私の職業は地方公務員でしたが,30歳を過ぎた頃から何か自分でできる仕事をしたいと思い,いろいろと考えていました。そのような中,平成15年に所属していた部署の業務で表示の登記申請書を扱っていて,そこで初めて土地家屋調査士という資格を知りました。
土地や建物の現況を調査し,登記申請書や図面を作成するという業務内容で,現場と事務仕事が半々であること,文系と理系の中間的な資格である点が自分に向いていると思い,受験を決意しました。
しかし,かなり難易度の高い資格であるため,勉強を始めた当時,本当に合格するつもりだったのかと問われると,正直なところ,そうではなかったように思います。自己研さん的な意味
合いや,興味本位な気持ちがあったというのが本当のところだったように思います。
地方在住で家庭もあり,残業や休日出勤が多い中で,受験校に通学することは難しいと思い,通信のビデオ教材で勉強することにしました。
そこで,平成16年秋に「最短合格講座」のビデオ教材を購入し,ほとんど毎朝4時に起きてビデオの講義で学習しました。ビデオは80本以上に渡りましたが,年明けくらいには一通り見終わりました。
しかし,午後の部の免除資格のない私は,ここで調査士の勉強を一旦打ち切り,測量士補の勉強に移ることにしました。 測量士補の基礎もやはりビデオ教材で学習し,その後,過去問を繰り返して解き,答練にも参加することにしました。ところが,4月の人事異動で予想外の配置転換があり,庁内で最も忙しく,時間外勤務の多い部署に異動となってしまいた。毎日
夜遅くまで残業し,休日出勤ばかりでしたので,勉強時間を確保するのが非常に困難な状況に陥ってしまいました。
しかし,測量士補の試験はすべて択一式で,わずかなコマ切れの時間でも学習することができるので,早朝起きてから出勤するまでの時間や,残業を終えて帰宅してからの深夜などを中心に勉強を続けました。また,職場での昼休みには静かな自分の車の中で勉強するなど,とにかく時間を見つけては,常時携帯していた過去問マスターをこまめに解いていき,本試験までに5回繰り返すことができました。そして,仕事に押されながらも,なんとか合格することができました。
測量士補の試験が終わってから再び調査士の勉強に戻りましたが,まとまった時間を確保するのが難しく,択一の勉強をダラダラと続けるだけであまり身が入らずに,今年はとりあえず受験して様子をみて来年合格を目指そうというような気持ちになってしまっていました。
本試験では択一と建物の書式問題をなんとなく記入したという程度のできで,結果は択一の足切りで不合格となってしまいました。当然といえば当然の結果ですが,本試験のレベルの高さに圧倒され,意気消沈したのを覚えています。
翌平成18年の本試験に向けて勉強するつもりだったのですが,17年度の試験が終わってから何も勉強することなく年が明け,正月を過ぎたあたりから再び勉強を始めました。しかし,あいかわらず担当業務が忙しく,自分の気合の足りなさが原因ではありますが,仕事と勉強との両立がまったくできません。
そして4月には再び予想外の人事異動があり,担当する業務は多くなり,意識が勉強から遠のくばかりになりました。さらに不動産登記法の改正,書式問題の形式変更などにもまったく対応できていないまま2回目の本試験を受験し,またもや足切りで不合格となりました。この年の書式問題は,土地,建物ともに非常に難易度が高く,試験会場で愕然としたのを覚えています。「こんな難しい問題は自分に解けるわけがない」と思い,一回目に続き,さらに濃いあきらめモードになってしまいました。
このような敗戦色濃厚な状態でしたが,「仕事を変えたい」という意思だけは強くあり,周囲の反対を押し切り,15年間勤めた地方公務員を平成19年3月に辞めることにしました。
このときはまだ調査士を再受験するつもりではなく,取得済みの宅建を活かして不動産仲介業者に就職するつもりでおり,人を介して就職先を探していました。しかし,退職直前の3月
下旬になっても返事が来ません。そこで焦りを感じて考えた末に,4月当初から始まる調査士の答練に参加し,8月の試験を目指して勉強を再開することに決めました。(後目,就職を頼
んでいた方から連絡があり,受け入れてくれる会社があるというお話しをいただきましたが,調査士受験を理由にお断りをしたので,たいへんなご迷惑をお掛けしてしまいました)。
このようにして4月を迎え,無職となり勉強に専念することになりましたが,学力がほとんど初学者並みなので,基礎の段階から入ることにしました。以前購入した教材の基本書「合格
テキスト」の通読から始め,その後,択一と書式の過去問へと進めていきました。答練の第一回目は,時間がまったく足りず,土地の書式をほとんど理解することもできず,結果はE 判
