不動産登記の専門家である土地家屋調査士になるためには、国家試験を突破する必要があります。不動産関連資格としても人気の高い土地家屋調査士ですが、どれくらいの収入が期待できるのでしょうか。
この記事では、土地家屋調査士の平均年収、年齢別の年収目安、年収アップを目指す方法を解説します。土地家屋調査士として独立開業する流れや、開業を成功させるためのポイントもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
目次
土地家屋調査士の平均年収は約500~600万円
土地家屋調査士の平均年収は、500〜600万円くらいだといわれています。ただし、実績や働き方によって年収の差が生じやすく、独立して1000万円以上稼ぐ土地家屋調査士も少なくありません。
国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は433万円です。土地家屋調査士の年収は給与所得者の平均給与より100万円前後高く、比較的収入の多い仕事であることがわかります。
※参考:国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」
土地家屋調査士の年齢別の年収目安
土地家屋調査士は年齢によっても年収に幅があります。基本的には20代から年収は右肩上がりとなっており、50代でピークを迎えます。下記の表は土地家屋調査士の年齢別の年収目安です。
20代 | 350~500万円 |
30代 | 550~650万円 |
40代 | 700~800万円 |
50代 | 800~900万円 |
60代 | 600~650万円 |
20代は給与所得者の平均給与の433万円よりも低くなるケースもありますが、同年代と比べると高収入が見込めます。また、40代になると20代の2倍近くまで年収がアップします。
60代から年収が下がっている理由としては、体力的な厳しさが挙げられます。60歳前後を目安に働き方を調整する人が多いため、年収目安は下がる傾向ですが、働き方次第では60代以降も高い年収を維持することが可能です。
勤続年数別の土地家屋調査士の年収目安
続いては、勤続年数別の土地家屋調査士の年収目安を見ていきましょう。基本的には、勤続年数が長くなるほど年収も上がりますが、どれくらい収入が増えるかは勤務先の方針によって異なります。
1年目
1年目は実務経験を積む期間です。まずは「補助者」として働くのが一般的で、年収も300万程度になります。年収300万円は手取りにすると約235万円となり、月々20万円程度の収入です。
主な業務内容は、不動産の測量補助や登記手続きのサポートなどがあります。1年目は自分ひとりで仕事を行うことは少なく、OJTのようなかたちで上司や先輩から業務を学びます。
3年目
3年目になると、確定測量ができるようになります。確定測量とは、隣接所有者の立ち会いのもと土地の境界線を確定していく作業で、土地家屋調査士の重要な仕事の一つです。確定測量を任せてもらえるようになると、年収も500万円程度にアップします。
勤続年数が3年目を迎える頃には、補助者ではなく担当者として業務に関わることが増えてきます。確定測量に限らず専門性の高い仕事に積極的に取り組み、ノウハウを吸収することが大切です。土地家屋調査士は実績が評価されやすいため、幅広い業務を経験しておくことで、将来の選択肢が広がります。
7年目
7年目になると、測量や登記などの実務に加えて、教育やマネジメントに関わる仕事も増加します。役職に就くと年収も上がり、700〜1000万円以上も期待できます。
また、調査士事務所での勤続年数が10年近くなると、キャリアアップを目指して転職や独立を検討する人も増えてきます。実務経験者の年収は働く地域によっても差があり、東京などの大都市は高い傾向です。独立開業はさらなる年収アップが見込めますが、経営スキルを身に付ける必要があります。
年収アップを目指す土地家屋調査士の働き方
年収は、持っている資格と仕事の取り組み方によって変わってきます。土地家屋調査士として年収アップを目指すなら、仕事に役立つ資格の取得がおすすめです。
業務に役立つ資格を取得する
難関国家試験である土地家屋調査士に合格してからも、業務に役立つ資格を取得することで他の調査士との差別化が図れます。また、資格手当が支給される調査士事務所であれば、該当資格の取得は年収アップの有効な手段です。
土地家屋調査士の仕事に役立つ資格としては、次の4つが挙げられます。
- ADR土地家屋調査士
- 宅建士
- 行政書士
- 司法書士
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
ADR認定土地家屋調査士
ADR認定土地家屋調査士とは、主に境界に関わる民間紛争の解決手続きを代理で行うことができる資格です。ADRは「Alternative(代替)」「Dispute(紛争)」「Resolution(解決)」の頭文字をとったもので、裁判外紛争解決手続・民間紛争解決手続などと訳されます。ADRの認定は特別研修の受講によって取得でき、土地に関するトラブルを解決するのに役立ちます。
宅建士
宅建士(宅地建物取引士)とは、不動産取引に関する資格です。土地の売買や賃貸物件の契約時に、重要事項を説明するためには、宅建士の資格を持っている必要があります。年間20万人ほどの人が受験する国家資格で、不動産に関する専門知識を身に付けることができます。土地家屋調査士と合わせて取得していることで、不動産に関する知見が広がり、さまざまなシーンでよりよい対応がしやすくなります。
行政書士
