ご存じの通り土地家屋調査士試験は、択一20問(50点)、土地及び建物の記述式2問(50点)で構成されています。合格するためには択一と記述式で一定の基準点を越え、かつ合格点までの点数を上乗せする必要があります。受験生の多くは土地家屋調査士試験で、やっかいなのは記述式の問題だ・・記述式に重点を置かないと・・たくさん電卓や定規の練習をしないと・・等の先入観のようなものをもって学習を始めると思います。実際に私自身も勉強を開始して1ヶ月はそのような考えがありました。確かに土地家屋調査士試験を受ける上で記述式の対策は必要不可欠であり、その勉強なくしては合格に手が届かないのは事実です。しかし、本当に力を入れなければならないのは択一なのです。過去のデータからわかるように択一の基準点を越えたからといっても、基準点プラス1問、2問分の得点で合格するのは、いかに記述式の手応えがあったからと言っても記述式の配点基準がブラックボックスである限り記述式での挽回は厳しいのが現実です。つまりは、土地家屋調査士試験は配点基準がはっきりしている「択一が主戦場」ということです。そこで獲れるだけ点を獲ってしまうこと。そこで圧倒的有利に立つこと。つまりは、この試験の合格への王道は択一でいかに逃げ切り点(45点以上=18問以上正解)を確保し、記述式は基準点を守り抜くことなのです。
私自身試験を終えて振り返ってみると、択一に掛けた勉強時間は全体の7割ほどになったと思います。結果として、このおかげで勉強を始めて9ヶ月で、本試験に択一45点(18問正解)、記述式は基準点プラス6.5点で合格することができました。この王道であり近道に早く気づいたことが勝因だったと思います。
ここからは択一逃げ切り点を確実に確保するための勉強方法に重点を置き、私が実践したことをご紹介します。
はじめに、択一の勉強を始める前に意識しておいてほしいことがあります。択一には「守りの知識」と「攻めの知識」があることです。高得点を獲るには守りを鉄壁にして、攻めるときに確実に攻めることです。つまりは、過去問類似の選択肢(守りの知識)は確実に得点し、過去問プラスアルファの問題(攻めの知識)を正解することにより差を付け、逃げ切り点に到達するということです。
守りだけでは18問正解までは辿り着きません。毎年1問は過去に出題の無い問題が出るからです。今年であれば「特例方式」に関する問題が出ましたのでこの知識があったかどうかで逃げ切り点を取れたかどうかの分岐点になったと思います。この問題を正解するために「攻めの知識」が必要になります。
私の場合は、守りの知識は「合格データベース」で、身につけて、攻めの知識は「合格ノート」で習得しました。合格データベースとは過去問集で、問題数は2500問ほどあるものです。合格ノートとはテキスト(参考書)で、2冊(約800p)あります。どちらも東京法経学院のもので、試験勉強で無くてはならないものでした。個人的に六法はあまり使用しませんでした。合格ノートは完全に六法の言い回しで記載されていますので、合格ノートを読んでいれば自然と六法をカバーしていることになります。最終的には条文を引くときも、合格ノートを六法代わりに使用していました。
勉強を開始して早めに過去問集にとりかかるのをオススメします。はじめから合格ノートを読んでも文章が平坦にしか見えず、どこが重要な論点なのかわからないからです。過去問は後にテキストを読むためのスパイスになります。
過去問集一周目は時間がかかりますがとにかく前に進めるようにしてください。肢の答えの理由は後から理解できると割り切って、難しい問題でも立ち止まらず、とりあえずこの答えは○、これは×と判断できるようにしておきます。二周目はもう一度全体を回しますが、一周目と違って間違えた箇所にチェックを入れていきます。三周目は二周目で、チェックした問題だけを解いていきます。間違えた箇所には新たにチェックを入れておきます。多くは記述式の勉強と平行してやっていると思いますので、ここまでで2ヶ月以上の時間は必要かと思います。予備校を利用している方は、答練が始まる時期には過去問を最低限ここまで解けるようにしておかないとその後が厳しいです。四周目は三周目でチェックを入れた問題全て、プラス、昭和から平成16年までの問題全てを解きます。平成17年3月7日に不動産登記法の大改正が行われましたので、問題の変化を感じるためです。そしてこれまで通り間違えた箇所にはチェックを入れておきます。五周目はここまでチェックを入れた問題全て、プラス、平成17年から平成27年までの問題全てを解きます。同じように間違えた箇所にはチェックを入れておきます。ここまでやると、過去問の正答率は8割強程になっていると思います。一周目をしてから4ヶ月〜5ヶ月程度経っていると思いますので六周目ではもう一度全ての問題を解きます。初めに比べ、スピードはグッと上がって全体を2〜3日で解き終わると思います。このときに間違えた問題にはフセンを付けます。解説集の方にもフセンを貼っておきます。七周目はフセンを貼った問題のみを解きます。解説集のフセンを貼った箇所を読めば自分だけの弱点補強に使えます。試験の直前期にとても役立つハズです。
