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職業を持ちながら土地家屋調査士を目指すことは中々大変なことであり,私の場合勉強をスタートさせたのは,本音を語れば退職後の仕事として土地家屋調査士を目指そうと決意したのがその動機であった。
平日に本科に通学することなどもちろん出来ないので,基本書を頼りに独学でスタートさせたが,それも50歳を過ぎた頃であった。国家試験にチャレンジするのに年齢は関係ない。やる気と実力があり,受験手数料を払えば誰にでも受験できる。すばらしい制度ではないか。基本書を通読,精読,熟読と三段階に読み進む。精読する頃には必ず条文,準則,細則を確認する。
こうして基本的知識は独学でも習得できる。
はじめは通信での答練を受けたが,答練はやはり本試験と同じ時間,同じ条件で受験すべきである。幸い仕事をしながらでも,答練は土日のいずれかの日を選択して受験することができる。私の場合も片道二時間の電車通学であったが,通信では決して得られないものが通学にはあると断言できる。通学を躊躇ったために失われた時間の重大さに初めて気づかされた。
私の体験からすれば,一度でも答練の成績で良い結果がでるようになると,更にやる気が鼓舞されるものである。答練をガイド役にして自己の実力を高めていくことが出来る。答練の成績は本試験に直結している。すべてA 判定を目指すべきであり,安定的にA 判定をとることが出来れば自ずから結果がついてくると断言出来る。本試験は答練の延長上にあると考え,答練で全力を出しきることに専念するのが王道であることと確信した。
受験期間が数年にも及ぶと本当に合格することができるのだろうか,不安にかられ受験を続けるかどうかにだれもが悩むと思う。再受験を継続するか,それとも諦めるのか。私が下した決断は,答練を最終目的の道しるべであると考え,答練の成績・結果が一昨年より昨年,昨年よりも今年と安定的に上向いているかどうかであった。そうであれば心配はいらない。受験を継続することに何の不安も感じなかった。やがて先の見えないトンネルを抜け出すことができると確信することができたからである。
本試験で与えられる条件はすべて同じである。150分の試験時間を効率的に使用することは絶対に必要であり,時間が足らなかったから出来なかったとか,もう10分あれば出来ていたとかいうのは理由にならない。
具体的には択一で45分,建物書式で50分,土地書式で55分というように,すべてやり切るような時間配分をたてるべきであると思う。見直すための時間はたぶんないと思う。本試験で完璧を目指すことは必要だが,完璧に問題が解けなかったとしても,合格できる道を捜すべきである。それは例えて言うならば本年の土地問題について,座標値が一部分,分からなくても地積測量図のかなりの部分を書くことができるし,一点,二点と点数を稼ぐことが出来たはずである。
完璧を目指す前に合格する方法をイメージすべきである。土地の問題で解法が分からずに,20分,30分とロスしたら,それだけで本年のチャレンジは終わってしまう。まずは分からない部分は後回しでもよいから,点数を稼げる部分から仕上げるべきである。本年の問題で言えば,土地の問題に比べて建物の問題が比較的容易であったと誰もが思っただろう。でも平易であればこそミスは絶対に許されない。登記の目的,添付書類,申請人,それと建物の種類・構造・床面積・原因日付そして建物図面と各階平面図を完全に慎重に仕上げることが必要である。何よりも他の誰もが出来ることは絶対落とさない。極論すればみんなが出来ないところは出来なくてもよいということである。
合格することは自分との戦いとよく言われるが,まさに合格するというのは択一で16問以上正答するということそして土地・建物書式で7割以上の点数をとることのみである。そのことが顕著に現れたのが本年の試験であったように思う。
如何に本人の知識が深く,計算能力が高くても試験本番でその実力を出し切れずに失敗をする人は多いと思う。私自身もそんな中の一人である。知識の量を多くし法令に熟知することは勉強に打ち込み計算問題を解いているうちに自然と身につくかもしれない。しかし普段は何でもない問題でも異常な緊張状態では100%の持てる力を発揮できないのが当然だろう。況やミスの許されない本番では120%の力を出すことは不可能であろう。そこで私は試験本番で決してパニックに陥らない術はないかと色々試行錯誤し,例えば座禅に取り組んでみたり,写経にも取り組んだりもした。でも問題の解決には至らなかった。そこで私は合格へのシナリオを完成させるためには,漫然と答案練習会に臨んでもだめだと思い,答案練習会を通して合格するために,答案練習会の結果を細かく分析することから始めた。
私の場合という前提で話をしますが,凡その試験で初めて出くわす問題で解けなかったという場合は全体の5%,言い換えれば95%が過去問であり,ケアレスミスがなかったら解けていたという場合が5%つまり普通ならば90%の問題を解くことができるという結論に達した。
実際に凡その答練でそのような結果が出ていた。そうすれば本試験では,実力の90%の力を出せば,つまり81%の解答をすることが出来て,80%の合格ラインに達することが出来ると考えた。
本試験で90%の力を出し切ることが出来るようになるために,試験本番で周囲が気になったり,分からない問題に出くわしてもパニック陥ったりしないためにはどうすればよいか思案していた時,何回かマクドナルドへ通って,そこでコーヒーを飲みながら復習をしたりしているうちに,店内の状況が試験本番の雰囲気によく似ていることに気がついた。大きなボリュームのBGM,騒がしい店内,そんな中で時間を計り答練の問題を解くことを薦めます。
騒がしい店内で問題を解いているうちに,また何回かそれを繰り返しているうちに,周囲のことが全く気にならない自分に気づくだろう。
それは試験会揚の雰囲気とよく似ている。我々は本試験のような雰囲気のところで答練を受けていなかったから周囲が気になってペースを乱していたのである。