◆はじめに
私の職業は地方公務員です。元々測量の経験があり、中途採用で公務員になりました。測量の仕事をしていた時から、いずれは起業して自分でできる仕事をしたいと常に考えていました。そのような中で、公務員に転職しました。現在の所属部署では登記業務を行っています。担当になったばかりの頃は、土地家屋調査士の先生方に登記書類の作成を依頼し嘱託登記を行っていました。測量の経験があったので、登記申請に提出する図面や現場のことはなんとなく理解
しているつもりでした。ある時、上司から急な土地の分筆登記を頼まれ、自前で登記申請書類を一から作成をする機会がありました。その経験を通して、登記の目的や添付書類、筆界の意義等について理解を深めた反面、登記について専門知識や経験の不足を実感しました。その不足を補い日常業務を円滑に取組んでいくため、土地家屋調査士試験にチャレンジを決意しました。難易度が高い資格であることは承知の上でしたが、勉強と登記業務の並行作業を進め、自身の成長したことを実感し、さらなる自己啓発への意欲を高めようとの思いでした。さらに調査士試験に合格することで、永年抱き続けていた「起業の道ヘチャンスをつかむぞ」という強い信念で学習に励みました。
◆独学を選択した理由
独学を選択した理由は、これまで取得した資格が宅建、一級土木施工管理技士が独学によるものだったからです。その経験から、「自分を追い込めばなんとかなるだろう」との甘い考えで学習をスタートしました。測量士の資格を有していたので午前試験は免除、午後試験の対策のみでよかったことも安易に学習を始めた理由でした。
◆ 1 回目試験の学習方法
テキスト学習は一切せず、問題を解く分量を増やせば知識も身に付くものだと思い込んでいました。『合格データベース』を繰り返す毎日でした。そもそも1 回目の試験での合格は無理なことはわかっていましたが、筆記試験はある程度点数が取れるものと考えていました。1 回目の試験で傾向をつかんで、2 回目の試験で合格を勝ち取れればよいとの思いから、記述を捨てて筆記一本で試験に臨みました。記述対策はまったくしていなかったので電卓1 個と三角スケール、三角定規(目盛無)しか持参していないという無謀にも程がある1 回目試験でした。
しかし、ある程度出来ると踏んでいた筆記試験でも、間題の論点を読み解くことすら出来ず手も足もでませんでした。結果は散々な点数で、2 回目の試験を受けようという気にもなりませんでした。調査士試験のレベルが高すぎて、自分には手の届かない資格だと思い、次年度の試験はあきらめてしまいました。あきらめてしまったモヤモヤ感を抱きながら一年が過ぎようとした時に、「もう一度試験を受けてみたら」と妻から言葉をかけられました。その言莱がきっかけとなり、「これまで資格試験にチャレンジし、すべて独学で突破してきた。調査士試験も必ず独学で合格して、起業の道を切り開いていくぞ」との強い想いが芽生え、学習を再開させました。
◆ 2 回目試験の学習方法
子供が小さく、育児や家事を分担する必要があったため、出勤前の毎朝5 時から1 時間半、就寝前2 時間を学習時間に当てました。当初学習した知識は、まったくと言っていいほど身についていなかったので、初学者そのものでした。独学のスタイルは、勉強法からペース配分まで自分自身で決めていかなければなりません。何から手をつけたらよいのか判断する事が困難で、学習法の選択ミスにより後々の学習に影響して多大な時間を無駄にしてしまう恐れがあります。
そこで、まず過去問の記述式から取り組むことにしました。それを選択した理由は、記述式を解くことができなければ、択一式をいくら解けるようになっても合格まで辿りつけないと思ったからです。他社の参考書を使用しましたが、解法や関数電卓の使い方を理解するだけでも相当時間がかかりました。基礎知識が不足している中で、わからない用語に悪戦苦闘する毎日でした。しかし、どれだけ時間がかかっても記述式の解法を身につけて、そこに基礎知識を加えていけば「なんとかなる」との考えでした。過去問を一通り解き終わるのに数力月を要しました。土地の座標値を算出するための交点計算や求積ついては、今思えばかなり自己流な電卓の使い方だったと思います。
次に記述式の基礎学習をするために『書式合格演習ノート』の基礎編だけを土地・建物・区分建物の順に繰り返して解きました。基礎編だけを解くことにしたのは、基本的な記述式の問題を解くことが「計算」、「図面作成」、「申請書作成」習得の近道であり、記述式出題傾向の全体像をつかみたかったからです。同時にテキスト学習をしていないことによる基礎知識不足が、記述式を解くにあたって障害となり、1 問1 問を解くことに多くの時間を要してしまう毎日でした。
ようやく基本的な記述式問題が解けるようになりましたが、この時点で試験本番まで6 ヶ月をきっていましたので、「図面作成」が習得できないまま次の学習にとりかからざるを得えませんでした。
