土地家屋調査士に興味はあるものの、土地家屋調査士試験の難易度が分からず受験をちゅうちょする人もいるでしょう。土地家屋調査士とは、不動産の表示に関する登記を行う専門家です。依頼を受けて土地や建物などの形状、所在、利用状況などを調査したり測量したりします。国家資格である土地家屋調査士試験の難易度はどのくらいなのでしょうか。
本記事では、土地家屋調査士試験の難易度や偏差値、合格率などを解説します。また、土地家屋調査士試験の合格に必要な勉強時間などを参考にしながら、他の資格と比較して分かりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んだ後に得られるベネフィット
- 土地家屋調査士試験の偏差値や合格率が分かる
- 土地家屋調査士試験に合格するためのポイントを把握できる
- 独学でも土地家屋調査士試験に合格できるのかが分かる
目次
土地家屋調査士試験の偏差値
土地家屋調査士試験の偏差値は、64といわれています。ただし、資格試験にはさまざまな種類があり、それらの資格試験と単純に比較することはできません。受験者の属性なども異なるため、偏差値はあくまでも一つの目安として参考にすると良いでしょう。
土地家屋調査士試験と同様に、偏差値64の資格は以下が挙げられます。
- 気象予報士
- マネジメント検定(経営学検定)上級
- 実用英語技能検定1級
- 歯科医師国家資格
このように、土地家屋調査士試験は難関資格とされる資格試験と同じぐらいのレベルです。一般的に偏差値60以上の試験は難関試験といわれているため、土地家屋調査士も難関資格に分類されます。
土地家屋調査士試験の合格率
土地家屋調査士試験の合格率はどの程度なのでしょうか。ここでは、直近5年分の合格率を一覧表にまとめました。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和5年度 | 4,429人 | 428人 | 約9.66% |
令和4年度 | 4,404人 | 424人 | 約9.63% |
令和3年度 | 3,859人 | 404人 | 約10.47% |
令和2年度 | 3,785人 | 392人 | 約10.36% |
令和元年 | 4,198人 | 406人 | 約9.67% |
このように、過去5年の合格率は9%前後です。同程度の合格率の資格試験としては、約8~9%の合格率となっているマンション管理士が挙げられます。難関資格である司法書士約4~5%、社会保険労務士約6%よりは合格率が高いですが、簡単な資格試験ではありません。
また、行政書士は約11~15%、宅地建物取引士は約15~17%となっており、これらの資格試験より土地家屋調査士試験の方が難易度は高いといえます。
※出典
法務省. 「令和5年度土地家屋調査士試験の最終結果について」. 令和6年, https://www.moj.go.jp/content/001411570.pdf, (参照2025-01.21)
法務省. 「令和4年度土地家屋調査士試験の最終結果について」. 令和5年, https://www.moj.go.jp/content/001389364.pdf, (参照2025-01-21)
法務省. 「令和3年度土地家屋調査士試験の最終結果について」. 令和4年, https://www.moj.go.jp/content/001366634.pdf, (参照2025-01-21)
法務省. 「令和2年度土地家屋調査士試験の最終結果について」. 令和3年, https://www.moj.go.jp/content/001340287.pdf, (参照2025-01-21)
法務省. 「令和元年度土地家屋調査士試験の最終結果について(資料)」. 令和2年, https://www.moj.go.jp/content/001314256.pdf, (参照2025-01-21)
土地家屋調査士試験に合格するために必要な勉強時間
土地家屋調査士試験に合格するために必要な勉強時間は、およそ1,000時間といわれています。1年かけて試験の準備を整える場合、平日に2時間、休日に5時間の勉強時間を確保しなければいけません。
ただし、1,000時間はあくまでも目安です。1,000時間勉強すれば必ず試験に受かる、十分な勉強時間を満たしているというわけではありません。勉強の質や仕方によってはさらに勉強時間が必要となり、合格まで数年以上かかるケースもあるようです。
