合格体験記「私の合格学習法」|土地家屋調査士試験|東京法経学院





土地家屋調査士 合格体験記

「私の合格学習法」

体験記

吉富靖樹 さん

 

 


 体験記

吉富靖樹 さん(大阪府) 平成21年度合格

◆はじめに

 私は,土地家屋調査士試験に,3回目のチャレンジにより合格いたしました。これまでの経験をぜひこれから学習に臨まれる方々に伝達したく,執筆することといたしました。ちなみに私は,昭和39年生まれ今年(平成21年)で45歳と,受験者層からすれば高齢です。製造業の会社に勤めており管理職,調査士の世界とは全く無縁の環境に棲んでおります。ですから,すでに補助者などの業務をこなされて実務に精通されている方に対しては,START の時点からハンデキャップを背負っていたことになります。

◆1年目(平成19年度)

 某予備校の基礎講座で学習,右も左もわからぬままの学習であり,とにかく頻出の論点だけを押さえるのが精一杯でした。今思うと,表面つらのみの暗記の連続であって,全く頭に定着していなかったように思います。例えば,建物書式に関しては,原因日付を覚えこむことで精一杯でした。平成19年度は書式が平易であったのですが,択一が14問しか取れず結果は3点差で不合格。択一の重要性を痛感した年でした。

◆2年目(平成20年度)

 1年目の本試験直前講座東京法経を受講したこと,前記某予備校の奇抜な書式問題に違和感を感じていたこと,などから,2年目については,秋の講座から東京法経を選択し受講,そしてベストセレクト実戦とひととおりの答練を受講いたしました。
この年は,基本ができていないことを痛感する年であって,毎回の答練では,知らない論点に振り回される日々が続き,成績も安定しないことが多かったように思います。択一に関しては,後でご紹介するような独自のノートを作成してこつこつと覚えていきました。私は,理系ですので,土地に代表される書式計算問題には,絶対の自信を持っております。そのため,勉強時間の配分としては,計算問題を極力減らし,土地については登記目的を把握すること,建物については原因日付が出せること,これらを中心に学習してきました。
平成20年度の本試験は,土地については誤差補正,建物については区分と,普段ならなんでもない問題であったのですが,本番の緊張感のあまり,土地は誤差補正ミスによる計算間違い,建物については寸法の読み誤り(0.5mを0.6mと読んだ)による計算ミス,と散々な試験結果となってしまいました。択一については,答練の繰り返しによりそこそこの自信は持っていたのですが,応用問題に振り回され結果的には14問しかできず,書式の不振と併せて,非常に落ち込んだ年でありました。

◆3年目(平成21年度)

 結果的に私は3年目にして合格を果たしたわけであります。本試験では択一は17問,書式は建物25点,土地は16点,総合点は83.5点でありました。3年目の答練は,ひととおりの論点に接してからの受講であったため,成績は大崩れすることなく,悪くてもA 判定は維持することができました。
以下,これまでの不合格経験を糧にして臨んだ今年の合格学習法をご紹介いたします。