定で自分の学力の低さを痛感しました。しかし,自分は無職の身であり,この道に進むと決めたからには諦めずにやるしかありません。
とにかく自分に足りない部分を埋め,苦手なところを徹底的に洗い出して克服していくことにしました。
民法を苦手にしている受験生が多く,最初から民法を捨てているという話を耳にしましたが,私はなんとしても合格しなければと思っていたので,全てを網羅して満点を取るつもりで学習
したいと考えました。択一20問,書式2問をどのように学習していくか,計画を立てました。
「択一の不登法は過去問を繰り返し学習すれば点数が取れるようになるであろうし,自分が法学部出身であり,宅建取得のときにも民法を学習しているので,これも問題集を繰り返し学習すれば点数は取れるであろう。調査士法についても過去問+条文の読み込みで取れそうだ。」このようなことを答練の講師の話や,他の受講生などの話から分析することができました。
するとやはりキーになるのは書式問題ということになってきます。一番の苦手は土地の書式問題で,その中でも座標計算が理解できておらず,関数電卓もまったく使いこなせていませんでした。そこで,電卓のマスターを当面の目標にして,専用の教材を購入しました。教材にある例題を繰り返し練習することで,関数電卓の基本操作をマスターすることができ,5月くらいには電卓を使いこなせるようになり,答練も時間内に全問解けるようになっていました。答練の終盤には電卓の操作スピードでは誰にも負けないという自信もつき,苦手を克服し得意なものにしたのです。
次に苦手なのは,平成17年の不動産登記法改正関連の部分で,言葉の意味すら解らないことが多かったのですが,これは先の教材に追随して送られてきていた「改正不動産登記法講座」のビデオ教材を一通り学習して理解しました。
このようにして,基本書+過去問+苦手分野の克服の勉強を1日に6〜8時間続けることで,徐々に学力がアップし,6月に入るころには答練の評価もC 判定くらいになっていました。
教材については,当初使っていたものが古かったので,「択一過去問マスター」,「書式合格演習ノート」,「合格ノート」,「本試験問題と詳細解説」を順次購入しました。
6月までは「択一過去問マスター」と「書式合格演習ノート」を中心に,一日に択一を100問,書式を3〜5問解くようにしました。また,目標はあくまで「満点」とし,民法についても「民法パーフェクトマスター講座」のビデオで基本を再確認し,宅建の問題集を5回繰り返しました。調査士法についても,条文を3回繰り返して読みました。結局,「択一過去問マスター」も7回,「書式合格演習ノート」も3回繰り返すことができ,答練の最終回にやっとA判定に入り,いわゆる「合格レベル」に達する
ことができました。また,書式を解くときに必ず時間を計るなどスピードにもこだわって勉強を続けたので,答練ではいつも見直しができるほどに早くなっていました。
直前期と言われる答練最終回から本試験までのラスト1か月に入ると,まず答練の問題を1日に2回分ずつ解き,これまでの復習をしました。また,4月からずっと自宅で学習していま
したが,公共図書館や大学図書館などを利用して少しでも本試験に近い環境で学習しました。
そして,この時期までわざと手をつけずにいた「本試験問題と詳細解説」に入りました。
手をつけなかった理由は,直前に本試験モードに切り替えるためです。この教材には10年分の本試験問題が収録されており,これを1日に3年分,2週間にわたり繰り返しました。択一はほぼ満点をとることができるようになっており,書式も95%くらいの正解率で,時間についても平均で30分くらいは余るようになりました。
過去の本試験問題を繰り返しているうちに,「本試験が求めているものは何か」ということが自分なりに見えてきて,答練と本試験の違いが解ってきました。本試験は受験者の得点をバラけさせるために,随所に大小さまざまなトラップが仕掛けてあり,論点も合否を左右するような大胆な問いかけで設定されているように思います。緊張感のある本試験会場での判断力が求められていると感じたので,不安な気持ちもありましたが,冷静さを失わずに,今年も多くの罠を仕掛けてくるだろうという覚悟を持って本試験に臨むことにしました。
本試験は東京会場でしたが,不慮の事故を避けるために前日から東京入りし,徒歩で会場の早稲田大学まで行けるホテルに宿泊しました。
最後までできるだけのことをしょうと思い,ホテルにこもって,まだ解いていなかった不動産法律セミナーに掲載されている書式の参考問題のほか,答練の難解な問題を再度解きました。