次に『択一攻略要点整理ノート』の学習に入りました。テキスト学習を進めていくうちに、記述で不足していた知識が身に付いていく実感と同時に、「テキスト学習による基礎をしっかり身につけないと試験の合格ラインには到底届かないかもしれない」と思うようになりました。
テキスト学習をしっかり理解するための時間確保が必要なこと、試験本番まで時間が大幅に不足していることに焦りと不安が募る毎日でした。テキスト学習が一通り終了した時点で試験本番の3 ヶ月を切っていました。テキスト学習の復習に割く時間もないままに『過去問マスター』の択一式に取り掛かりました。択一式問題は正解にたどりつけなかったのですが、間違いの原因がある程度理解できたことは、基礎知識の習得の効果によるものであることを実感しました。
間違った問題に付箋を貼り、間違いのポイントとなる箇所にマーカーで印をし、次の復習に備えました。試験本番まで1 ヶ月を切ると、気持ちに余裕もなくなり、記述式は基礎問題のみ、択一式は過去問の間違い箇所しか解かないという乱暴な学習方法を選択してしまいました。
2 回目の本試験では、択一式は基準点クリアできたものの、記述式は合格点まで届かず、全体で6 割程度の出来でした。試験後の再現答案をチェックしたところ、択一式は反復学習に十分な時間が割けなかったことがあだとなり、数問とりこぼしていました。記述式は小さなミスによる減点が積み重なり、合格点に達しないことは当然の結果でした。
一方、問題の論点が何であるかはある程度理解していることに気付きました。記述は基礎問題のみ学習でしたが、本試験でも対応で
きたことで、「問題の数をとことんこなせば合格をつかむことができるのでは」との思いになりました。さらに自分が定めた学習目標を着実に達成できれば、「次回の試験は確実に受かる」と、どんどん気力がみなぎっていき、試験後すぐに勉強を再開させました。
◆ 3 回目試験の学習方法
3 回目試験の学習は、『書式合格演習ノート』から始めました。基礎学習のみで止まっていたので、応用学習によるスキルアップを目的とするものでした。2 回目試験において基礎学習のみである程度対応できたため、応用問題の数をこなしスキルが身に付けば、必然に合格ラインに到達できるとの思いからです。応用問題を2周回すと、計算方法や作図方法の理解が進んでいきました。
以前の経験から、択一式か記述式の学習いずれかに偏っていた反省を踏まえ、早朝学習に記述式を当て、夜は択一式学習に当てました。択一式は以前、過去問に十分な時間を確保できなかったため、『過去間マスター』からとり掛かりました。前回試験の択一式では正解肢の2 択のいずれかに迷った状況で、間違った肢を選択してしまい、取りこぼしてしまったので、過去問を完璧に押さえておきたかったからです。択一式と記述式の並行学習が習慣づいてくると、関連知識が相互に身についていくことが実感できるようになりました。また間違った箇所は『択一攻略要点整理ノート』を活用して、理解することを意識しながら学習しました。
試験本番3 ヶ月前に差し掛かると、答練を組み合わせていくようにしました。自分が身に付けた知識レベルを把握するため、試験本番の雰囲気を味わうための実戦答練は試験直前に経験しておきたかったとの思いからでした。答練を受けた 感想は、択一式は合格ラインには達しているものの、思った以上に難問がある印象でした。「これまでの学習が不足しているのか」と不安になりましたが、解説では本番より難問になっているとのことだったので安心しました。記述式は、わからない箇所がないくらい順調に解けました。答練は2 回受けましたが、両方とも試験終了30分前に解答は終わっていました。
結果、記述式の採点はほとんどミスなしにA判定、総合判定においてもB判定でした。この調子で本番まで問題を回していけば、合格を勝ち取れると確信していました。
そして3 回目試験本番に臨みました。択一式では前回の反省を踏まえた学習により、取りこぼしによる間違いを防ぐことができました。記述式は定石どおり建物から取り掛かりました。しかし、令和2 年度の建物は、これまで過去問にも出題されていないような傾向の問題構成になっており、間題を読み解くのに相当な時間を要してしまいました。そのことが焦りにつながり、建物の問題が十分に解答できないまま土地の間題にはいっていかざるを得ないという悪循環に陥りました。土地についても、過去問の傾向でなかったような、ある意味トリッキーな出題だったので、時間がないのも合わさって、解法が見出せずに試験が終了してしまいました。
試験終了後の心境はただただ茫然としていました。記述式は問題を相当こなした自負があったので、絶対に合格できる自信がありました。しかし、本番でつまずいてしまい「これ以上がんばることはできない」と自信喪失になってしまいました。ショック状態のまま、解答速報を確認しました。択一式は17問正解できましたが、記述式は予想どおり満足のいく点数を取ることができませんでした。