◆私の合格学習法

  1. @自分だけのノートを作成する。
    受験生の方でしたら誰しも自分なりのノートを持っていると思います。私も当初は学習する順にテキストを切り貼りしたノートを作成しておりました。ただ,どんどん量が増えるとともにどこに書いていたかの検索性が非常に悪くなっていき,見つからないことで大きなストレスを感じることもありました。さらには,一度完結してしまったノートに追加の論点を記載するには非常に見苦しくなるし,論点を積み重ねるうちにノートが重くなるのも,嫌気が差すことにつながりました。
    2年目には,モバイルパソコンを購入し,WORD やEXCEL,PDF ファイルを駆使した電子ノートに全面的に替えることといたしました。2年目,3年目の2年間を経た今,非常に貴重な電子ノートに仕上がっている点が私の自負であります。ではこれらの電子ノートの作成方法を以下にお知らせいたします。
    WORD ファイルについては,必要な論点1つをテーマに絞って作成します。自分のためのノートですので,平易な論点は不要で,例えば答練でひっかかった論点としました。まず法文を最初に載せます。例えば法定地上権についてならば民法第388条。次に派生する論点を集約した表や箇条書きを掲載します。法定地上権でしたら,成立要件です。そして,問題と解答を載せる。問題については,間違えた答練過去問から抜粋します。入力が非常に面倒かもしれませんが,不登法や民法などあらかたの法文はインターネットから取り出せますし,PDF から文章を取り出すこともできますので,これらを活用し入力の手間を減らすことができます。このようにして,根拠法文と答練問題を論点で結びつけることができます。
    EXCEL ファイルについては,縦横の表でまとめる形式とします。例えば,建物認定で認定するもの認定しないもの,床面積に参入するものしないもの,失効の申出と有効証明の請求の比較表,などです。表で対比することで,記憶の定着率を高めることができます。
    PDF ファイルについては,解説書などの重要ポイントをPDF 化したものです。図表など自ら作成しにくいものについては,PDF 化しておきます。各ファイルについては,それなりのファイル名を付けておいて,各々を総則,物権,債権,親族,土地建物,筆界特定・・・などのフォルダに綴じこんでおけば,非常に検索性が良く,さらに,改訂も容易です。本試験直前期には,答練で間違えた問題とその解説を全てPDF 化し,順に再検討することも実行しました。これにより,記憶の抜けを少しでも減らすことができたと思います。
    さらには,法文そのままをインターネットから取り出しPDF 化しておりました。これにより,インターネット環境にない場所,例えば外出先などでも法文の原文を重い調査士六法なしに確認することができました。この方法のもう一つの大きなメリットとしては,小型のUSBメモリーにコピーしておけば,例えば会社での昼休みや外出先など,パソコンは必要ですが,内容を確認することができる点です。つまり,重い書類や六法なしに勉強(復習)できるわけです。この方法が一番,ということは申しませんが,私なりの勉強方法のご紹介でした。
  2. A 民法については,司法書士試験の過去問論点を参考にする。
    調査士試験の民法については,3問出題になってからまだ年数も浅く,調査士試験としては毎年のように新しい論点に振り回されている感があります。でも,これらは,同じ法務省管轄である司法書士試験では語りつくされた論点であることには間違いありません。ですから,不登法が一段落してきたら,司法書士試験の過去問を少しかじってみることをおすすめします。
    民法は2問は獲得したいところですし,司法書士試験合格者も調査士試験を受験している背景からの私の考えです。もっとも,総則,物権,親族しか学習していませんでしたが,出題論点(つまり出題者が何を問うているのか)がわかるようになるだけでも,他の受講生より優位に立つことができ,この効果はあると思います。
  3. B 地目認定,建物認定は絶対に入手する。
    この両本からの出題は必須であって,いやらしいことに重箱の隅から出題されます。また個数問題であり,うろ覚えでは不正解になってしまい,こんなことで他の受験生に引けを取っているようでは,絶対に合格はありえません。ですから,少し高額ではありますが,必ず手元に置かれて,忘れない程度に読みこなしておくことが必要です。
  4. C 書式については老眼や悪条件を受け入れる。