過去問集をここまでやれば「守りの知識」はほぼ完壁といっていいと思います。私自身最終的な正答率は98%(2450問/2500問)でした。人それぞれ思考のクセのようなものがありますので100%にはどうしてもなりませんが、試験対策としてはこれで十分です。これでもう本試験で択一足切りは有り得ないと思えることができます。
次に合格ノート(テキスト)の使い方を紹介します。先ほども述べた通りテキストは過去問集が三周ほどしてから読み始めると効果的に理解することができます。テキストは何よりの解説書で、あり、問題集です。過去問集には出てこない重要論点がたくさんありますし、論述で狙われる登記手続きなどをしっかりと覚えることができます。この合格ノートは読めるだけ読んでほしいと思います。私はおそらく15周以上読み込んだと思います。その際はただ単に何回も読むのでなく、その都度、強弱をつけて読むようにしていました。初めは読むのに14時間くらいかかっていましたが、読むたびに実力が付いていくのが実感でき、8月には全体を2時間で回すことができるようになっていました。時には、かなり荒療治ですが、文章を黒マジックで塗りつぶして強制的に思い出せるようにしたりしました。何回読んでもなかなか理解できない箇所にはフセンを貼っておき直前期には重点的にチェックしました。
最後の1ヶ月はとにかくテキストの読み込みを重視しました。頭の中でテキスト全体の内容をイメージすることができ、このテーマは本の左のページの上の方に書いてあったなと文章を脳内で再現できるようになるまでやりました。これで、「攻めの知識」をものにすることができ、自分でも気づかぬ内に論述問題にも強くなっていました。
この段階で、どんな問題がきても不動産登記法では満点が取れる実力がついていると思います。試験では4問目~19問目までは獲れることになります。しかし、これではまだ16問しか正解できません。残る攻略ポイントは民法3問と土地家屋調査士法1問です。民法の勉強方法としては、私は行政書士の過去問を利用しましたが、年々細かい論点まで問われてきていますので、司法書士の過去問を利用した方が良いと思われます。行政書士の過去問では不十分に感じました。調査士試験の民法は債権の分野からの出題はほぼ無いので対策はとりやすいですが、民法自体、費用対効果が低いのであまりつめこんでやらないほうがベターです。土地家屋調査士試験の民法の過去問はやらなくてもいいと思います。民法でまだまだ未出の論点が山ほどありますから、向こう2、3年で同じような問題が出ることは少ないと考えるからです。民法は傾向を分析して最低2問正解できるようにしましょう。
最後に土地家屋調査士法ですが、過去問を100%正解できるようにしておけば問題ありません。土地家屋調査士法の勉強を本格的に始めることは7月に入ってからでも十分に間に合うので時間を見つけてやるといいと思います。懲戒処分の具体的内容だけはテキストを利用して完全に覚えないと、地目と同じで何も答えられませんので注意が必要です。
答練・模試の択一で間違えたマイナー問題を復習することはムダですのでやらない方がベストです。私は最後まで、答練で、間違えた肢の復習をしていましたが、本試験でその論点が問われることはありませんでした。やはり答練・模試と本試験の択一問題は求離している部分が多いので、答練・模試の内容にとらわれることはありません。メインはやはり、過去問とテキストです。私は身をもって体感しました。試験での択一の解く順番にもこだわりました。私は民法に苦手意識を持っていましたので1問目の民法から解くのではなく、得意の不登法4問目〜 20問目を解いてから頭に戻って1~ 3間目の民法を解くようにしました。民法に戻って来る頃には頭の回転率もあがっていてストレスは少なかったです。問題の解き方も自分にあったものを答練や模試で模索しておくことをオススメします。本試験で力をもらうことができます。内容の難しい論点は、自分でノートを作ってまとめておくと便利です。私も最後はルーズリーフ50枚ほどのノートができました。勉強期間中、毎日目を通しやすく、直前期の丸暗記作業にも有効です。そして、本試験当日に会場に持っていき、精神安定剤になってくれます。
終わりに、勉強開始当初は内容の理解に重点を置き、本試験が迫ってくるにつれて暗記の比率を多くしてください。常にどうしたら点数を伸ばせるか考えてください。自分に合った生活スタイルで、勉強を進めてください。何度も何度も目にすることにより、知識の精度を高めてください。本試験では2時間半、一秒一秒カウントダウンされていき、数秒でも思考が止まることが恐怖になります。後半の書式2問を安定して解ききるためにも、択一の知識はみなさんの力になります。択一の実力者であれば、比例して記述式の実力者にもなっていく事実。そして、択一逃げ切り点を取れれば、落ちることの方が難しくなる事実。みなさんが択一の逃げ切り点を獲って、土地家屋調査士試験に合格される手助けになれば幸いです。