国家資格である土地家屋調査士の試験は難易度が高いため、残念ながら一度では受からなかった人も多くいるでしょう。また、2回以上受けているもののなかなか合格に至らない人もいるかと思います。しかし、不合格だったからといって諦める必要はありません。多くの人が何回もチャレンジしています。
当記事では、土地家屋調査士試験にリベンジするためにやるべき対策を解説します。また、合格者の平均勉強時間や合格までの受験回数も紹介するため、併せて参考にしてください。
この記事で分かること
- 土地家屋調査士試験の再受験に向けてやるべきこと
- 再受験に向けての勉強方法
- 合格者の勉強時間
目次
実力判断のための自己分析をしよう
再受験の勉強を始める前に、なぜ不合格になったのかを分析して、原因を解明しましょう。分析する要素としては以下が考えられます。
- 自分の現在の実力
- 自分の弱点
- これまで勉強にかけてきた時間
- 勉強方法
ゴール(合格)までの道筋の中で現在自分はどの位置にいるのか、そして合格するには何が足りなかったのか考えてみましょう。
土地家屋調査士の試験内容は、法律の知識を問うものや作図問題など多岐にわたり、バランス良く理解することが大切です。そのためには自分の弱点をしっかりと把握しなければなりません。
土地家屋調査士の試験は例年、以下のようなスケジュールで進められます。
- 7月下旬~8月中旬に願書が配られ受け付け
- 10月頃に筆記試験
- 翌年1月頃に筆記試験の合格発表と口述試験
- 2月に最終的な合格発表
口述試験での不合格者は少なく、ほぼ合否は筆記試験で決定します。そのため、1月に筆記試験の結果が分かった時点で、次の試験に向けて準備をスタートしましょう。その際、漠然と勉強を進めずに、ゴールから逆算して計画を立てることが大切です。
土地家屋調査士試験で不合格になってしまった原因
不合格になると「勉強不足だった」と考えてしまいがちですが、問題はなぜ勉強不足であったかという点です。その分析ができていないと、また同じ失敗を繰り返しかねません。そこで、勉強不足となった要因を考えてみましょう。
勉強時間が足りていなかった
よくあるのは、勉強時間が足りなかったという理由です。忙しくて時間が捻出できなかったのかもしれませんし、まだ受験日は先だからと真剣に取り組むのが遅れた可能性もあります。勉強時間が不足していると、合格に必要な知識を十分に得られません。
一般的に合格に必要な勉強時間は1000時間といわれています。1年間で1000時間を勉強に充てるなら、平日2時間、休日5時間ほど必要です。
実際に合格者がどのくらいの時間を勉強に費やしたかは、後ほど詳しく紹介します。
勉強方法が適切ではなかった
勉強方法が適切でなければ、時間をかけても良い結果に結び付きません。合格に必要な知識を得るために適切な勉強であったかを見直すことが大切です。
特に、独学での勉強は、正しく学べているか分かりにくいため、通信講座や通学講座を受けることも検討しましょう。すでに講座を受けていた人も、自分に合っていなかった可能性があります。あらためて学び直すためにコースを変えるのも良いでしょう。
また、勉強に使う教材の見直しも大切です。必要なことが網羅されていない教材で勉強をしても、合格するだけの知識が身に付かない可能性があるため、見直すことをおすすめします。
過去問が十分に解けていなかった
土地家屋調査士の試験では、過去問からの出題が7~8割といわれています。また、例年の合格ラインは70~80点前後で推移しているため、過去問が解けるようになっていれば合格に近づけるはずです。
不合格になってしまったということは、過去問から得られる知識が足りていないか、過去問をやり込めていなかった可能性があります。
少なくとも過去10年分の過去問を複数回解くようにしましょう。
試験の時間配分ができていなかった
試験当日、時間が足りずに最後の方の問題が手付かずになりませんでしたか。
時間が足りなかったのなら、全体のペース配分が適切でなかったということです。不慣れな環境や緊張で、普段よりも時間がかかってしまった可能性もあります。もし苦手な問題に時間をかけ、得意な問題が解けなかった場合、大きな損をしたことになります。
緊張で序盤の解答ペースが落ちたり、残り時間が少なくなり焦ってミスにつながったりする可能性があるので、時間配分を考えておきましょう。
合格するためにやるべきこと
次回こそは受かるために、やるべき準備はさまざまです。一度経験しているのなら、自分に足りないことにも気付きやすいでしょう。一度目の反省を生かしながら準備を進めてください。
過去問をしっかりやり込む
過去問を解く目的は、正解することではなく、正解を導き出すロジックの理解です。
過去問に取り組んでいると答えを覚えてしまい、正答率が上がって安心してしまう可能性があります。しかし、それでは別の問題に応用が利かず、初見の問題が解けません。初見の問題でも解けるようになるためには、正解を導くためのロジックを理解することが重要です。
なぜそのような解答が導き出されたのかまで理解してこそ、過去問をやる意味があります。
いつもより速く問題を解く意識を持つ
試験時間内に解き終わらなかった人は、本番の試験時間と同じ設定で、過去問を使った模擬練習を行いましょう。
ただし何度も練習していると、丸暗記してしまって、問題を全て読み切らなくても答えが分かるようになってしまいます。それでは実力が身に付きません。
そこで同じ過去問を解く際は、回を重ねるごとに制限時間を短くし、解答スピードを上げられるようにするのをおすすめします。また、異なる問題集を使い、初見の問題を解く練習もしましょう。
貴重な学習時間を理解できていることに費やさない
試験勉強では現在できていないことを見つけ、それを補うために多くの時間を費やすべきです。特に、試験日までの貴重な時間は効率性が重視され、すでに理解していることに多くの時間を使うわけにはいきません。
過去問をたくさん解いて高得点を出すことは自信につながりますが、そこで満足するのは危険です。簡単に正解が出せる問題はすでに理解ができているため、それ以外の理解できていない問題に時間を使いましょう。
