に多く勉強していたせいか,予想より暗記ができたせいかわかりませんが「この時点でも最初に比べたら結構覚えたし,もしかしたら独学で合格できる?」なんてのろけていたのを今振り返ると,とても恥ずかしいです。
どれほどの大きさわからなかった氷山を一通り見渡せたことで,ゴールが見えた気がしました。その下にはとんでもなく大きな氷が続いているとも気づかずに…

◆1年目(2007年)

 2006年,結局本試験は私情で受けられずに独学での限界を感じて10月くらいから本科講座に通学を開始して2007年に入り答練が始まり本試験にむけて本格的な勉強が始まりました。やはり実務も何も触れていない人は特に本科講座に通うべきだと思います。はっきり言って専門的な知識,表現,言葉すぎて調査士業務とは何かすらわからないと,自分で勉強していても「きっとこういうことだろう」とか自分なりにしか解釈できないので,危ないし効率も悪いです。
答練では周りの人たちの本気さに初めは圧倒され,みんな必死なんだと体感しました。本科講座だけでは聞いたこともない問題がドンドン出てきて,とても焦りだし,平日も3〜4時間は毎日机に向かいました。それでも答練の復習と書式の演習ノートをやるのが精一杯で,あまり理解を求めず,量をこなして暗記してしまう感じになっていました。書式が運命を分けると聞いていたので,得に書式に力を入れていました。
結局,初めての本試験(2007年)は択一が13問…書式は41点取ったのですが,合計点が足りませんでした。
自信なかったわけでもなく,まさか択一が,こんなに出来ないとは思っていなかったので「運が悪かっただけ…」とか「もしあと二問出来ていれば…」とか自分を納得させようとしたのですが,そんな甘いことを言っていたら,いつ受かるかわからないし,運も実力のうちというし,実力がなかったからだと,現実を受け入れ来年に向け気持ちを切り替えると同時に「自分に足りていないものはなんだ?勉強時間?勉強年数?電卓の使い方?図面を書くスピード?条文の暗記?…」合格点到達できなかった理由を徹底的に探しました。すると不動産登記法をという法律についてまだ「理解」しきれていないと気づきました。本気で勉強したなら調査士試験の範囲はそんなに広くないので(民法は除く),3ヶ月やれば範囲はなんとなく把握でき,半年もやれば合格ライン付近にいけると感じました。
実際一年で受かる人もいるし,受験一年目でもあと一歩だったなって感じた人は結構いると思います。しかし,ここからが大変でした。結局,結果がすべてですから受かっていればこんなこと考えなかったと思うのですが僕なりの意見を述べます。
「暗記よりも理解が大切」
過去問10年分を理解なしに丸暗記できたとしても,そんな暗記はまるで役にたちません。不動産登記法の理解した条文1つ1つを武器に例えるなら,暗記しただけの条文は理解していないので,その武器の使い方がわからないということになります。どんな敵(問題)に対して使う武器(条文)か,使い方,注意点まで理解しないと,本番では不安になります。まぐれで倒せる(正解する)時もあると思いますが,いざ勝負(本試験)でそんな賭けしたくないと思い ます。
自分の暗記したものを理解し知識に変えるためには,やはり1つ1つ丁寧に学習していく必要があると思います。逆に言えば理解ができたら条文の一言一句の暗記はそんなに必要なことではないかも知れません。
ただ,択一問題の中には条文をそのまま問われることもあるので,覚えておく分野も,もちろんあります。(地図の記録事項や保存期間など…)

◆二年目(2008年)