他の難関資格の合格に必要な勉強時間の目安は以下の通りです。
- 司法書士:3,000時間
- マンション管理士:600時間
- 行政書士:500時間
- 宅地建物取引士:300時間
一般的に、資格試験の難易度が高くなるほど必要な勉強時間も多くなる傾向にあります。
土地家屋調査士試験の難易度が高いといわれる理由
土地家屋調査士試験の難易度が高いといわれるのは、どういった理由からなのでしょうか。ここでは、土地家屋調査士試験の難易度が高いといわれる主な理由を3つ詳しく解説します。
基準点がある
土地家屋調査士試験には基準点が設定されています。土地家屋調査士試験は午前の部と午後の部がありますが、午後の部の択一問題と記述問題には合格点の他に基準点が設定されており、どちらか一つでも基準点に達していないと不合格になってしまいます。
採点の流れとしては、択一式を採点して合格していたら記述式を採点、記述式も基準点に達していたら最終的に総合点を見るという流れです。どちらの問題でも基準点を満たさなければいけないため、それぞれで合格点が取れるように試験対策を行う必要があります。
試験時間が短い
土地家屋調査士試験は試験時間が短く、全ての問題を解くためには時間配分が重要になります。午後の部の試験時間は2時間30分となっているため、十分な時間があるのではと疑問に思う人もいるでしょう。
しかし、択一式は不動産登記法・民法他から20問、記述式は土地・建物から各1問出題される仕組みになっており、出題量に対して試験時間が短いといわれています。そのため、ギリギリだった、時間内に解き終わらなかったという受験者も多いようです。
試験前の勉強や過去問を解くなどの対策段階から、試験時間を意識して効率的に解けるようにしておくと良いでしょう。
記述式問題の対策が難しい
記述式の問題は計算と作図に分かれており、どちらも対策が難しいです。知識があるからといって、必ずしも点が取れるわけではありません。計算問題では電卓を用いて答えを求める必要があり、作図では三角スケールを用いて図面を作成して登記申請書を書くという流れになります。
実際に電卓やスケールを使うことになるため、使い慣れておかないと早く正確に解くことが難しかったり、問題に集中して取り組めなかったりするでしょう。事前に問題に慣れておく必要がありますが、特に独学では記述式の問題に対する対策が困難です。
土地家屋調査士試験に合格するためのポイント
土地家屋調査士試験に合格するためには、要点を押さえて勉強することが大切ですが、その他にも押さえておきたいポイントがあります。ここでは、土地家屋調査士試験に合格するためのポイントを3つ解説するので、参考にしてください。
午前の部免除で受験する
土地家屋調査士試験は午前の部と午後の部の2部構成ですが、午前の部には免除制度が設けられています。測量士・測量士補・一級建築士・二級建築士の資格保有者は、土地家屋調査士試験の午前の部が免除になるため、資格を持っている場合は活用しましょう。
午前の部は、平面測量10問と作図1問で構成されており、試験時間は2時間です。合格者の多くは午前の部免除で受験しているため、比較的合格しやすい測量士補などに先に挑戦して資格を取得しておくのもおすすめです。測量士補試験の合格を目指しつつ、土地家屋調査士試験の対策をしていくと効率的に勉強できます。
測量士補試験の難易度は?勉強時間や独学について解説 | 東京法経学院 資格コラム
用具に慣れておく
土地家屋調査士試験の午後の部では、電卓や三角スケールなどの用具を用いて問題を解くことになります。そのため、電卓やスケールに早めに慣れておくと良いでしょう。用具の使い方に慣れるには、実際に用具を用いて問題を解き、手を動かして慣れる以外に方法はありません。
過去問を解くまでにある程度使い方に慣れておき、スムーズに計算や作図ができる状態にしておくことがポイントです。
論点ごとに過去問を解く
土地家屋調査士試験の対策を始める際には、まず択一式の問題から始めるのがおすすめです。択一式の問題で1つの論点を学んだら過去問を解くという流れで進めると、何が問われているのかを大まかにでも理解できるようになります。
過去問を解き終わったら、再度参考書に戻って何が問われていたのかを確認しましょう。参考書と過去問を論点ごとに繰り返し解いていくことで、理解が深まりやすくなります。
独学でも土地家屋調査士試験に合格できる?
