「短期間で土地家屋調査士と測量士補とのダブル受講・ダブル合格が可能です。」パンフレットのこの言葉を信じて「1回で必ず合格するんだ」という事を疑わず、強い気持ちで学習を続けました。結果、願いは叶いました。測量について右も左も分からない全くの初心者の私がどのように学習を進め合格まで辿り着いたのか、1発合格を目指している17年本科受講生の方々の少しでもお役に立てたらと思い体験記を書かせて頂きました。
私は9月開講の日曜クラスでしたがそれまでに勤めていた会社を退社して受験に臨む環境を作りました。勤めていた会社では役員を務めており不自由はありませんでしたが日々の充実感はなく、20年後の自分を想像したときに不安がよぎりました。手に職があるわけではなく、資格を持っているわけでもありません。調査士試験を志したのは、どんな資格なのかを知っていたからではなく、比較的難関の国家資格でありながら短期間で合格可能性があるということを知ったからです。「この時の私は短期間= 1回で合格と考えていました。」合格した後の事はその時に考える。まずは資格を取得することだけに専念する。そうとは言え、1回で受かるためには相応の学習時間を確保する必要があることは予想できたので、無職になり、貯金を崩しながら生活することで受験勉強に専念せざるを得ない状態にしました。
私は講義とは関係なく、どんどん予習を進めました。一日のスケジュールは、午前は土地、午後は建物、夜は民法というように起きている時間のほとんどは学習時間に費やしました。まずはテキストで予習をしてすぐさま、択一の過去問に取り組みました。当然、全く解けませんが、本試験においてどのような問われ方をしているのかを早くから知るには有効なことだと思いました。最初は書いている内容の3割も理解出来ていなかったと思います。「理解は後付け」と内堀先生もおっしゃっていたので、分からない所は分からないままにしておき、講義の時に内堀先生に必ず質問するようにしました。質問の際、先生は正確な法令用語を使い回答してくれます。正直、回答を頂いた時に理解できていないことが多くありましたが、自分が学習を積み上げていくとある日、突然分かる時があります。「あの時、先生が言った事はこういう事だったのか」と。自分の学習の方向性が間違ってなかったと思える瞬間です。そして正しい法令用語は筆記試験の後の口述試験にも多いに役に立ちます。講義のあった日は講義の復習のみをしました。講義は「自分の予習」の復習になり、自分の誤った理解を気付かせてくれました。自宅での講義の復習は授業の板書ノートとテキストを並べてしました。内堀先生の講義は非常に分かり易く内容の理解を深めてくれました。何を書いているのか分からなかった六法の条文が、復習の後には読めるようになっていました。内堀先生が「答練が始まるまでに過去問を終わらせておくように」とおっしゃっていたので科目別に優先度を設け、学習の進め方を決めました。土地家屋調査士法は暗記科目だと考えて、1月から学習を始めました。
民法は直前期にはあまり時間を割けないと考えて、11月までにテキスト・過去問を終え、司法試験・司法書士試験の過去問にも取り組み何度も解き直しました。六法で条文と判旨を何度も読み込み、条文はほとんど暗記しました。
不動産登記法については、午前中に書式(土地・建物・区分建物)を午後は択一の過去問を最終的に本試験までに10回は解き直しました。ただ単純に繰り返していても学力は向上しないので、問題の取捨選択やテーマを決めました。例えば択一問題だと1問何秒で解けるか、また問題文を隠して選択肢の正誤の判断をする、など。1問解くごとに解説を読んで終わりにすることなく、六法で条文を確認して条文での言い回しを覚えることに努めました。本試験問題は六法に基づいて作られると内堀先生がおっしゃっていたからです。
2月から答練が始まりました。それまでに過去問は2〜3回は解き、多少の自信はありました。反面、散々な成績だったとしてもこの時期ならまだ学習方針の修正は効くとも思っていました。1回目の答練の結果はAランクでしたが、土地の書式問題は2点。設問の意図が全く理解できませんでした。土地の書式問題は筆界点の座標値を求める単なる計算問題だと勘違いしていました。そこで以後は法律の問題であることを念頭に置き、問題文の趣旨を理解することに気を付けました。「登記の目的は?申請人は?地目は?」答練が始まってから作図の仕方にも工夫をしました。ボールペン・シャーペンも何種類か試して使い易いものを選びました。特にボールペンはにじみにくく、比較的すぐに乾くものを探しました。また作図の際、ストップウォッチを用意して時間を意識しながら正確に描く訓練を繰り返しました。さらに下書きをボールペンで、なぞる際、私は縦線は横線に比べて描きづらかったのと定規の向きを変えるよりも答案用紙の向きを変える方が図面作成がスムーズに出来たので、答案用紙の向きを変えて全て横線で描く訓練もしました。本試験の机は学院の机の幅の4分の3ほどしかなく狭かったですが、本番もこの方法で作図しました。