    2年目では,試験会場の照明の暗さも悪影響して,図面寸法の読み間違い,という痛恨のミスをやってしまいました。老眼が進み,また暗い場所での視力の衰えと,非常に逆風の中での学習が3年目でありました。
    振り返ってみますと,2年目までは,自習や答練の時は明るい場所を選び相席を避けるなど,少しでも自分に有利な場所で答練を受講していたように思います。そこで3年目については,少しでも不利な場所に身を置くようにしました。
    私はコンタクト着用者なのですが,さすがに小さい字が読めず眼鏡に変えましたし,答練書式用に虫眼鏡を持参するようにしました。相席を嫌がらずにするようにし,受験環境面にも強くなったように思います。
  5. D 答練では,制限時間をきっちり守って粘りぬく習慣をつける。
    答練では,制限時間を過ぎても問題を解いている受講生をよく見かけますが,それで良い点を取っても全く無意味です。それよりも,制限時間のルールの範囲で最大限の結果を残すことを考えるようにしました。
    例えば,土地の座標が出せない場合,座標値を0.1mm 刻みで振って,必要とされる地積に合うか力ずくで解く(しかも制限時間で),こんな取り組みをするようにいたしました。これにより,今年の答練では計算では座標値を出せない問題であっても,全て座標値までたどりつくことができました。今年の本試験の土地書式は,この力ずく手法で制限時間内にたどり着く事ができないほどの難問でした。
    ただ,私は,それなりに座標値が大狂いせず,“図面は正解”の水準にまで持っていくことができたと思います。全ての座標値を出せた受験生がほとんどいないようですので,結果的には全受験生の中では上位にもっていけたことになります。
  6. E 答練でのポジション確認
    答練での自分のポジション確認,これは常に意識してほしいと思います。特に書式などヤマが当たったときはかなり上位につけ,調子が悪いときは下位になる。これは誰しもあることですが,必要なことは,調子の悪いときやヤマが外れたときにもA判定以上のポジションにいられるか,ということだと思います。本試験の切羽詰まった緊張感では,実力の8割が出せて良い方です。後から,こんな簡単な問題が何故?と数多くの不合格者が感じ取っていることでしょう。つまり,調子が悪くスムーズに解答できないときでも,上位にいられるように,とどのつまりは前章の粘りを発揮してほしいと思います。
  7. F 本試験当日は暑い真夏です。体調管理を最優先に。
    試験直前は,冷房を効かせすぎない,冷たいものを摂取しすぎない,徹夜などの体力消耗を回避する,こんな点は基本として,私は,眠気対策を中心に充分に配慮いたしました。今年の本試験から午後の試験時間となりましたが,この午後の13時からは眠気との戦いの魔の時間帯でもあります。すなわち,眠気対策も視野にいれておかないと,集中力に不利に働きかねません。私の対策としては,昼御飯は腹一杯にしない,もっと言うと空腹で臨んでもいいくらい。
    さらには覚醒効果のある栄養ドリンク剤を一杯ひっかける。これらが功を奏し,本試験中は集中力を維持することができました。それと,普段から昼型の勉強をすることが肝要だと思います。昼は仕事の方も多いと思いますが,昼に結果を出せるような根をつめた仕事をやるように持っていけば勉強をせずとも良い昼間中心のバイオリズムが体に染み付きます。

◆最後に

 思うに,合否の分かれ目はどこにあるのか,ということを考え続けた3年間でありました。一緒に学習を開始した知り合いは2年目にして合格,今でもそのときの苦渋は忘れられません。
合格というのは,最後まで集中力を発揮して抜け目なく考え抜く,人より考え抜いた人が合格に近づくということなのだと,本試験に合格してようやく答えを出せたような気がします。
今年の本試験で土地書式の座標が全部出せた人は,出せていない私が45番に位置していることから類推するに,5,000人弱の受験生の中でおそらく10人前後しかいないでしょう。そういう試験でも土地書式の点数については,ほとんどの受験生が歴然と0点から18点の範囲の得点にばらついています。難解だからといって先に諦めた人は不合格,この18点までの点数範囲のかなり上の方に合否の分かれ目があったはずです。これから受験される方は,1点でも多く得点できるよう,日ごろの東京法経答練で普段よりも粘る訓練を積み上げてください。最後に,多くの合格者はそれぞれのポリシーを持って合格されています。私の体験記はそのうちの1つにすぎません,皆さんが自分なりの合格体験記をこれから執筆されるよう応援しています。