更にショックだったのは、記述式の学習範囲を増やしたのにも関わらず、前回試験と比較して得点がさほど伸びていないことでした。記述式の解答解説を確認すると、ちょっとした視点のズレにより解法が導きだせなかったことや問題の読み方に原因があることがわかりました。また、学習してきた間題パターンと違った傾向の出題がされると応用が効かなくなってしまう点も判明しました。このような原因を踏まえ、学習方法を見直す必要があるという考えが芽生え出しました。
◆学習方法と4 回目試験
まず、見直した学習方法は偏った自己流をやめたことです。東京法経学院の講師の方が指導されているように進めていこうと考えました。
『六法』を購入し、択一式の学習には問題肢に該当する条文とページを記入し、肢ごとに理解するように『六法』を活用しました。そうすることで、書式の「申請書作成」の意義も並行して理解が進んでいきました。また記述式の土地は『土地測量演算講座』やこれまで購入した問題集を活用し、交点計算、セットバックや面積指定分割計算等のパターンごとにノートに整理しました。これは試験本番で解法がすぐ頭に浮かぶようにしたかったのと、パターンに該当しないトリッキーな問題が出題された場合、すぐ対応できるようにしておきたかったからです。
『不動産表示登記申請マニュアル』は大変実践形式でまとまっていると思ったので、試験直前まで繰り返し復習し、頭のなかで申請書がイメージできるようにしました。このマニュアルは表示登記の大部分が掲載されていると思ったので、実際本試験においても、申請者欄の記載などはピンポイントで出題されました。実際の実務でも役に立つと思うので購入して損はないと思います。あと意識したのは試験本番の時間配分です。特に記述式の問題を読む順番がポイントになると考え、『総整理セレクト記述式答練』や『練成問題集・煌』などを活用し、本番さながら時間に意識しながら問題を解いていきました。
この問題を読む順番に慣れていくと、間題のポイントが整理できるとともに記述式を解く上での労力が格段に楽になっていきました。試験直前期は新たな問題に取組むことは避け、繰り返し過去問をベースにスピードと正確に解答することに心がけました。試験会場では、『表示登記申請マニュアル』のみ持ち込み、申請書記載例の確認のみを意識して確認を繰り返しました。
試験開始時間直前には、学習を最後までやりきったという充実感に満ち足りた状態になり、自信をもって試験に挑んでいけたと思います。時間に意識した学習をしていた効果もあり、択一式は30分で解き終わりました。周りの受験生の雰囲気から、択一式は「周りより早く終了できた」と思ったので、気持ちに余裕がでてきました。
記述式は建物から解答しました。問題のポイントとなる箇所にマーキングしていき、問題の論点を絞っていく作業をしました。前回の試験では、問題の論点がズレたことによるミスがかなり影響したため、問われていることが何かを慎重に考えました。とくに床面積の算出ミスが図面や申請書の配点に影響してしまうので、問題文の注意書きの記載内容には気を付けるよう意識しました。建物は特に『申請マニュアル』を何度も読み込んでいたので、解答に詰まることはなかったです。建物を解き終えた段階で残り時間が1 時間20分でした。土地は問題を読む順番がポイントになると考えていたので、そこに重点を置きながら解答にあたっていきました。また筆界点の座標値の算出にあたって、頭の中で計算パターンをイメージし、どのパターンで解いていくのかを判断していきました。前回試験のようなトリッキーな解法を導く必要がなかったため、計算数は多かったものの安定して座標値を算出していきました。日頃の学習のなかで問題文の読む順番と計算パターンの整理がここにきて大いに成果が出たと実感しました。
作図も書き終わり、残り20分を残して書式は完走しました。あとは択一式で気になった肢の見直しとマークシートにミスがないかをチェックしました。時間配分がうまくいったことも、日頃の学習のなかで時間を意識した練習を積み重ねた効果だったと思います。
試験終了と同時の心境は「やりきった!」と充実感に包まれました。試験当日に解答速報を確認し、自己採点をすると全体で8 割以上は正解しており、「合格を勝ち取ることができた」と思いました。試験結果は、択一式42.5点、建物18点、土地21点でした。
◆最後に
自己流の独学方法で何とか合格できましたが、今思えば通信講座を活用し、講師の指導のもと、学習を進め、た方が時間短縮することができ合格まで早く辿りつけたと思います。しかし、学習法を試行錯誤し、合格まで苦しんだり悩んだりしながら中身の濃い経験を経たからこそゆるぎない知識が、合格へと結び付いたとも思っています。試験勉強を通して習得した知識や技術を自信として、今後の実務に役立てていきたいです。
どんな試験や仕事でもそうだと思うのですが、私のような凡人だって何回、何十回とやり続ければできるようになりました。合格できずともあきらめず、途中で投げ出さず、チャレンジ精神を燃やして何回でもトライし、継続すれば結果は必ずついてきます。
わたしはこの経験を糧にし、これからの公務員人生、その先の起業人人生において幾度となく壁にぶち当たろうとも、挫折することなく不屈の精神で挑んでいきたいです。