行政書士とは、官公署に提出する書類の作成や行政への申請手続きを代行できる資格です。土地家屋調査士と行政書士の資格を持っていることで、農地転用や開発許可、不動産に関する相続の問題にも対処しやすくなります。
行政書士試験の合格率は10%前後となっており、土地家屋調査士とほぼ同じ水準です。決して簡単な試験ではありませんが、法律系国家資格の中では比較的挑戦しやすいレベルといえるでしょう。
司法書士
司法書士は、法律に関連する書類の作成や手続きを代行できる資格です。主な仕事内容として登記申請業務があり、不動産の売買においても重要な役割を果たします。土地家屋調査士は境界の確定や表題登記の申請はできますが、所有権移転登記や抵当権設定登記は司法書士にしかできません。土地家屋調査士と司法書士の両方の資格があれば、行える手続きの幅が大きく広がります。
司法書士は取得難易度の高い資格です。出題範囲は多岐に渡っており、知識量も求められるため、通信教育やメディア教材を活用しながら対策しましょう。
大型案件に注力する
調査士事務所で従業員として働いているうちは安定した収入が見込めますが、独立開業後は経営によって年収が左右されます。仕事が少なく競合が多いエリアで開業すると、独立前より年収が減ることがあるかもしれません。最悪の場合、経営がうまくいかずに廃業という可能性も考えられます。経営を軌道に乗せるためには、稼ぎやすい案件やジャンルに注力することも大切です。公共事業などの大型案件に関わることができれば、会社の信頼度も向上します。
営業に力を入れる
開業後は経営者として営業にも力を入れましょう。土地家屋調査士の仕事は地域密着型となるため、エリアを絞った営業が効果的です。営業先としては、不動産会社・建築会社・行政書士事務所・司法書士事務所などが挙げられます。また、インターネットを駆使した営業も必須です。ホームページ開設だけでなく、SNSで積極的に情報発信することで会社の存在を知ってもらうことができます。調査士事務所はマップ検索されることも多いため、Googleマップで店舗を登録しておくのもおすすめです。
ドローン測量に取り組む
新しい技術やツールを積極的に取り入れることで、同業他社より自社を選んでもらいやすくなります。土地家屋調査士の新しい技術の一つに「ドローン測量」があります。ドローン測量とは、ドローンを利用して上空から地形を測量する技術です。測量範囲が限られる「地上での測量」、高額な費用が発生する「有人航空機による測量」の中間に位置するドローン測量は、時間とコストが抑えられる測量方法として注目されています。
ただしドローンを飛行させるにはさまざまな規則があるので、あらかじめ確認しておくようにしてください。
土地家屋調査士として独立開業する流れ
土地家屋調査士として独立するときは、必要な手続きや流れを知っておくことでスムーズに開業できます。
- 土地家屋調査士の資格を取得
- 土地家屋調査士連合会に登録および土地家屋調査士会に入会
- 実務経験を積む
- 事務所、必要機材を揃える
- 税務署に「個人事業主開業届」もしくは「事業開業報告書」を提出
まずは、土地家屋調査士の資格試験に合格する必要があります。その後、土地家屋調査士法第8条の規定に従って土地家屋調査士連合会に登録し、各都道府県の土地家屋調査士会に入会しましょう。
土地家屋調査士は実績が重視されるため、資格取得後すぐに開業するのではなく、調査士事務所に勤務して知識やノウハウを学びます。実務経験を積み、開業資金が用意できたらオフィスを契約して必要機材を揃えていきましょう。税務署で「個人事業主開業届」もしくは「事業開業報告書」が受理されると、事業を開始することができます。
開業を成功させるためにやっておきたいこと
土地家屋調査士は独立開業しやすい仕事ですが、安定した経営ができないと年収アップにはつながりません。ここでは、開業を成功させるためにやっておきたいことを2つご紹介します。
勉強・経験は開業前にしておく
開業後は土地家屋調査士本来の仕事以外に、事務所の経営に関わるさまざまな業務が発生します。勉強の時間を確保するのも大変になるため、資格の勉強・取得は開業前に終わらせておきましょう。また、事務所に勤務しているあいだに、できるだけたくさんの経験を積むことも重要です。先輩の技術や知識をたくさん学んでおくことで、事業が成功しやすくなるはずです。
人脈を広げておく
勤めていた会社や事務所の上司、先輩、同業者以外も人脈を広げておくことで、仕事をまわしてもらいやすくなります。不動産関係の交流会に参加したり、他業種の経営者と積極的にコミュニケーションをとったりすることで、悩み相談や情報交換などができる人脈が作れるでしょう。また、同じエリアの同業他社と関係を築いておくと、「大規模な事業があったときに声をかけてもらえる」「得意分野に合わせて顧客を紹介し合える」などのメリットもあります。
まとめ
土地家屋調査士は働き方次第で年収1000万円を目指せる仕事です。行政書士や司法書士などの複数の資格を持つことで業務の幅は広がり、さらなる年収アップが期待できます。
一方で、土地家屋調査士試験は難易度が高く、合格者の半数以上は3回以上受験して合格しているといったデータもあります。試験は記述式の問題もあるため、しっかりと対策を行うことが重要です。東京法経学院は合格占有率72.9%の圧倒的な実績があり、徹底的な試験分析によって、合格までの道のりをサポートします。学習経験者向けの講座も充実しているので、自分に合った勉強方法を見つけて土地家屋調査士試験の合格を目指しましょう。
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