求積についてはパターンが限られているので、過去問・答練の問題を何度も繰り返し解き、条件反射で電卓をたたけるようにしました。パブロフの犬にならなくては本試験においては時聞が足りません。
申請書の作成には「申請書マニュアル」を活用しました。私は紙に書くという作業は行わずに声に出して覚えました。求積や作図の単純作業で疲れていた時の気分転換・頭の体操に使っていました。土地・建物とも登記の目的が分かれば、添付情報も概ね決まります。従って特に注意をしたのは登記原因でした。本試験で後悔する減点は避けたかったので、冠記番号まで声を出して覚えました。問題を解く順番も工夫しました。当初は択一・建物・土地の順番で、建物で高得点をとり、土地のミスをカバーしようと考えていました。それを択一・土地・建物に変更しました。建物の図面作成に時間がかかり、焦って土地の座標値の計算ミスが続いていたので、択一の後、土地に取り組むことで時間的・気持ち的に余裕が生まれ、ミスが減りました。結果、建物の得点は少し悪くなりましたが、全体では良くなりました。本試験においてもこの順番で解き、結果、バランス良く得点出来ました。答練の回数はベストセレクト答練が7回、直前答練が12回、公開模試が2回の計21回ありました。このうちAランクが18回、Bランクが3回でした。それでも全く安心などしませんでした。答練はあくまで答案練習会であり、試してみたい事を試す場として利用しました。先述したように問題の解く順番の変更や作図方法です。加えて状況の判断力を養う場です。見慣れた問題が本試験で出る可能性は極めて低いです。その中で自分が本試験においていかに平常心を保って臨めるか、その予行演習です。
直前期には基本テキストの再読み込みをしました。難易度の高い問題や論点に目を向けがちで、基本的事項を放置しがちになっていたからです。求積については公式の再確認ができる程度の問題をピックアップし、敢えて難しい問題は解きませんでした。申請書作成も出題可能性が低いと思われるもの、特殊なものは除外しました。ただ、建物の作図だけは線の細かい複雑な問題を選んで繰り返し解きました。少し不安がありました。というのも、答練の最後の方は単純な図面が多かったからです。
本試験当日、択一に38分かかりました。いつものペースより3〜5分オーバーです。全く分からなかった問題が1問、絞り切れなかった問題が2問。次に土地と建物の問題に少し目を通して土地から解くことに決めました。建物は予想通り非区分建物だったのですが、平易に見えて難しいかもしれない。一方、土地は一見見慣れない印象だったので時間に押されるとミスする可能性があると判断しました。土地は登記の目的だけは間違えない様に問題を精読して、60分かかりましたが、解き終わることが出来ました。一方、建物ですが、個人的には登記の目的・申請書は単純でしたが作図に戸惑ってしまったため、去年までは書く必要のなかった床面積の求積方法を時間内に書くことができませんでした。持てる力を全て出し切ったので悔いはありませんでした。ただ、受かったと思うことは出来ませんでした。簡単だったという声を後から聞いたからです。
合格発表はパソコンで確認しました。合格している自信はなかったので、まず最低合格点を確認しました。「74.5点」100%落ちたと思いました。意を決して合格者番号を確認、ありませんでした。2ページ目があることに気づき、スクロールすると「あった!」と思わず叫びました。受験票とパソコンを交互に5回見比べました。本当に合格していました。自分の勉強方法が間違っていなかったことが証明された瞬間でした。試験勉強を始めての1年弱は合格するためにそれだけを目標に時間を費やしました。正直かなり辛くもありましたが、努力は裏切らないという事を感じました。
また私は自習は自宅ではなく、学院の自習室を利用させて頂きました。学院の皆様には色々とサポートして頂きました。自転車通学でしたので、冬場には暖房を夏場には冷房を必ず私が行く前までに着けていて下さり、すぐに快適に勉強を始めることができました。本当に感謝しています。
そして何も知らない私を1回で合格に導いてくれたのはやはり内堀先生だと思います。測量の「そ」の字も知らない私が信じるのは内堀先生のお言葉しかなかったからです。予習で全く分からず、気が滅入ることが多々ありました。そんな時に講義を受けると気持ちが奮い立ちました。本科受講生の方々も内堀先生から様々な課題を出されていると思います。確実に実行して下さい。内堀先生がおっしゃられたことを言われたとおりにそのままする。ただ愚直に勉強を続ける。必ず合格するんだという強い信念を持ち続ける。これが合格への最短コースだと思います。