 というわけで,2008年本試験に向けての勉強は択一(条文の理解)に力を入れることにしました。答練の解説を読むにしても根拠となる条文を1つ1つ六法で引いて一問一問丁寧にこなしていきました。その問題から考えられるパターンを出来る限り多く,むしろ全部のパターンを考えながら進めました。時間はかかりますがこういうことをやっていくと分野ごとにすべて
がつながってくるのです。そして,それらが最終的に辿りつくところは,不動産登記法第一条だと実感できました。この法律はなんのためにあるのか考えてみれば,必然的にわかることも少なくありません。
答練でも常に50番以内,1位も2回とれました。そして自信をもって望んだ2008年,なんと座標を転写ミスして計算したため求点の座標値,面積,土地の形状,筆界点間距離がすべてズレて書式の足きりに0.5点届かず不合格。もし転写ミスがなければ合格点を10点くらい上回ったと思います。もう言い訳のしようがないほどの初歩的ミスでした。
みなさんは,これをただ笑いますか?自分じゃない人がこんなことをやっていたら多分僕は笑います。でも本人だってそんなミスしたら終わりだって分かっているし,転写してから再確
認もしました。実際に当事者になってみないと分からないと思いますが,こういうミスが実際に起こり得る試験なのです。ミスもなくサラッと合格してしまった方は笑い話にしてくれて構いませんが,今からまだ本試験に望む方に言いたいです。自分でも想像出来ないようなミスをして惜しくも後一歩で合格を掴みきれない結果になってしまうことは決してゼロではありません。そうならないためにも,日頃の勉強から常に確認,再確認を怠らないでください。つまらないミスをしたらそこで終わりだと思って下さい。
僕のような気持ちを味わってほしくありません。

◆三年目(2009年)

 翌年2009年,三年目にしてやっと受かることができましたが,去年を引きずっているせいか「あと一年早く合格できたな」「去年ならもっと喜べたかな」とか思ってしまうのも本当です。
そんなこと1%くらい思ってしまいますが,やっぱり調査士試験の合格はとんでもなくうれしいです。みなさんにも早く味わってほしいと思います。

◆三年目の勉強

 そろそろ個人的な長々した日記は終わりにして答練や日ごろの勉強でやっていたことを述べます。
と,言っても僕が三年間勉強をやってきて思ったのは「合格できる実力があるなら単純ミスを無くせば絶対合格できる」ということです。
実際三年目は一年目,二年目と比べると時間的に半分くらいしかやっていません。
上記の教訓を実行しただけです。
択一は民法を飛ばして4問目の不動産登記法から説き始めました。民法は何が出るかわからないので,もし分からない問題だった場合に時間を食ってしまうのと,試験開始直後から精神的に不安にならないようにするためです。不動産登記法の中にも一問くらいは「ん?」って思う問がありますが,そういうのも飛ばして,択一でいい流れをつくって書式に移れるようにしました。そして,わかっているのに勘違いしたり,パニックになって頭が真っ白になってしまったりしては合格が遠ざかってしまうだけなので,自分を落ち着かせるためのマインドコントロール(自己暗示)をしました。僕は「民法と調査士法を除いて不動産登記法が16問,16問中13問できれば足きりは多分ない,そこから合格に近づくためのプラスアルファ」くらいの感覚でやるとすごく気が楽でした。実際合格点を取るには16,7問は取らないと厳しいですが,可能性が少しでも感じられる状態にしておかないと書式もダメになるなど,いろんなところに響いてくるので,自分なりの平常心の保ち方を持っていたほうがいいかもしれませんあとは回答していく過程で問題冊子の各肢に○か×をはっきり書いて解答しようとしている番号を間違えないようにしたり,組み合わせの問題なら「アエ」か「アイ」か間違えないようにしたりするなど,わかっているのにマークシートへの記入ミスは絶対にしないように最後に必ず見直しをしました。もし知識的にも経験的にも自信があるなら,もうそこからは,いかにミスをしないかだと思うので,初心に帰って,当たり前のことを当たり前にやることが一番の近道だと思います。
書式は点がとりやすい建物からやって点数を確実に取ってから土地に進みました。
みんなが解答できるところで落とすのはかなり痛いので,建物はパーフェクト解答を目指しました。申請人は誰か,建物の種類は何か,構造は何か図面を作成する建物はどれか,どれが主たる建物になって,どれが附属建物になるのか,問題に出てくる,解答に必要な文言にはすべてマーカーでチェックしました。練習でも方位,地番,隣地の地番まで…当たり前のことを常に当たり前に意識してこなしていくことがパーフェクト回答に一番近づく方法だと思います。
こういうところで単純ミスをすると0.5点に泣くことになります。受験生みんなが悩むような難しい問題を一問多く解くよりも受験生みんながわかっている問題を確実に解くことの方が絶対に大事です。
実際,今年の本試験の土地の座標値は出なかった求点がありますが,「これを解ける人は,ほとんどいない」と思い,焦らず,凹まず,地番区域の名称,方位,地番,隣地の地番,筆界点名,筆界点間距離,境界標の種類,基本三角点の位置,名称,座標値,分筆線(適当),ひげ線…書けるところは確実に書きました。結果,書式合計40点取れて足きりの35点も超えていました。あとは試験委員の人に対して印象が良くなるように,図面を書く時はX座標,Y座標の最大値,最小値からどのくらいの大きさになるのかを計算して,三角定規を置く位置にも気を使い,きれいな図面をしっかり用紙の中心に書けるようにしました。
もちろん時間がなければそんなことは気にしていられませんが,計算点が1つ,二つ解けなくても,問題冊子に乗っている座標からでもある程度の形は書けますから,わざわざ時間ギリギリまで解らない計算をして,焦って図面もグチャグチャになってしまってはいけないので,スラッと解けないような計算のときは,ある程度の図面を先に書いてしまっていいと思います。
ギリギリまで計算しても答えが出ないときは感で思い切って線を引くしかないですが,他の解っている点は確実に書けるはずなので,無駄な減点を無くせますし図面がある程度書けている だけでやはり気持ちに少し余裕ができます。
解るところから確実に解いていくことが基本だと思います。
毎日何時間勉強するとか,本試験まで一日も休まず少しでも勉強するとか,図面を何枚書くとか,過去問を何回繰り返すとか,ストイックに目標をたてればきりがないと思いますが,それをこなしたからといって合格は保障されないし,最終的な目標が合格ならば,気分が乗らないや体調が悪いときは勉強を休めていいと思います。むしろその方が,毎日なんとなく教科書を開くよりもメリハリがつくし,焦ることもできるし,よいと思います。なんとなく択一を解いたり,なんとなく図面を書いてみたりする勉強は意味がないし,漠然とした量や時間を意識するよりも,知識が足りないところ,不安なところを,1日かけてもいいから意識して1つずつ無くしていったほうがよっぽど合格に近づく気がします。
無意識にではなく,意識してこなして,頭の中で独り言ばかり言っている感じで六法と会話してみてください(笑)。電卓や図面作成も毎日やっていればボーっとしていても,出来ますが,いざ本番になるといつも気にもしていなかったことが思い出せなかったり,不安になったりするので,何事も意識して練習したほうがいいと思います。

