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土地家屋調査士とは? 仕事内容や資格取得から将来性を徹底解説


土地家屋調査士とは? 仕事内容や資格取得から将来性を徹底解説

土地家屋調査士という名称を聞いたことがあっても、どのような仕事をする人なのか、よく分からない人もいるのではないでしょうか。今回は、土地家屋調査士の仕事内容や資格習得、将来性まで徹底解説します。ぜひ参考にしていただき、資格取得や就職・転職の際に役立ててください。

この記事を読んだあとに得られるベネフィット
・土地家屋調査士の仕事内容が分かる
・土地家屋調査士になる方法が分かる
・土地家屋調査士の将来への心配が解消される

土地家屋調査士とは?

土地家屋調査士とはどのような資格なのか、概要を解説します。

土地家屋調査士は不動産登記の専門家

土地家屋調査士は、不動産登記をするために必要な調査および測量を行う専門家です。不動産登記簿には、土地や建物の所在・面積・所有者の氏名・住所などが記載されています。不動産登記の中身は、「表題部」と呼ばれる表示に関する登記と、「権利部」と呼ばれる権利に関する登記の2種類です。

土地家屋調査士が扱うのは表題部で、表題部には「所在」「地番」「地目」「地積」「原因」「所有者」、建物の表題部には主たる建物の「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」「原因」「所有者」が記録されます。

表題部の登記に関する手続きと筆界特定手続きの代理および書類作成は、土地家屋調査士だけに許可された独占業務です。

土地家屋調査士の人数・男女比・年齢層

日本土地家屋調査士会連合会の「土地家屋調査士白書2024」によると、令和5年の土地家屋調査士の会員数は1万5,650人でした。男女比は、男性が1万5,112人、女性が538人です。女性会員数はデータのある平成23年以降少しずつ増えてきているものの、圧倒的に男性会員数が多くなっています。

年代別の人数は以下の通りです。

年代 人数 割合
20代 67人 0.4%
30代 753人 4.8%
40代 3,168人 20.2%
50代 3,877人 24.8%
60代 3,595人 23.0%
70代 3,482人 22.2%
80代 720人 4.6%

※参考:日本土地家屋調査士会連合会.「土地家屋調査士白書2024」

土地家屋調査士の役目や歩み

土地家屋調査士の役目は、以下のように定められています。

“土地家屋調査士の使命は、不動産の状況を正確に登記記録に反映することによって不動産取引の安全の確保、国民の財産を明確にするといった極めて公共性の高いものです。”

※出典:日本土地家屋調査士会連合会.「土地家屋調査士について」.“土地家屋調査士の役目”.https://www.chosashi.or.jp/investigator/about/ ,(参照2024-08-15).

歴史的には、昭和24年のシャウプ勧告による税制の抜本的改革により、それまで国税であった固定資産税が市町村税になりました。そこで、税務署で管理されてきた「土地台帳」と「家屋台帳」の一元化が図られ、管轄が税務署から登記所(法務局)に移管されています。台帳はもともと課税を目的としていましたが、現況を正しく表示することを目的とするようになりました。それを機に、台帳業務を適正に行うこと、登記手続きを円滑化すること、不動産による国民の権利を明確にするため、昭和25年7月31日に土地家屋調査士法が制定されています。

※参考:日本土地家屋調査士会連合会.「土地家屋調査士について」.“土地家屋調査士の歩み”.https://www.chosashi.or.jp/investigator/about/ ,(参照2024-08-15).

土地家屋調査士の平均年収

土地家屋調査士の年収は、500~600万円が平均的な相場です。ただし、経験年数や勤務先によって年収は異なります。未経験者の場合、初年度の年収相場は350~400万円程度が一般的です。

また、土地家屋調査士の年収は、対応できる業務範囲によっても異なります。特に、土地家屋調査士の重要な仕事である「確定測量」でリーダー的役割に就けると、格段に年収が上がる傾向です。