一度、受験をしている人は理解できている問題が多くあるはずです。本年度用の勉強を本格的に始める前に一通り問題を解いてみて、分からないところを重点的に学ぶことをおすすめします。
午前の部を免除できる資格を取得する
午前の部で行われる筆記試験には免除制度があり、受験者の約9割が活用しています。
免除を受けるには以下の資格を取得していることが条件です。
- 測量士
- 測量士補
- 一級建築士
- 二級建築士
午前の部は試験時間が2時間ある上、出題される測量計算問題は難問が多く、午前から受けると体力も気力も消耗します。そこで上記の資格のいずれかを先に取得し、免除の制度を活用するのも手です。
中でも測量士補は試験の難易度がさほど高くなく、土地家屋調査士の勉強が生かせるため、取得する価値は十分にあります。測量士補の試験は例年5月頃、土地家屋調査士の筆記試験は10月頃に行われるため、うまくやりくりすれば1年の間に両方の資格を取得することが可能です。
土地家屋調査士試験に合格した人のアンケート調査
ここからは、土地家屋調査士の新規登録年代構成や試験に合格した人のアンケートを基に、勉強に必要な時間などを見ていきましょう。
令和4年度「土地家屋調査士」新規登録者の年代構成
令和4年度に土地家屋調査士へ新規登録した年代構成は下表の通りです。
年代 | 割合 |
---|---|
20代 | 20% |
30代 | 23% |
40代 | 37% |
50代 | 13% |
60代以上 | 7% |
最も多いのが40代ですが、幅広い年代の人が新たに土地家屋調査士になっていることが分かります。
土地家屋調査士試験合格者の合格までの受験回数
東京法経学院の合格者アンケートによると、合格者の半数以上が3回以上の受験で合格しています。
詳しくは後述しますが、土地家屋調査士試験の合格率は9~10%台です。難易度が高く、初めての受験で合格するのは簡単ではないでしょう。1~2回目で不合格だった理由を分析して、2~3回目で合格を勝ち取る人が多いようです。
土地家屋調査士試験合格者の平均勉強時間
他の受験生は平日にどのくらいの時間を勉強に充てているのか知っておくことも大切です。自分の勉強時間が足りていなければ、隙間時間などを見つけて補う必要があります。
平日の学習時間は、1時間台までという方が平常時では5割近くを占めています。「フルタイム」で働いている方が大半ですので、それほど多くの時間はとれないと思います。本試験が近づきますと、2時間以上の学習時間の方が増えてきます。合格者のアドバイスにもありますが、毎日、少しの時間でもよいから継続して学習することがリズムを作るうえで大事なことです。
休日の平均勉強時間
休日の勉強にはどのくらいの時間を割く人が多いのでしょうか。
普段は、時間的にはまばらです。生活のリズムを考えれば、これくらいの時間が合っているということでしょうか。これが、本試験直前になりますと、 4 時間~ 8 時間以上が増えてきます。
土地家屋調査士試験の難易度は高い
あらためて、土地家屋調査士試験の難易度を知るために、受験者数と合格者数、合格率をチェックしましょう。
土地家屋調査士試験の合格率の推移
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和5年度 | 4,429人 | 428人 | 約9.66% |
令和4年度 | 4,404人 | 424人 | 約9.63% |
令和3年度 | 3,859人 | 404人 | 約10.47% |
令和2年度 | 3,785人 | 392人 | 約10.36% |
令和元年度 | 4,198人 | 406人 | 約9.67% |
土地家屋調査士は、過去5年間の合格率は9~10%程度という難関資格です。万一不合格でも落ち込み過ぎる必要はなく、冷静に結果を分析して再受験に向けてスタートしましょう。
※出典:
法務省.「令和5年度土地家屋調査士試験の最終結果について」令和6年. https://www.moj.go.jp/content/001411570.pdf?_fsi=AXzmfdrB ,(参照2024-11-21)
法務省.「令和4年度土地家屋調査士試験の最終結果について」令和5年. https://www.moj.go.jp/content/001389364.pdf?_fsi=TZzeQJVa ,(参照2024-11-21)
法務省.「令和3年度土地家屋調査士試験の最終結果について」.令和4年. https://www.moj.go.jp/content/001366634.pdf?_fsi=suYjjsAV ,(参照2024-11-21)
法務省.「令和2年度土地家屋調査士試験の最終結果について」.令和3年. https://www.moj.go.jp/content/001340287.pdf?_fsi=qIDRYgkx ,(参照2024-11-21)
法務省.「令和元年度土地家屋調査士試験の最終結果について(資料)」.令和2年. https://www.moj.go.jp/content/001314256.pdf?_fsi=nXLv4XGL ,(参照2024-11-21)
まとめ
土地家屋調査士試験は、一度目の受験では残念ながら不合格になる人もいます。しかし、多くの人が2回以上受験しており、一度落ちたからといって諦める必要はありません。ただし、受験のリベンジをするなら、これまでの自分の勉強時間や内容、弱点などを振り返り、これからの勉強に生かしてください。アンケート結果によると多くの人が平日2~3時間、休日には6時間程度を受験勉強に充てています。
土地家屋調査士は専門性が高く、独学では合格に必要な知識を得ることが難しいため、合格に向けて講座を受けている人も多くいます。東京法経学院では、学習経験者向けの通信・通学講座もあるため、ぜひ再受験に向けて受講を検討してみてください。
土地家屋調査士の試験対策なら東京法経学院
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