合格体験記「独学で取り組む方法について」|土地家屋調査士試験|東京法経学院





土地家屋調査士 合格体験記

「独学で取り組む方法について」

体験記

 体験記

石田安秀 さん(静岡県) 平成22年度合格

◆はじめに

 3年間の努力が実を結び,平成22年度の土地家屋調査士試験に合格することができました。この試験の合格者の多くは,資格予備校や通信添削を利用して,効率的な学習プログラムによる受験対策を行っていることと思います。ここでは,独学で受験対策を行った場合,どのようなプロセスを経て合格に至るのか,これまでの自分の足跡をトレースしてみたいと思います。これから独学で,この資格を目指す方の参考になれば幸いです。

◆独学を選択

 学習のスタイルとして,独学で取り組むことは最初から決めていました。地方在住であり,資格予備校への通学は無理であること。また,通信添削は自分の性格上,長続きしそうもないこと。そして,コスト面の問題もありました。
参考書も1冊数千円もするため,自分にとって決して安い買い物ではなかったからです。
短期間で効率的に合格するには,資格予備校を活用した方がよいのは確実です。開業資金等の目途が既にたっていて,合格後すぐに開業できる方は,コストをかけても短期取得を目指した方がよいと思います。しかし,浪人覚悟で,泥臭い努力の積み重ねでやり抜くことは,これはこれで別の充実感が得られるのも事実でしょう。学習のスタイルの選択については,受験者一人一人の事情があるので,一概にどちらがよいとは言えません。
独学の場合,学習のペースメーカーは自分自身です。何から手をつければいいのか分からない中で,とりあえず購入したばかりの参考書を1ページ目から順に読み始めました。もちろん,さっぱり解かりません。とりあえず,数か月かけて一通り読み終えましたが,「土地の地目」と「建物の種類」くらいしか頭に残っていませんでした。特に区分建物や敷地権のくだりは,全く理解できず,読んでいて先行きが不安になったのを覚えています。
この頃,初めて問題集※2を購入しました。択一問題はともかく,書式問題には閉口しました。更にこの時期,三角定規と関数電卓が必要なことを知り,通信販売で購入しました。使い方は,定規の取扱説明書にある方法で,繰り返し何度も練習しました。とにかく最初の1年はこんな調子で,ほとんど手探りの状態でした。

◆受験スケジュールと学習方法

 以下は,合格した年度の学習内容についての再現です。
受験のための準備期間は,11月1日から筆記試験の前日までの約10か月間。内容は,書式問題を1日1問,土地・建物・区分建物の順番で,毎日1問ずつ解いていきました。練習用紙としてA4判のノートを使用。計10冊分の演習量となりました。また,時間に余裕があるときは,択一問題にも当たりました。使用した問題集は後述のとおりですが,10か月の間に2回通り演習しました。
択一問題は,択一問題集※3で間違えた問題にチェックを入れて付箋紙を貼る。科目毎に正解率を計算して,これを目次に書き込む。こうすることで,自分がどの科目が苦手なのか,一目瞭然となります。私の場合,正解率が80%を切る科目を重点的に学習するよう心掛けました。
この繰り返しで,少なくとも足切りラインはクリアできると思います。
記述式問題も同様,間違えた問題は付箋紙を貼り,2回目にノーヒントで解けたら付箋を外す。できなければ,付箋紙はそのまま。この繰り返しで,最後まで付箋紙が残ったものが,補強すべき科目であることが分かります。独学だと,どうしてもひとりよがりの学習法に陥り,自分の力量を客観的に評価できなくなりがちです。この点,自分も例外ではなかったのですが,それを自覚した上で,少しでも自分の実力を把握しておくべきでしょう。
また独学の場合でも,自分の力量について相対的なポジションを知っておく必要があります。
私の場合,年2回行われる資格予備校の模擬試験を受験しました(結局,一度も「A判定」はもらえませんでしたが…)。
さて,10か月にわたる長い学習期間のなかで,特に重要なのは7月からの1か月間だと思います。この時期にやったことは,択一問題集の反復演習,不動産登記法改正後の本試験問題の演習です。特に過去の本試験問題は,合格のためのヒントの宝庫だと思います。

◆オンとオフの切り替え

 この資格を目指す人の多くは,仕事や家庭生活と,受験勉強の両立に苦労されているのではないかと思います。私の場合,帰宅時間は遅い時は0時過ぎで,それから夕食,入浴,1時半に就寝するまでの約1時間に,書式問題を1問または択一問題を10問解くようにしました。このほか,通勤電車の中,昼休み,仕事上の移動時間など,細切れの時間も勉強に当てました。基本書の中で核となる部分を縮小コピーして,常に持ち歩いていました。プライベートでも,床屋や歯医者の待ち時間,子供の塾の送り迎えの待ち時間,ほんのちょっとした時間も,勉強に充てました。
こう書いていると,仕事と寝ている時間以外は全て勉強に充てていたように聞こえますが,実際はそうでもありません。勉強も続ければ疲れてくるので,娯楽に気持ちが向かったものです。また,筆記試験は8月下旬に行われるので,子供達の夏休みとバッティングします。さすがに直前の1か月間は,週末を図書館で勉強することが多かったのですが,それでも『受験のために,全てを犠牲にするのは間違い』との考えから,泊まりで家族旅行に行き,土曜日が図書館なら日曜日は朝から川遊びや海に出かけました。今思えば,これが良い気分転換になっていたと思います。休日の全てを勉強に充てていたら,気分的に滅入っていたでしょう。適度な息抜きが必要だし,オンとオフの切り替えが大事だと思います。家族の協力を得られたことが,合格の一番の要因かもしれません。

◆参考書

 最後に,受験のために購入した参考書やツールについて,挙げておきます。これらを何度も繰り返し読み,解き,最大限に活用しました。
自分が選んだものは,最後まで信じましょう。
そして投資した以上,元は取りましょう。そういう気持ちで挑めば,結果は自ずとついてくると思います。

※1「調査士新版合格ノートT 不動産登記法編」東京法経学院
※2「調査士本試験問題と詳細解説」東京法経学院
※3「調査士新合格データベース」東京法経学院