土地家屋調査士の仕事内容・業務内容

土地家屋調査士の仕事内容・業務内容

ここからは、土地家屋調査士の具体的な仕事内容や業務内容を解説します。

1.仕事や業務の流れ

1.受託
委託者と事前打ち合わせをした後に委任契約を締結します。

2.資料調査
法務局にて登記簿をはじめとした資料調査を行います。

3.測量
図面を作成する際に必要な数値を得るため、現地の事前調査を経た後に測量を行います。

4.図面の作成
登記申請に必要な書類は、多くの場合CADを用いてパソコンで作成します。

5.立ち合い
境界がはっきりしない場合は、隣地の所有者など関係者の立ち合いで境界を明確にします。

6.確定測量
隣地との境界標識を設定します。

7.登記申請
管轄の法務局に登記申請します。

2.表示登記に必要な調査・測量

不動産登記の表示登記をするためには、正確な状況を示す数値が必要です。正確な数値を得るために、測量を行う前の資料を確認したり現地に出向いて測量をしたりします。また、隣地との境界にある杭がないなど境界線が明確でない場合は、トラブルになることが少なくありません。そのため、隣地の所有者立ち合いのもとで、登記簿上に記載する筆界を確定します。

3.表示登記に関する申請手続きの代行

不動産の表示登記は、不動産の所有者が申請することが義務付けられています。しかし、その手続きはとても煩雑であるため、一般の人が行うことは難易度が高いです。そのため、土地の所有者から依頼を受けた土地家屋調査士が表示登記に関する申請手続きを代行します。表示登記の申請手続きは、土地家屋調査士だけに認められた独占業務です。

表示に関する登記の種類(土地)

・土地表題登記
登記申請するために土地に区画と地番を設けます。

・土地地積更正登記
登記上の地積と測量値が異なる場合、正しい地積に更正登記します。

・土地地目変更登記
土地の用途が変更されたときに行う登記です。

・土地分筆登記
土地の一部の売買や遺産分割など、1筆の土地を2筆以上に分割するときに行う登記です。

・土地合筆登記
2筆以上の土地を1筆にまとめるための登記です。

表示に関する登記の種類(建物)

・建物表題登記
建物を新築した際に行う登記です。

・建物表題部変更登記
建物の状態が変更されたことにより、登記記録と異なる状態になったときに行う登記です。

・建物分割登記/建物合併登記
建物分割登記は登記上1つの建物として扱われている建物を別個の建物として登記すること、合併登記は別個の建物を主従関係として1つの建物にまとめることです。

・建物滅失登記
建物の取り壊しに伴って行う登記です。

・区分建物の表示に関する登記
分譲マンションなど区分所有権がある建物の登記です。

4.表示登記の審査請求手続きの代理

不動産を取得したものの、何らかの理由で表示登記の手続きが進まない場合、不動産の所有者は地方法務局長に不服審査を申し立てられます。しかし、不服審査の申し立てには専門知識が必要で、一般の人にとっては難易度が高いです。そのため、土地家屋調査士が審査請求手続きを代理で行います。

5.筆界の特定

筆界とは、不動産登記簿上の土地の境界を意味する「公法上の境界」です。不動産登記簿で決められた筆界は、隣地の人との話し合いで変更することはできません。しかし、筆界が不明瞭になっていたり、現況と異なっていたりすることが多々あります。筆界特定の手続きは、登記官が筆界調査委員の意見を踏まえて筆界の位置を特定する制度です。土地家屋調査士は、筆界調査委員として筆界特定の代理を独占業務として行える権利を有します。

裁判外紛争解決手続き

筆界が登記簿と異なっている場合、隣地の所有者とトラブルに発展することがあります。隣地の所有者との話し合いで解決できない場合、裁判で争うことになると解決までに時間がかかります。また、隣地の所有者が不明な場合などは、解決が難しいケースも少なくありません。そのため、訴訟によらずに解決する「民間紛争解決手続(ADR)」があります。ADR認定土地家屋調査士は、弁護士と共同で紛争の解決を行うことが可能です。

筆界特定制度のメリット・デメリット

筆界特定制度を利用した場合、裁判を起こした場合と比べると、費用が少なくすみます。
筆界特定制度を利用すると、特定されるまでの期間は約半年~1年です。裁判を起こす場合は数年かかるといわれているため、裁判を起こすより短期間で解決します。また、裁判を起こす場合と比べて必要書類が少ない点もメリットです。

ただし、相手が筆界特定の結果に不満を持った場合、裁判に持ち込まれる可能性があることがデメリットといえます。

筆界特定申請の費用

筆界特定申請にかかる費用は、筆界特定申請手数料、予納手続費用、代理人の報酬です。筆界特定申請手数料は、土地の固定資産評価額を基に算出され、申請書を提出する際に収入印紙で支払います。