土地家屋調査士試験に合格するための勉強方法はいくつかありますが、独学で進めたいと思っている人もいるでしょう。独学での合格も不可能ではありませんが、決して簡単ではありません。ここでは、独学で挑戦するメリットとデメリットを解説します。
【メリット】費用が抑えられる
独学で勉強する大きなメリットとしては、費用が抑えられることが挙げられます。通学講座や通信講座を受講するためには、約十万円以上かかるとされています。そのため、ある程度の費用を用意しておかなければいけません。
一方、独学での勉強にかかる費用はテキスト代と受験料などで、数千円程度で済むでしょう。資格試験にあまり費用をかけられない、できるだけ節約しながら合格を目指したいという人にとっては費用面でのメリットは大きいでしょう。
【メリット】自分のペースで勉強を進められる
自分のペースで勉強を進められることも、独学の大きなメリットです。予備校などの通学を必要とする講座では、時間割が決まっています。休んでしまうとその分の内容が抜けてしまうため、時間割に合わせる必要があるでしょう。そのため、ライフスタイルに合わせて通学することは難しい可能性が高いです。
しかし独学であれば、勉強のスケジュールは自分で決められます。勉強する場所や時間を自由に決められるため、自宅以外のカフェやコワーキングスペースなどでリラックスしながら勉強することも可能です。
【デメリット】市販の参考書・問題集が少ない
独学のデメリットとしては、市販の参考書や問題集が少なく、参考にできるテキストの入手が難しいことが挙げられます。土地家屋調査士試験の参考書や問題集は、宅地建物取引士などと比較すると決して多くありません。
また人気のある資格や知名度の高い資格なら、フルカラーテキストやイラスト入りの分かりやすいテキストなどがあり、選択肢が豊富です。しかし、土地家屋調査士試験の参考書は選択肢が限られています。市販の参考書の中から自分に合うものを探す必要がありますが、自分に合うテキストがなかなか見つからないケースもあるでしょう。
【デメリット】質問・相談できる環境がない
独学の場合、自分のペースで勉強を進められますが、分からないことや不安があっても質問や相談できる人がいません。通学講座や通信講座の場合には講師がいるため、分からないことがあればすぐに講師に質問できる環境が整っています。そのため、疑問をすぐに解消できるでしょう。
一方、独学の場合は誰かに質問することができないため、自力で疑問点を解決して正解にたどり着かなければならず、効率的に勉強が進まないこともあります。
【デメリット】採点してくれる人がいない
独学の場合には、採点してくれる人がいないため、問題集や過去問を解いた場合の採点は自分で行うことになります。そのため、正解かどうかが分からない場合もあるでしょう。
特に、文章で答える記述式の問題や作図は、自分の判断や解答が合っているのかどうか分からないケースが多くあります。自分の採点では合格点が取れていたとしても、試験官の採点では得点が伸びずに不合格になってしまうこともあり得るでしょう。
まとめ
土地家屋調査士試験は、難易度の高い資格試験で合格率は9~10%前後となっています。合格を目指すには、効率的に勉強したり用具の使い方に慣れたりすることとなどが重要です。また独学での合格も不可能ではありませんが、かなり難しいため、通学講座や通信講座などを活用すると良いでしょう。
東京法経学院では、初学者向け、学習経験者向けそれぞれに合った講座が選べます。また、測量士補と土地家屋調査士のW合格を目指す講座もあるため、午前の部免除を受けたい場合にもおすすめです。土地家屋調査士試験の合格を目指すなら、受講してみてはいかがでしょうか。
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