◆自信

 自分の中で,もう合格ラインにはいる,あとは本番で実力を出せるか,出せないかだと感じてからの勉強時間は試験前に大きなプレッシャーになってやってきます。
「あんなに時間を割いて勉強したんだ」「こんなに勉強したのに落ちたらどうしよう」「わからない問題がでるかな」「もう落ちたくない」やってきた時間が長ければ長いほど,きっとみんな同じようなことを考えると思います。
でもそんなこと考えるのは試験一ヶ月前までで十分で,あとは実力を出すために自信をもつしかないです。根拠のない自信はなんにもなりませんが,振り返れば自分がどれだけやってきたのか,どれだけこの試験を見つめてきたのか,どれだけ必死になれたのか…自分が一番わかっていますよね。どれをとっても胸をはれるなら,本試験の日くらい自分を信用してあげなくちゃ,自分がかわいそうです。合格する実力はあるのだから。
本試験の会場は,緊迫感に包まれています。
みんなそれぞれの思いを胸に,またそれを支えに日々を送っていると思いますが1つ共通することは,みんな合格を目指しています。
みんな受かりたくて必死です。みんなこの日のために勉強してきます。そんなライバルが集まる場所で,いかに自分を保ち,自分を信じ,冷静に判断できるかが勝負だと思います。
いつの日か,「調査士試験に合格してやる」と決めた自分に感謝して,合格した自分を褒めてやってください。

◆最後に

 勉強は孤独で,時になぜこんなことをしているのか考えたこともありました。僕の場合,養う家庭もないし,別の仕事につくことだって簡単だし,諦めてしまっても誰に迷惑をかけるものでもありませんでした。しかし,そこで踏ん張れたのは調査士試験合格を目指したあの日の自分を否定したくなかったからと,調査士になって一人前と認められたかったからです。そして,そう思えるのも家族や恋人,友達,親戚のおじちゃん,おばちゃん,毎日自習室を貸してくれた青山ゼミナール(中学校の塾)の塾長…応援してくれたみんなのおかげだと思っています。心から感謝しています。これから,誰からも認められるような大人に成長していきたいと思っています。本当にありがとうございました。