予納手続き費用は、法務局が定めた計算式に従って算出し、測量作業までに支払わなければなりません。代理人の報酬は、所有者が自ら申請する場合は不要です。代理人に依頼する場合の報酬目安額は10~20万円程度とされています。

土地家屋調査士の残業時間

土地家屋調査士の平均的な残業時間は、1カ月に30~40時間程度です。ただし、残業時間は請け負う案件の種類や時期、事務所の規模によっても異なります。大規模案件を受けることが多い場合は残業が多くなりがちです。また、年度末や上半期、年末などの締めの月は、土地家屋調査士の仕事も繁忙期になります。

一般的に、規模の小さい事務所の方の人材確保が難しいため、残業は多くなる傾向がありますが、残業を減らすための工夫をしている事務所が増えています。

土地家屋調査士になるには

土地家屋調査士になるには

土地家屋調査士になるためのステップを解説します。

国家試験に合格する

土地家屋調査士になるためには、土地家屋調査士の国家試験に合格しなければなりません。土地家屋調査士の国家試験は年齢、学歴、実務経験などの受験制限が定められておらず、誰でも受験できます。

ただし合格率は低く、令和5年度は受験者数が4429人、合格者は428人で、合格率は9%程度でした。

※参考:法務省.「令和5年度土地家屋調査士試験の最終結果について」.令和6年. https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00540.html ,(参照2024-08-16).

土地家屋調査士会名簿に登録する

土地家屋調査士の国家試験に合格した人が土地家屋調査士として働くためには、日本土地家屋調査士会連合会に備えられている、土地家屋調査士名簿に登録する必要があります。名簿に登録するためには、日本土地家屋調査士会連合会会則第41条に定められている通り、手数料2万5000円の納付が必要です。

土地家屋調査士の将来性とキャリアパス

土地家屋調査士は安定した需要が見込まれる職種です。土地家屋調査士の資格を取得した人の就職先は、測量会社や土地家屋調査士事務所が一般的となっています。実務経験を積んだ後に個人事務所を開業する人も少なくありません。個人で開業する他、数人の土地家屋調査士と共同で、また税理士や行政書士と共同で事務所を開く場合もあります。

土地家屋調査士の将来性とキャリアパスについては以下の記事もご参照ください。
土地家屋調査士の活躍できる就職先とは?
土地家屋調査士の就職先とは? キャリアプランに合わせて選ぼう

土地家屋調査士に向いている人の特徴

1.外での仕事に抵抗がない人
土地家屋調査士は現地での測量が重要な仕事であるため、屋外での仕事に抵抗がない人が向いています。

2.コミュニケーション能力が高い人
土地家屋調査士は顧客とはもちろん、隣地所有者や行政担当者など、さまざまな人と連携しながら仕事を進める必要があるため、コミュニケーション能力の高さが求められます。

3.図面や書類を正確に作成する緻密さ
不動産の表題登記を行うために、図面や書類を正確に作成する緻密さが求められます。

4.向上心がある人
土地家屋調査士の実務は先例を基に行われることが多く、測量技術などは進化していきます。そのため、資格を取った後も学ぶ姿勢を持ち続けられる向上心のある人が向いています。

土地家屋調査士と測量士の違いは?

土地家屋調査士 測量士
管轄 法務省 国土交通省
測量の種類 一筆地測量 公共および民間測量
測量の主な目的 ・境界の確認または復元
・現況地物や状況の把握
土地を正確に計測する
専門 ・不動産の表示登記
・表示登記に関する土地や建物の測量や調査
・境界確認業務
・測量全般
・地積測量
主な依頼主 一般の土地所有者 国・都道府県・市区町村
主な関連法 ・不動産登記法
・民法
・土地家屋調査士法
・測量法

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まとめ

土地家屋調査士は、表題登記を独占業務とする国家資格で、安定した需要があります。ただし、国家試験の合格率は毎年9%程度と難関です。合格を手にするためにはしっかりと対策しなければなりません。

東京法経学院の通信講座では、午前の部の免除が受けられるか否か・初学者か学習経験者かなど、自分の状況に合わせて最適な講座を選べます。土地家屋調査士を目指したい人は、東京法経学院の通信講座を受講してはいかがでしょうか。

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東京法経学院

株式会社東京法経学院は10年以上にわたり、土地家屋調査士・測量士補・司法書士・行政書士など、法律系国家資格取得の受験指導を行ってきました。
通学・通信講座の提供だけではなく、受験対策用書籍の企画や販売、企業・団体の社員研修もサービス提供しています。
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