試験当日,会場に入って席に座ったときにはとても緊張しましたが,やるべきことは全てやったんだと言い聞かせて,気持ちを落ち着かせるようにしたので,試験中は集中することがで
きました。
教室内の机は幅が非常に狭く,隣の受験生のものと自分のものが机の真ん中でごちゃごちゃになってしまったのが印象に残っています。また,トイレの数が少ないため,廊下まで長蛇の列ができていましたので,当日の水分摂取は控えめにしたほうがよいと思いました。
肝心の試験ですが,開始から35分で択一を済ませ,建物の書式も30分くらいで終わり,土地の書式に入るときには,残り時間が1時間20分くらいあったので,ここでも落ち着いていることができました。土地の問題の中に,これまでなかったパターンの添付書類の内容を記載する個所があって悩みましたが,知っている限りのことを書きました。また,座標値や角度は昨年までのように,ピタリと来る数字にならなかったので不安になりましたが,3回計算し直しても同じ数字だったので,次に進んで面積計算に入りました。求点の数が少なく,土地の形状も比較的単純なものだったので,それほど時間がかからず求積・作図ができました。
後で正解を確認したら,数字は全て正解していました。また,今回の土地問題における最大のトラップは,隣地所有者が使用している部分の扱いをどうするのかという点だったと思いま
すが,これも少し考えて答えを導くことができました。そして,一通り全ての問題を解き終わっても30分近く残っていたので,書式の見直しを行い,さらに時間があったので択一の見直し
もすることができ,この見直しで択一の回答を2問変更し,これが2問とも正解しました。かなり時間的に余裕を持って回答することができたので,試験が終わったときには実力の120%
を出しきったという気持ちで達成感に包まれていました。
試験当日のうちに解答速報が出され,後日郵送でも送られてきましたが,自己採点は行わず,発表まで待つことにしました。そして,発表日の深夜,恐る恐る法務省のホームページを覗くと自分のものらしい受験番号がありました。というのも,手元に受験票を用意しておらず,しかも試験から2か月以上経っていて記憶も曖昧になってしまったので,ホームページ上の番号が自分のものと断定できなかったのです。片付けてしまった倉庫の中で,たくさんの教材などの中からなんとか受験票を探し出し,番号を確認することができました。
4月当初はE 判定でどうなることかと思っていましたが,苦手を克服してあきらめずに取り組んできたので,どうにか合格することができました。答練の講師もおっしゃっていましたが,合格への条件は「良い教材」「良い講師」「自分のモチベーション」の3つです。
3つ目は自分次第ですが,はじめの2つについては東京法経学院にすべてそろっていて,しかも実績は抜群だと思います。 また,教材購入後に法改正などがあった場合に,追随してフォローアップの資料を送ってくれるなど,アフターケアも万全でした。筆記試験合格後も口述試験用の教材を無料で送っていただきましたが,試験官の質問内容がこの教材に収録されているとおりのものばかりだったので,これには驚きました。良い教材をそろえて,あきらめないで学習すれば誰でも合格できると思います。最初は誰でも解らないことばかりで不安を感じると思いますが,それは受験生の皆が体験し,通ってきた道です。また,私もそうですが,「自分は記憶力が悪い」と思いがちですが,これもほとんどの人が感じることだと思います。実際に講師も,先に合格して開業している先達に聞いても,過去問を5回繰り返しても同じところで間違えると口をそろえて言っています。人の記憶力はその程度だと思いますし,大差はないと思います。これを克服するのは「何度も繰り返すこと」に尽きると思います。
モチベーションの低下も当たり前のようにあることですが,これについては人それぞれのやり方で克服してきたことだと思いますが,私の場合は一冊の本をいつも近くに置いておきました。それは,弁護士である大平光代さんの著書「だからあなたも生きぬいて」です。宅建,司法書士,司法試験という資格試験の合格体験記が記されており,極妻から弁護士になるまでの,幾度となく襲いかかる挫折とそれに立ち向かう不屈の精神は,資格試験に挑戦する者にとって大変感銘を受ける内容です。私はモチベーションが下がったときにはこの本を読み返して再びやる気を出して勉強していました。
このように,何かしら自分でやる気の出る方法を持つのが良いと思います。そうすれば継続してあきらめずに学習することができると思います。あきらめずにコツコツと,継続して学習し合格を勝ち取ってください。必ずできます。